エシュロン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エシュロン (ECHELON) は、電話、ファックス、電子メールメッセージなどを傍受するスパイ組織網のことである。“梯子”という意味もある。冷戦時代は、ソ連の全通信を傍受出来るといわれた。
目次 |
[編集] 概説
アメリカ合衆国が軍事利用を目的に作られた通信傍受システムである。国家安全保障局 (NSA)が主導となり運営している。
世界中に張り巡らされたエシュロンは、世界の情報のほとんどを入手することが可能な状態になっており、運用の際は、あるキーワードを入力することによりフィルタリングされたデータが『辞書』と呼ばれるデータベースに蓄積され、それを10万人と推定される情報要員がモニタリングする仕組みになっている。
現時点で参加している国々は、アメリカ合衆国、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど、“UKUSA同盟”とも称されるアングロサクソン諸国である。UKUSA同盟は、1948年にアメリカとイギリスとの間で締結された通信情報に関する秘密協定であるUKUSA協定が結ばれたことに始まり、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドは2次メンバーとして後に参加した。
他にギリシャ、スペイン、ドイツ、日本など、いくつかの同盟国にも、参加は認めないものの傍受局を置いているとされる。これらの国は、独自情報を提供する協力国も含めて"サードパーティー"と呼ばれ、情報の共有はされないものの、UKUSA同盟の国益に反しない限りにおいて、エシュロンで得られた情報の提供が行われることがある。日本には、青森県の三沢飛行場近くの姉沼通信所に、傍受施設が存在し、1,000人単位のNSA要員が詰めていると言われる他、東京都心のいくつかのUKUSA同盟国の公館内(赤坂のアメリカ大使館等)にも傍受施設が存在し、分担して傍受活動を行っていると噂されている。
エシュロンは傍受施設のみで情報収集を行っているわけではなく、EP-3電子戦機とのデータリンクによって、航空機からの情報収集も可能と言われている。2001年4月に中国海南島上空で発生した領空侵犯事件では、不時着した機内にアメリカ国家安全保障局の複数要員が乗り込んでいたとされ、エシュロンに関わる情報収集の一環であったとする噂がある。
世界的に非公式で運営しているとされているが、2001年に欧州連合欧州議会は「存在は疑いない」と結論づけた事で、公式な場面で初めて表立ったといえる。
アメリカの世界戦略の中で、敵国と友好国を分かたず情報を収集している行為については、特に非アングロサクソンのヨーロッパ諸国で反発が強く、フランスはエシュロンに対抗する全世界規模の傍受通信網を構築しているとされる。
なお、アメリカ政府は、公式にはエシュロンの存在を認めていない。
[編集] 日本とエシュロン
日本にも、参加を認められないものの、エシュロンが置かれている。当然、日本政府、日本企業も監視の対象とされており、無線、短波無線、携帯電話、インターネット回線など、ありとあらゆる日本国内の通信が常に傍受され、データはニュージーランドの通信所に送られて蓄積されている。日本に関する情報収集の対象は主に経済分野であり、産業スパイ活動ではなく、経済活動をアメリカ政財界に更に有利にするための、トップの意思決定についての情報収集を重点的に行っているとされる。1980年代から90年代初頭における、アメリカ政府の度重なるダンピング提訴や、日本企業とアメリカ企業との間の受注合戦や訴訟合戦において、アメリカの国益を守るために、三沢、ワシントン州、ニュージーランド、オーストラリア、香港(現在は撤去)のエシュロンをフル稼働させた可能性が非常に高く、それが日本の企業活動に大きな損害を与えたとされる。
その一方、施設を提供している見返りとして、日本政府の求めに応じて、エシュロンから得られた情報が提供されたと推定される例がいくつかある。北朝鮮の最高指導者金正日の長男金正男が成田空港で摘発された事件がそれであり、事前に日本に対して通報があったとされる。また、日本赤軍最高幹部であった重信房子が極秘裏に日本に帰国して潜伏しているという情報も、エシュロンによって情報が得られ、日本政府に通報されたと噂されている。
2004年、「週刊ポスト」が、日米首脳会談で小泉純一郎内閣総理大臣が、日本のエシュロンへの参加を打診、アメリカ政府が、イラク戦争での多国籍軍参加の見返りに、エシュロン参加を許可したと報道したが、その真偽は謎のままである。
このように、エシュロンが高い機密性を持つために、多くの事象は疑いがありつつも確証まで至らないのが現状である。
[編集] 関係機関
“UKUSA同盟”5ヶ国のSIGINT機関。
- アメリカ - 国家安全保障局(NSA)
- イギリス - イギリス政府通信本部(GCHQ)
- カナダ - 通信安全保障局(CSE)
- オーストラリア - 国防信号局(DSD)
- ニュージーランド - 政府通信保安局(GCSB)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
この「エシュロン」は、軍事に関連した書きかけ項目です。この項目を加筆・訂正などして下さる協力者を求めています。(関連: ウィキポータル 軍事 - ウィキプロジェクト 軍事) |