アルツハイマー型痴呆
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アルツハイマー型痴呆(あるつはいまーがたちほう、Alzheimer's disease; AD)は、認知機能低下、人格の変化を主な症状とする痴呆性疾患の一種である。日本では、痴呆性疾患のうちでも脳血管性痴呆、レビー小体病と並んで最も多いタイプである。
アルツハイマー型痴呆には、以下の2つのタイプがある。
- 家族性アルツハイマー病(Familial AD; FAD)
- アルツハイマー型痴呆の中でもごく少数を占める。常染色体優性のメンデル型の遺伝パターンを示し、30~60歳代で発症するもの。
- アルツハイマー型老年痴呆(Senile dementia with Alzheimer's type; SDAT)
- アルツハイマー型痴呆の中でほとんどを占める。老年期(通常60歳以上)に発症する。
アルツハイマー病のデータ | |
ICD-10 | G30 |
統計 | 出典:[1] |
世界の患者数 | 約18,000,000人 |
日本の患者数 | 人 |
学会 | |
日本 | 日本精神神経学会 |
世界 | 世界精神医学会 |
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アルツハイマー型痴呆のデータ | |
ICD-10 | F00 |
統計 | 出典:[2] |
世界の患者数 | 人 |
日本の患者数 | 人 |
学会 | |
日本 | 日本精神神経学会 |
世界 | 世界精神医学会 |
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目次 |
[編集] 歴史
ドイツ精神医学の大家、エミール クレペリンの教室(レビー小体型痴呆(認知症)で知られるフレデリック レビーも同じ時期同教室に在籍)で研究活動に従事していたドイツのアロイス・アルツハイマーが1907年に最初の症例報告を行ったことからその名が名づけられた。ちなみに1901年に、嫉妬妄想などを主訴としてはじめてアルツハイマーの元を訪れた、世界最初の患者(A.Diter)に関する症例を学会で最初に発表したのは1906年、チュービンゲンのドイツ南西医学会でのこととされている。
[編集] 疫学
冒頭に記したように、常染色体優性の遺伝をする、ごくまれな「家族性アルツハイマー病」(FAD)と、そうでないタイプがある。
FADは、常染色体優性遺伝、つまり片方の親がFADであれば子供は性別に関係なく2分の1の確率でFADに罹患するというものである。そうでない大部分のアルツハイマー型痴呆にも、遺伝的要因は少し影響する。ある調査では、80歳になると15%の人が何らかの痴呆性疾患に罹患するという。そのうちの何割かがアルツハイマー型痴呆であるとすると、80歳では数%の人が罹患することになる。親族にアルツハイマー型痴呆の患者がいる場合、多少罹患のリスクが上昇すると言われている。
[編集] 症状
症状は、徐々に進行する認知障害(記憶障害、見当識障害、学習の障害、注意の障害、空間認知機能、問題解決能力の障害など)であり、社会的に適応できなくなる。重度になると摂食や着替え、意思疎通などもできなくなり最終的には寝たきりになる。
階段状に進行する(すなわち、ある時点を境にはっきりと症状が悪化する)脳血管性痴呆と異なり、徐々に進行する点が特徴的。症状経過の途中で、被害妄想や幻覚(とくに幻視)が出現する場合もある。暴言・暴力・徘徊・不潔行為などの問題行動(いわゆる周辺症状)が見られることもあり、介護の上で大きな困難を伴う。
[編集] 病理学的所見
病理学的には脳組織の萎縮、大脳皮質の老人斑の出現がみられる。老人斑はβアミロイドの沈着であることが明らかになっている。髄液から脳内のβアミロイドを定量するキットも実用化されている。
しかし、このβアミロイドが本症の直接原因なのか、それとも結果であるのかについて結論は得られていない。
[編集] リスクファクター
大規模な調査によって緑黄色野菜、魚介類の摂取はアルツハイマー型痴呆の発症リスクを減少させ、肉類の摂取はリスクを上昇させるという結果が出ている。
喫煙を含むニコチンの摂取がニコチン性アセチルコリン受容体よりドパミン神経系に作用し、アルツハイマー型痴呆の発症を減少させるという説もあった(→[3])が、喫煙自体が他の疾病リスクを高める性質があるほか、大規模なコホート研究によって現在では否定されている。なお『脳のお手入れ』(きこ書房。ケネス・ジュフレ、テレサ・フォイ・ディジェロニモ共著)によれば、喫煙によるニコチン摂取が脳細胞にダメージを与え、アルツハイマー病発症率を二倍に高めるといった研究結果が示されている。
[編集] アルミニウム原因説
アルミニウムイオンの摂取がアルツハイマー型痴呆の原因のひとつであるという説がある(この説は現在では一般的に認められていない)。
アルツハイマー患者の脳にアルミニウムイオンが健常者の数十倍の濃度で検出されているが、それがアルツハイマーの原因なのか結果なのかは不明である。
この説は、第二次世界大戦後、グアム島を統治した米軍が老人の痴呆の率が異常に高いことに気がつき、地下水の検査をしたところアルミニウムイオンが非常に多いことがわかったことによる。天水と他島からの給水によってその率が激減したこと、また紀伊半島のある地域でのアルツハイマー患者が突出して多かったのが上水道の完備により解決したことがその根拠とされている。後者も地下水中のアルミニウムイオンが非常に多かったことが示されている。
従来は脳血液関門によってアルミニウムイオンは脳に達しないという見方もあったが、今では脳血液関門を突破することが明らかになっている。
アルミニウムイオンを多く含む植物は、オオイタドリやカラマツの新芽などで、硫酸アルミニウムとして土壌の10倍~20倍含まれている。また、タマネギにも硫酸アルミニウムとして多く含まれており、生体内に自然に取り込まれている。
本来なら水に溶出しないアルミニウムイオンが、粘土鉱物からバーク堆肥や家畜堆肥の再利用により、カリウムやナトリウムの過剰からくる浸透圧で溶出している。産業廃棄物である有機物の過剰投入が土壌の緩衝能を超えることでおきる現象である。
[編集] 治療
[編集] 薬物療法
日本のエーザイ株式会社により開発された、アセチルコリン分解酵素阻害薬、塩酸ドネペジル(商品名アリセプト)が認知改善薬としてアルツハイマー型痴呆を中心に使用されている。日本では1999年に日本薬局方に収載され保険診療にて使用されている。記憶や認知機能にアセチルコリン作動性ニューロンが関与しているという説があるが、ドネペジルはアセチルコリンの機能を高めるため記憶機能などが高まるものである。
その他、アルツハイマー型痴呆に伴い、不眠、易怒性、幻覚、妄想などの「周辺症状」と呼ばれる症状に対して、適宜対症的な薬剤(睡眠導入剤、抗精神病薬、抗てんかん薬、抗うつ薬など)の投与が有効な場合がある。
[編集] その他の治療
散歩などによる昼夜リズムの改善、なじみのある写真や記念品をそばに置き安心感を与えるなど、薬物以外の介入が不眠や不安などに有効な場合もある。
[編集] 関連
- 脳神経科
- 老人斑
カテゴリ: 医学関連のスタブ項目 | 神経変性疾患