2進接頭辞
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2進接頭辞(にしんせっとうじ)は情報工学で大きな情報量(バイトやビット)を示すのに使われる。キロ、メガ、ギガといったSI接頭辞に由来しているが意味は少し異なっている。
情報工学の分野では頻繁に二進法を使うため、2の冪乗が良く使用される。そこで大きな量を表す時には、1024(=210) を表す為にキロ、10242(=220) を表す為にメガ、同様にギガ、テラ、ペタなどがよく使われる。1000 と 1024 が近いのでこのように使われるが、これらの意味は SI 接頭辞とは異なる。
主にバイトやビットといった情報量の単位と組み合わせ、1キロバイトや2メガビットなどと表記する。記号を使用して1KB、2Mbitと書くこともできる。また略式では単位を省略して1キロ、2メガといった言い方もされる。
情報工学分野において必ず 2進接頭辞が使われるわけではなく、SI接頭辞も使用されるので、1 キロバイトが 1000 バイトなのか 1024 バイトなのかは不明確な場合がある。IEC(国際電気標準会議)は 1998 年に SI 接頭辞と区別できる新たな 2進接頭辞を承認した。従来のキロ、メガ、ギガなどはIEC規格ではキビ、メビ、ギビなどとなり、1キロバイトは1キビバイト、2メガビットは2メビビットとなる。
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[編集] 従来の用法
名前 | 記号 | 乗数 | SI接頭辞の乗数 |
---|---|---|---|
キロ(kilo) | K | 210 = 1 024 | 103 = 1 000 |
メガ(mega) | M | 220 = 1 048 576 | 106 = 1 000 000 |
ギガ(giga) | G | 230 = 1 073 741 824 | 109 = 1 000 000 000 |
テラ(tera) | T | 240 = 1 099 511 627 776 | 1012 = 1 000 000 000 000 |
ペタ(peta) | P | 250 = 1 125 899 906 842 624 | 1015 = 1 000 000 000 000 000 |
エクサ(exa) | E | 260 = 1 152 921 504 606 846 976 | 1018 = 1 000 000 000 000 000 000 |
ゼタ(zetta) | Z | 270 = 1 180 591 620 717 411 303 424 | 1021 = 1 000 000 000 000 000 000 000 |
ヨタ(yotta) | Y | 280 = 1 208 925 819 614 629 174 706 176 | 1024 = 1 000 000 000 000 000 000 000 000 |
キロの記号は SI 接頭辞の k と区別して K が使用される。それ以外の記号は SI 接頭辞と同じで区別できない。
[編集] IEC 規格の接頭辞
名前 | 記号 | 乗数 |
---|---|---|
キビ(kibi) | Ki | 210 = 1 024 |
メビ(mebi) | Mi | 220 = 1 048 576 |
ギビ(gibi) | Gi | 230 = 1 073 741 824 |
テビ(tebi) | Ti | 240 = 1 099 511 627 776 |
ペビ(pebi) | Pi | 250 = 1 125 899 906 842 624 |
エクスビ(exbi) | Ei | 260 = 1 152 921 504 606 846 976 |
ゼビ(zebi) | Zi | 270 = 1 180 591 620 717 411 303 424 |
ヨビ(yobi) | Yi | 280 = 1 208 925 819 614 629 174 706 176 |
語源は近い値の SI 接頭辞の先頭部分に 2 進を表す bi を付けたもので、記号では SI 接頭辞の記号に i が付く。ただしキビについては k が大文字になって Ki となる。
2005年時点ではこの表現方法はまだ広く使われていない。2005年までは、SI接頭辞のエクサに対応するエクスビまでしか定められておらず、ゼタ(1021)、ヨタ(1024)に対応する2進接頭辞はなかった。2005年8月、IECは、エクスビ以上の接頭辞としてゼビ (zebi)、ヨビ (yobi)を次の版から導入すると発表した。
[編集] 2進接頭辞とSI接頭辞
一般的に半導体メモリの構造に起因する情報量では2進接頭辞が、それ以外でSI接頭辞が使用される。しかしメモリ関連であっても場面によっては十進法に基づくSI接頭辞の方が量の比較や計算が行いやすい利便性があるため、両者の使い分けが考えられる。そのため2進接頭辞はIEC規格での明確な表示が必要となる。
IEC規格でない旧来の2進接頭辞とSI接頭辞の使い分けは分野や場合によっては曖昧で混乱しており、キロがSI接頭辞の1,000であるか2進接頭辞の1,024であるかはそれだけではわからない事もある。キロでは双方の差は約2%だが、メガで約5%、ギガで約7%、テラで約10%と乗数が大きくなるにつれその差も大きくなる。
一般にRAMやROMなど半導体メモリの容量は2進接頭辞を使う。1キロバイト=1,024バイト、1メガバイト=1,024キロバイトである。
CPU等のクロック周波数やサンプリング周波数など周波数にはSI接頭辞が使用される。2.4ギガヘルツは2,400,000,000ヘルツである。
通信速度、また音声や映像の圧縮やストリーミングでのビットレートではSI接頭辞が使用される。1メガビット/秒は1,000,000ビット/秒である。
フロッピーディスクの容量では2進接頭辞とSI接頭辞の混合した単位が使用される場合がある。多くの90mm(3.5インチ)2HDフロッピーディスクの容量は未フォーマット時1.44メガバイトと表示されるが、正確には1.44×1,000×1,024バイト(1,440キビバイト)の容量を持っている。この場合の"メガ"は1,000×1,024であり、SI接頭辞でも2進接頭辞でもない。いずれかを使用するなら1.47メガバイトまたは1.41メビバイトとなる。
ハードディスクドライブの容量ではSI接頭辞が使用される。これは同じハードディスクでもSI接頭辞で表示したほうが見かけの数字がより大きくなるというマーケティング上の理由からであると考えられている。例えば100ギガバイトのハードディスクドライブはおよそ100×1,000×1,000×1,000バイト(100×109バイト)の容量を持っている。しかしOS等の表示は2進接頭辞を使用している場合が多く、100ギガバイトのハードディスクがOS上で93ギビバイト前後と表示されるなど、ハードディスクドライブの容量表示とOSでの容量表示は食い違う場合が多い。その為SI接頭辞で表した製品の箱(ケース)や説明書などに小さく「OSの表示により、容量が小さく表示されることがあります。」等と表記されていることが多い。
ファイルや電子ドキュメントの大きさは伝統的に2進接頭辞が使われる場合が多い。これはメモリへの格納の観点からは合理的だが、近年のメモリ制約の縮小や通信との親和性を考えるとSI接頭辞の方が良い事もある。