アポロ13
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アポロ13 | |
監督 | ロン・ハワード |
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製作 | ブライアン・グレイザー |
脚本 | ウィリアム・ブロイルスJr. アル・レイナート |
出演者 | トム・ハンクス ケヴィン・ベーコン ビル・パクストン ゲイリー・シニーズ エド・ハリス キャサリン・クライラン |
音楽 | ジェームス・ホーナー |
撮影 | ディーン・カンディ |
編集 | マイク・ヒル ダン・ハンリー |
配給 | ユニヴァーサル映画 |
公開 | 1995年 |
上映時間 | 約140分 |
製作国 | アメリカ |
言語 | 英語 |
allcinema | |
キネ旬DB | |
All Movie Guide | |
IMDb | |
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『アポロ13』(アポロ サーティーン、Apollo 13)は1995年のアメリカ映画。上映時間約140分。アポロ13号爆発事故の実話に基づく作品。第68回(1995年)アカデミー賞において2部門(編集賞・音響賞)受賞。
目次 |
[編集] 概要
実際のアポロ13号の船長であったジム・ラヴェルの著作"Lost Moon"が原作となっている。
アポロ13号を宇宙に打ち上げるサターンVロケットの発射シーンや、各種モジュール切り離しシーンなどは、本物のような映像を当時の最先端CGによって再現されており、試写を観た当時の関係者らが本物の記録映像と間違えた程である。CG制作の模様はNHKスペシャル「新・電子立国」でも大きく取り上げられた。
無重力状態のシーンは、映画史上初めて航空機を使った実際の無重力状態で撮影されている。この航空機は、もと空中給油機だったKC-135AをNASAが無重力訓練用に改造したもので、通称「嘔吐彗星」。1回のフライトで約25秒間の無重力状態が得られるが、撮影のために600回近く飛行した。映画では地上のセットで通常の重力下で撮影したカットと混ぜ合わされているが、指摘されないと分からないほど巧妙に編集されている。
ラストシーンでトム・ハンクス演じるラヴェル船長が握手するヘリ母艦イオー・ジマの艦長役は、原作者ラヴェル船長本人である(ただし本人の退役時の階級は大佐であったため、着ている軍服の階級章も大佐になっている)。またサターンロケット打ち上げシーンでは、発射観覧席にマリリン夫人本人が座っている。
[編集] スタッフ
- 監督:ロン・ハワード
- 製作:ブライアン・グレイザー
- 撮影:ディーン・カンディ
- 音楽:ジェームズ・ホーナー
- SFX:デジタル・ドメイン
[編集] キャスト
- トム・ハンクス(ジム・ラヴェル)
- ケヴィン・ベーコン(ジャック・スワイガート)
- ゲイリー・シニーズ(ケン・マッティングリー)
- ビル・パクストン(フレッド・ヘイズ)
- エド・ハリス(ジーン・クランツ)
- キャサリン・クインラン(マリリン・ラヴェル)
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
1969年、アポロ11号により、人類として初めてニール・アームストロング船長が月面に着陸した。その予備チームであったジム・ラヴェル船長(トム・ハンクス)とフレッド・ヘイズ(ビル・パクストン)、ケン・マッティングリー(ゲイリー・シニーズ)は、アポロ13号の正チームに選抜された。しかし、打ち上げ直前に、司令船パイロットのケンが風疹と診断される。予備チームと交替するか、司令船パイロットのみ交替するか。判断はラヴェル船長に任されたが、予備チームのジャック・スワイガート(ケヴィン・ベーコン)と交替することを決断する。
