ボート
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スポーツとしてのボートはローイング、漕艇(そうてい)、端艇(たんてい)、競漕(きょうそう)とも呼び、座席(シート)が前後に動き、オールを使って脚力により船を進めることでレースをする競技。
世界的に見れば、ボート競技が盛んに行われているのは発祥の地である欧米諸国である。日本では、学生や実業団の競技が主流。
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[編集] 歴史
そもそもボートは交通手段として古代から使われていたので、それと同じように「船を使ったレース」としてはそこまでさかのぼれる。近代ボート競技の始まりは1716年にロンドンで行われた Doggett's Coat and Badge Race と言われているが、14世紀にゴンドラを使ったレースがヴェネツィアで行われたという記録もある。オリンピックにも第2回パリ大会(男子)、第21回モントリオール大会(女子)から採用されており、歴史は深い。日本に輸入されてきたのは1866年で、横浜山下町に外人ボートクラブ創立されたのが始まりといわれている(日本ボート協会ホームページより)。
[編集] 競技内容
水上でボートに乗って、ある一定の距離をオールを使って漕ぎ順位を競う。ルールは単純であるが、競技の特性上自然条件・天候などに大きく左右されやすく奥が深い。競技大会はレガッタともいう。レガッタは、ヨットなど水上スポーツ大会を指す言葉としてももちいられ,語源はゴンドラの競漕に由来する。
[編集] 種目
ボートにはさまざまな種類がある。大きく分けて、大きいオールを一人一本持って漕ぐスウィープ種目と、小さいオールを一人二本持って漕ぐスカル種目の2つがある。一般に、同じ漕手数の艇の場合、スウィープよりスカルのほうが高速。
また、体重によって軽量級とオープン種目に分かれる。
- エイト (8+)
- スウィープ艇で、8人の漕手と1人の舵手が乗る。ボート競技の中では最大の人数で、最も高速。
- フォア (4−, 4+)、クォドルプル (4×, 4×+)
- 4人で漕ぐ種目には、スウィープ艇として舵手付きフォア (4+)、舵手なしフォア (4−)、スカル艇では舵手付きクォドルプル (4×+) と舵手なしクォドルプル (4×) の4種目がある。高校生の競技では舵手付クォドルプルがもっとも人数が多い。
- ペア (2−, 2+)、ダブルスカル (2×)
- 2人で漕ぐ種目にはスウィープ艇として舵手なしペア (2−)、舵手付きペア (2+)、スカル艇としてはダブルスカル (2×) がある。
- シングルスカル (1×)
- 1人で漕ぐ、ボート競技の中で唯一の個人種目。
上記で、「+」は舵手つき種目、「−」は舵手なし種目、「×」はスカル種目を指す。
[編集] 距離
国際大会では2000メートルにて競われる。国内では1000メートルでのレースも多いがこれは直線距離を河川湖にて2000メートル確保できないことが事情として上げられる。また、国内で最も有名な早慶レガッタは3000メートルで行われているが、コースは自然の河川を利用して行われており、ヘッド・レースと呼ばれている。
[編集] クルー(ポジション)
クルーとはいわゆるチームのことである。またチームの中で使う場合は選手一人一人を指す。ここでは、後者の使い方をする。
- ストローク(Stroke、整調、記号S)
- 船尾に最も近い漕手。漕手全員がストロークやストロークのオールの動きを見れるので、漕手はストロークに合わせて漕ぐ。
- ミドルクルー(Middle Crew、記号2–7)
- ストロークとバウにはさまれた漕手。船首に近い方が数字が小さい。エンジンルームとも呼ばれ、体力のある選手が置かれる。
- バウ(Bow、舳手、記号B)
- 船首に最も近い漕手。漕手全員の方を向いているので、声をかけて盛り上げたり、アドバイスをしたり、リードする。
- コックス(Cox、舵手、記号C)
- 舵を取る選手。その他レート(ピッチ)やタイムを計ったり、クルーを引き締め、盛り上げる。
複数の選手をまとめて呼ぶこともある。
- バウペア・ストロークペア
- それぞれ船首・船尾に近い漕手2人
- バウフォア・ストロークフォア
- それぞれ船首・船尾に近い漕手4人
[編集] 用具
ボート競技には以下のような用具が不可欠である。 現在、日本国内の製造メーカーは桑野造船(滋賀県大津市)のみである。
[編集] 艇
競技用の艇は公園にある手漕ぎボート等にに比べてかなり細く、長い。艇の種類は大まかに
- 漕手の数:1、2、4、8
- 舵手の位置:舵手なし、トップコックス(船首に舵手が乗る)、スタンコックス(船尾に舵手が乗る)
