PRTR制度
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PRTR制度(ぴーあーるてぃーあーるせいど)は、どのような化学物質が、どこから、どのくらい、環境(大気・水域・土壌など)中へ排出されているか(排出量)、廃棄物などとして移動しているか(移動量)を把握し、集計・公表する仕組み。
PRTRとはPollutant Release and Transfer Registerの略であり、化学物質排出移動量届出制度、環境汚染物質排出移動登録制度などと訳されている。
日本においては、1999年に「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法、化管法、化学物質排出把握管理促進法)として法制化された。なお、この法律によって導入された制度のもう一つの大きな柱にMSDS制度がある。
日本のPRTRにおいては、政令で指定された物質(354種類)を年間1トン(発がん性のある12物質については0.5トン)以上取り扱う事業所で、業種や従業員数などの要件に合致するものについて、その事業所を持つ事業者は、指定の物質の排出量・移動量を届け出ることが義務付けられている。国はその届出を集計するとともに、届出対象外の排出源(非対象業種、小規模事業所、家庭、自動車など)からの排出量を推計し、これを公表している。また、個別事業所の届出値も開示されている。
地方自治体においても、PRTR法と同等の条例などが制定され、あるいはその上乗せ・横出しが行われている。さらに、地方自治体が独自に集計・推計したデータの公表も、法律に基づく措置ではないものの、全国で行われている。
第1回届出の集計結果として、平成13年度実績の排出量データが平成15年3月に公表され、以後毎年公表が行われている。平成17年度(平成16年度実績)の届出における国内の排出量(全排出先についての合計)の上位5物質は以下のとおりであった。
※排出量・移動量の単位としてt/year等を用いている例もみられるが、 PRTR排出量・移動量は速度としての意味合いが薄いため、ここでは、 時間で除した形の単位とはしていない。
PRTR法は従来の公害関連法令とは異なり、規制という手法を含まない。罰則を設けているのも、事業者が届出義務に違反した場合などであり、排出量または移動量の大小については、規定上、何らの制限もない。しかし、行政による公表とその内容に対する市民の評価といった社会的な圧力により、結果として、事業者が取り扱う物質とそのリスクの総量を減らすことを狙いとしている。ただし、ここで言うリスクとは、あくまで「物質の環境リスク」であって、日常会話で使われる意味でのリスクとは必ずしも同じでない。
PRTR法が対象とする物質は、詳細なリスク評価が未だなされていないものである(ダイオキシン類などの一部の物質を除く。)。その理由は、「リスクの不明な無数の物質への対策として、ひとまずその量を把握することから始める」という発想により本制度が導入されたからである。基本的なリスク評価が終了し、かつ問題のある物質については、環境基準などを制定するなどの対応が、既に過去数十年間執られてきている。また、放射性物質は他法令による規制があるため、PRTR法の対象外である。
海外において本制度は、平成18年10月現在、欧米を中心に法制化されており、隣国の韓国においても導入が予定されている。制度の趣旨、対象物質などには国によって違いがあり、重視する事項が環境への影響であったり、事業者による化学物質の適正管理であったりする。前者は欧州型、後者は米国型と表現することもできよう。なお、日本版の本制度の内容は、両者の中間的なものとなっている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
(PRTR及びそのデータ)
- PRTRインフォメーション広場(環境省環境保健部)
- 化学物質排出把握管理促進法のホームページ(経済産業省製造産業局)
- PRTR & Risk Communication((社)環境情報科学センター(CEIS) 環境省委託業者)……市区町村別の排出量集計結果等
- 化学物質排出把握管理促進法((独)製品評価技術基盤機構(NITE) 経済産業省委託業者)……届出書の処理等
(化学物質データ)
- 化学物質安全情報提供システム(kis-net)(神奈川県環境科学センター)……物質ごとの安全性等に関する各種データ
- 化学物質データベースWebKis-Plus((独)国立環境研究所)……上記の神奈川県kis-netの内容を基本としたデータベース