1970年4月11日、アポロ13号は現地時間13時13分に打ち上げられた。当初の飛行は順調であったが、アームストロングの月面着陸により、国民の関心は薄れつつあった。しかし、月に到着する直前の4月13日、酸素タンク撹拌スイッチ起動により爆発が発生。酸素タンクから急激に酸素が漏れだした。酸素は乗員の生命維持だけでなく電源の生成にも使用するため、重大事態となる。
当初、事態がつかみ切れていなかった乗員や管制官たちは、途中まで月面着陸を諦めていなかったが、やがて地球にさえ帰還できないかもしれないという重大事態であることを把握した。二酸化炭素の上昇、電力の不足。地上の管制センターでは、管制官達だけでなく、メーカーの人間も含め、関係者全員が招集され、対策が練られた。搭乗しなかったケンは、電力をいかに節約するかをシミュレータを使って検討、地上からラヴェルら乗員をバックアップした。残存電力を保つため、船内は最低限の電力しか使わず、ウインナーが凍るほど寒くなるが、乗員同士支え合う。
しかし、13号がコースを外れていることが判明。原因は、酸素の噴射により軌道のズレが生じたというものであった。誘導コンピュータは電力を使用してしまうため起動できない。このため、手動噴射による姿勢制御を決断。窓の外は船外を漂うゴミと、船内の室温低下とで曇っていてよく見えないが、地球が見えた。これを唯一の目標として、手動による噴射を行い、見事に成功。
しかし、またもやコースについての問題が露見した。月面に着陸しなかったために、おみやげの月の石100kg分が足りなかったためである。不要物を手動で移動させ重心を調整した。管制センターの計算では、大気圏進入角度がわずかに浅かったが、これは乗員に伏せられた。
やがて大気圏突入となるが、突入時には通常、通信が約3分間途絶してしまう。ケンは何度もアポロ13号を呼び出すが、3分間経っても返答はない。しかし約4分後、交信が入る。限られた資源と時間を使って奮闘した乗務員と管制センターの連携により、彼らは無事に地球に戻ることができたのだった。
[編集] 様々なイレギュラー
劇中では様々な不測の事態が発生するが、ここでは順を追って説明していく。
- センターエンジンの故障
まず最初に起こった不測の事態は、宇宙空間に出てすぐに訪れた。サターンロケットの第2段において、さいの目の「5」状に並んでいる5つのエンジンの内、中央のエンジンが原因不明のまま停止した。しかし他のエンジンに異常が無かったため、地上のヒューストン管制センターは「ミッション継続に支障なし」と判断。正常な他の4基のエンジン噴射時間を少し長くとることで、そのまま航行は継続されることになった。その後問題なく着陸船とのドッキングにも成功。この故障自体はさして深刻な問題ではなかった。
- 酸素タンクの爆発
アポロ13号が深刻な事態に陥った事故は酸素タンク撹拌の際に起こった。宇宙船を製造した際に使用されていたコイルの一部が規格外の物であったため、そのコイルがショート、爆発したのが原因だった。2年前から組み込まれていたミスであった。宇宙船内はパニックに陥り、ヒューストンの管制センターも事態が全くつかめない状態だった。アポロ13号の乗組員は何とか機体の姿勢制御に成功し安定飛行できるようになったので、この状態からヒューストンに状況を説明した。ラヴェル船長は窓からガスの流出を発見、何かの気体が船外に漏れていることを報告したが、それが酸素であることが分かるのに時間はかからなかった。司令船内の酸素メーターの残量レベルが急激に減少していたからだ。事態を飲み込めたヒューストンは、直ちに「月面着陸」のミッションを中止し「乗組員を安全に帰還させる」ミッションへとシフトした。酸素タンクから燃料電池1番・3番へのバルブを閉めることにより、酸素の流出を止めるべく試みたが、流出は止まらなかった。この時点での司令船の生命維持限界は15分。やむを得ず司令船・機械船オデッセイの機能を凍結し、月着陸船を救命ボートとして使うことになった。
- 電力の不足