で分けられる。スウィープ種目とスカル種目の艇は普通は互いに改造が可能である。その際はリガーを付け替えなければならない。
なお、種目ごとに最低重量の基準が設けられている。([[1]])
[編集] オール
競技用のオールは3メートル弱の長さであり、50センチメートル程度のブレードをもつ。スカル競技のオールはスウィープ競技のものに比べて短く、ブレードも小さい。
[編集] オリンピックと世界選手権
ボート競技 (夏季オリンピック)、世界ボート選手権参照。
それぞれ開催されている種目の数が違う。(オリンピックが14種目、世界ボート選手権が23種目。)ボート界ではオリンピックに重きがおかれていることが多い。
[編集] 日本国内におけるボート
欧米諸国に比べると、競技人口は少ない。しかし、近年ボートを題材にしたテレビドラマやテレビ番組が放映されたことなどから、認知度は上がってきている。また、2005年8月には岐阜県長良川でアジア初の世界選手権が開催された。
[編集] 大学におけるボート
大学のボート競技は盛んで、早稲田大学と慶應義塾大学の対校試合である、早慶レガッタは三大早慶戦と言われ、隅田川の春の風物詩としても有名である。また学校間での対抗戦として最も歴史があるのは開成高校と筑波大学附属高等学校の行っているもので、大正9年から行われる。以来平成18年で78回を迎えた。5月のゴールデンウィークの次の週の日曜日に行われる東京大学と一橋大学の対校試合は「東商レガッタ」(一橋では「商東戦」)と呼ばれる。通算成績では東大が一橋を大きくリードしているが、近年は一橋が優勢である。伝統校と呼ばれる大学が活躍していた時代と現在では大きく勢力図が変わってきている。早稲田大学や慶應大学は現在でも強豪校であるが、東京大学、一橋大学の両校にかつてのような強さはない。東京大学はかつて、全日本選手権4連覇など輝かしい成績を残した時代があったが1987年の全日本大学選手権優勝以来、軽量級を除いてはエイトのタイトルから遠ざかっている。反対にこの20年あまりで最も力を伸ばしてきた大学が中央大学や日本大学などの私立大学である。特に中央大学はエイトにおいて、1983年の全日本大学選手権及び全日本選手権の初優勝以来、全日本選手権の優勝が5回、そして全日本大学選手権での優勝は4連覇、3連覇を含む13回を数える。さらに1983年以来、現在に至るまでの23年間に渡って、全日本大学選手権のエイトでは優勝13回、準優勝9回、3位1回と連続して表彰台に上がるという驚異的な実績を残している。近年では中央大学を破ることが優勝するということを意味するようになっているが、伝統校と呼ばれる学校も巻き返しに躍起である。早稲田大学では豊富な資金と学校のネームバリュー、そして、スポーツ推薦制度の強化で超高校級の一流選手を毎年、獲得している。慶應義塾大学は附属高校のボート部強化に努め、高校大学と一貫した指導体制で効果を上げている。2003年はこうした努力が実を結び中央大学を破り栄冠を手にした。日本大学もレギュラー選手の学費免除制度など魅力的な条件で多数の有望選手を毎年獲得して、中央大学に次ぐ5回の優勝を数えている。最近では新興勢力の台頭も著しく仙台大学は創部4年目で早くも全日本大学選手権のエイト決勝に駒を進めてきた。このように私立大学が優勢であるが、国立大学勢では唯一東北大学が毎年優勝に絡む活躍をしており、2005年、2006年と2年連続エイト準優勝を果たすほどの実力をもつ。強豪私立大学とは違い、入学時のほとんどの部員はそれまでオールを握ったことはなく、そのようなハンディを背負いながらも全国制覇を目指す彼らの姿からは、学ぶべき事は多いと思われる。
[編集] 高校におけるボート
中学校に設置されているボート部が少ないので、始める時の選手間での実力差が少ない。主要な大会は全国高等学校総合体育大会(インターハイ)や全国高等学校選抜ボート大会(全国選抜、3月に天竜川で開催)であるが、対校戦に重きを置いている高校も少なくない。距離はインターハイが1000メートル、全国選抜が2000メートル(地方大会には1000メートルや2000メートルのものがある)であったりと色々である。
2001年からはスウィープ競技が消え、スカル競技のみとなり、舵手つきクォドルプル、ダブルスカル、シングルスカルの3競技となった。
[編集] 主なボートコース
川、湖、ダム等の中に作られたものがある一方、人工のものもある。
[編集] 扱った作品
- 田中英光 『オリンポスの果実』 ISBN 4101076014
- ドラマ『愛という名のもとに』
- 小説、映画、ドラマ 『がんばっていきまっしょい』
- 山際淳司 「たった一人のオリンピック」(『スローカーブを、もう一球』収録作品)
- ディビッド・ハルバースタム 『栄光と狂気』
- 原秀則『レガッタ~君といた永遠~』
- 映画 『いちご白書』
- 映画 『トゥルーブルー』