着陸船へ避難することにより一時的に生命の危機から脱出したものの、不測の事態は次々と襲い掛かってきた。次のイレギュラーは「電力不足」である。アポロ13号に搭載されている酸素は、乗組員の呼吸はもちろん燃料電池のエネルギー源にもなっていた。司令船とは独立した電池を持っている着陸船だったが、電力をフルに使っては地球に帰還する前に電力がなくなってしまう状態だった。生命維持限度は45時間で、これでも地球への帰路の半分である。しかし、60A(アンペア)を使い続けている着陸船の電力は残り16時間分しかないため、消費電力を12Aまで落とさなければならない。これを切り抜けるため、ヒューストンとの通信に必要なメインコンピューターの電源のみを残し、船内の電力消費を生命維持に必要な最低限度のレベルまで節約することになった。機器から熱が出なくなり、ヒーターも切ったため、船内はウインナーが凍りつくほどの寒さ(1~4℃)となった。
- 二酸化炭素の上昇
月の引力を利用して周回軌道に乗り、窓から地球が見える場所まで来たところで、また問題が発生した。船内の二酸化炭素濃度が上昇し始めたのだ。着陸船には二酸化炭素を濾過し排出するフィルターが搭載されていたが、本来着陸船は二人乗りのため、三人分までは対応していなかった。しかも着陸船と司令船のフィルター接続部の形状が異なるため、司令船のフィルターを着陸船に接続することは不可能だった。しかし船外排出を行うと、その勢いで機体の軌道および姿勢が崩れる恐れがあるため、それはできない。そこでヒューストン管制センターでは、アポロ飛行船内にある道具だけで、しかも大至急という条件付きで、規格の異なるフィルター同士を接続する道具を作ることになった。しかしこの事態はある程度予測できた事態だったため、ヒューストンの対応は早く、船内の二酸化炭素が致死量に至る前にフィルターは完成。二酸化炭素を吸収する水酸化リチウムフィルターへの空気が逃げないように、靴下をバッファ代わりに利用した即席フィルターだった。製造方法をアポロ13号乗組員達に伝えると、乗組員達は凍えるような寒さの中、フィルターの製作に成功。致死量15%に達する寸前で二酸化炭素の問題は解決した。
- 降下用エンジンによる軌道修正
二酸化炭素の問題が解決した後、今度は大気圏突入への軌道がずれていることが発覚した。急遽軌道修正をしなければ、突入角度が浅く大気圏に弾かれてしまう状態だった。着陸船の降下用エンジンを噴射することで軌道修正することが考案されたが、問題はまだあった。突入角度を計算する誘導コンピューターが電力を消費するため使用できないのだ。そこで飛行士達は窓から見える地球を唯一の目標として手動制御で軌道修正を行うことになった。39秒の噴射により推進剤を全て消費することになったが、かろうじて軌道修正に成功。軌道がズレた原因は、酸素の噴出による慣性であった。また、その後にもずれが生じた。これは月に着陸せず、回収予定だった月の石約100kgを持ち帰らなかった事による重量不足が原因だったため、不要品を移動させて重心を変更させることで対処した。
- 司令船の再起動
司令船さえ動けば自動的に大気圏に突入できる状態まで持ってくることができた。しかし、またここで問題が発生する。司令船の電力は底をつきかけている状態だったため、再起動するための電力を確保する必要があった。大気圏突入時に必要な電力は最低限度まで落としたが、それでも再起動するための電力は、どうしてもあと4A足りなかった。そこで、司令船から着陸船に電力を供給するラインを使い、このラインへ電力を逆流させることにより、一時的にではあるが4Aを確保する方法が発案された。シミュレータでは再起動の電力確保に成功したが、ここでまた一つ問題が発生した。司令船内は外部と内部の温度差により発生した水滴でびっしりと埋め尽くされていたため、電源投入と同時にショートする恐れがあった。幸いショートすることなく再起動は成功した。この際、大気圏突入角度がわずかに浅くなっていたが、軌道修正は不可能と判断され乗員には伏せられた。乗員は司令船へと移動し、機械船は切り離された。乗員達はこのとき初めて、外壁が丸ごと吹き飛んで内部構造を大きく露出させた状態の無残な機械船の姿をその目で見たのだった。
- 最後の難関
ついに大気圏突入まで持ち込んだが、ここで最後の難関が待ち構えていた。燃料タンクが爆発した際に、司令船にも何らかの損傷があった可能性がある。もしも司令船の遮熱パネルが損傷していた場合、大気圏突入時の空力加熱による灼熱に司令船の外壁が持たないだろうということ。そして、仮に大気圏を突破できたとしても、長時間凍り付いていたパラシュートが損傷している可能性もあった。現場海域には台風警報が出ていた。これまで地上と宇宙一丸となって対策してきた超先進科学を持つNASAだったが、最後に取るべき対策はもはや科学の力でも何でもなく、ただ「祈る」他なかった。通常、大気圏突入の際3分ほど交信が途絶える。しかし3分を経過しても交信は回復しなかった。4分ほど経過した後、司令船との交信が回復。乗員達はまさに「奇跡の生還」を果たしたのだった。
[編集] 史実との違い
劇中では削られた問題、或いは実際とは違った描かれ方をしている部分について述べる。
- PC+2噴射
映画では削られているが、実際のミッションでは前半の山場はこのPC+2噴射であった。それまでのアポロ宇宙船は、自由帰還軌道と呼ばれるコースを辿って月へ向かっていた。この軌道に乗っている場合、万が一エンジンが故障して月軌道に入れなくても、月の裏側を回って自動的に地球に帰還することができる。元々の計画では、13号はフラ・マウロ高地への着陸を目指すため自由帰還軌道を外れており、月面探査を終わって地球に帰還する際に近月点(軌道上で最も月に近づいた点)通過後2時間経過した時点でエンジンを噴射し、加速して自由帰還軌道に戻ることになっていた。これがPC+2噴射である。
実際のミッションでは、事故発生から約5時間半が経過した時点で着陸船の降下用エンジンを噴射して自由帰還軌道に戻っており、PC+2噴射は主に帰還までの時間を短縮するために行うことになった。噴射のプランは3通りが検討された。即ち、死んだ機械船を投棄して宇宙船の重量を軽くした上で、燃料が空になるまで降下用エンジンを燃やして最大限に加速する方法、同じく機械船は投棄するが、若干加速を緩くして燃料を節約する方法、機械船を投棄せず、噴射時間も更に短くする方法である。第1のプランは噴射後わずか1日半で帰還できたが、噴射後軌道修正が不可能になること、及び機械船を投棄することで司令船の耐熱シールドが宇宙空間に長時間曝されダメージを受ける可能性があること、着水予想海域に十分な収容用の艦船が配置できていないことから却下され、第2のプランも同じく耐熱シールドの問題から退けられ、実行に移されたのは最も飛行速度の遅い(PC+2噴射を行わない場合に比べても飛行時間は10時間しか短くならなかった)第3のプランであった。
劇中では月の裏側を抜け出てヒューストンとの交信を再開する際、ヒューストンが「PC+2噴射のデータが出た」と応答するシーンがある。
- 二酸化炭素の問題
劇中では、事故後二酸化炭素の問題が深刻になってから慌ててフィルターの制作方法を検討するシーンがあるが、実際には事故発生から間もない火曜日の朝には既に試作品は完成している。
- 着陸船のバッテリー爆発
地球に帰還する途中の水曜の午後、3人の救命ボートとなっていた着陸船に搭載されていた4個のバッテリーのうちの1個が突如として爆発した。それまでの徹底した電力節減によってかなりのマージンが確保されていたため、このバッテリー爆発はそれほど大きなダメージには至らなかった。
- 降下用エンジンによる軌道修正
劇中で描かれていた着陸船のエンジンによる軌道修正であるが、この方法は船長のラヴェル自身が、アポロ8号で月から帰還する際に万一に備えて考案したものであった。実際の噴射は39秒間ではなく14秒である。
- 司令船の再起動
劇中ではケン・マッティングリーがシミュレータに入り、司令船の再起動に不足している4Aの電力を着陸船のバッテリーから充電する方法を考案しているが、史実では地上スタッフ同士でバッテリーの充電に関する会話がもっと早くからやり取りされており、マッティングリーが考案したものではない。
- 再突入
再突入の際、通信途絶の後テレビにパラシュートを開く13号が映って交信が回復する場面があるが、実際にメインパラシュートを開いたのは通信回復後である。また、劇中ではケン・マッティングリーがラヴェルと交信しているが、実際にこの時宇宙船と交信していたのはキャップコム(宇宙船と交信を行う地上スタッフ)のジョー・カーウィンであった。
- 乗組員
月着陸から一転、絶望的なピンチが降りかかり、皆落ち込み、不安になり、イライラし、ついには喧嘩にまで発展してしまう。だが、船長のリーダーシップの元、それぞれが使命を自覚し、力を合わせて生還を目指す ─ 感動的なヒューマンストーリーだが、ラヴェル船長によると、喧嘩どころか感情的にもならなかったそうだ。月着陸放棄の際に皆少し落ち込んだだけで、後は与えられた課題を必死にこなしていて(眠ることも含まれる)、喧嘩するどころではなかったそうだ。月を間近に見てはしゃぎ、未練がましくブツブツと言葉を交わす二人をたしなめる場面もあるが、これも曰く「全員ではしゃいでいた」。劇中の描写ではジャックが浮きがちだが、「三人が三人とも任務に負われてる。そんな時に、ベッドの取り合いなんてしない」。(乗組員の項、書籍[[From the Earth to the Moon]]より)
[編集] 寸評
アポロ13号の項にある通り、この事故は、後に「輝かしい失敗」と呼ばれるようになった。その史実をできる限り忠実に再現するために、あらゆる場面に注意が払われている。"Houston,We've got a problem." に代表されるセリフも同様である。これは実際に言ったものであり、声も残っている。また使われているニュース映像、さらにはジャックをネタにアポロ計画をからかうテレビショーまでもが、全て本物である。このような細部までの徹底したこだわりが功を奏して、結果は分かっているのにはらはらさせられる。
当時最先端のSFXは、技術が進歩した今見ても見事である。後でラヴェル船長本人やNASAの関係者が「よくこんな映像が残っていたな」と感想をもらしたほどである。管制センターの作り込みも本物さながらで、演技指導のNASA OBがセットから出ようとするとき、本物にあった出口(エレベータ、管制センターは3階にあった)を探そうとして迷ったというエピソードもある。
映画として脚色するために、史実にないカットも盛り込まれている。船内で撹拌スイッチについて、ヘイズとスワイガートが口論するシーンがあるが、これは実際にはなかった。そのためか、ラヴェル船長の夫人がシャワーを浴びている際に指輪を落とすシーンまで誇張であると批判を浴びたようだが、こちらは事実とのことである(10th アニバーサリーディスク映像特典のDisc1の音声解説、および、Disc2の夫人本人へのインタビューによる)。また、前述のように、実際のミッションで発生した問題等はカットされたり一部事実と異なったりしている部分もある。次から次へとピンチが襲いかかる緊迫感と、船員達の友情を優先したストーリーラインのため、史実では度々交信される地上班へのねぎらいと感謝の描写が無い(特に突入寸前の交信。宇宙開拓史に残る交信である)のは、宇宙ファンをややがっかりとさせるところである。
日本語版を鑑賞する時の注意点は、戸田奈津子訳の字幕において電気回路の Open / Close が全て逆に翻訳されていることである。たとえば、Main Bus B close と言っている箇所があるが、これが「メインバスB閉鎖」と翻訳されている。字幕通りに解釈するとバスBのスイッチを切るように聞こえるが、ここは足りない電源を逆流で確保するシーンで、実際その後のカットではBスイッチを操作したあと、室内灯が次々に点いているので、辻褄が合わない。Open は開放(=スイッチを切る)、Close は接続(=スイッチを入れる)であって、電気知識のない人にとっては気にならないかもしれないが、史実の再現をだいなしにする重大な誤訳である。これは後で発売されたDVDでも改善されていないので、注意が必要である。 また、吹き替え版も山寺宏一のものと江原正士のものでは話の内容や台詞そのものが違っている。金曜ロードショーで一度だけ放映された山寺の吹き替えではエンディングでクルーたちのその後が語られているなどの違いがある。現在主にテレビで放送されDVDやVHSに収録されている江原正士のものはエンディングの短いクルーたちのその後が一切語られないバージョンである。