養殖業
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養殖業(ようしょくぎょう)とは、狭義には水産業の一種で魚介類や海草などの水棲生物を人工的に育てる産業。広義には、水棲生物に限らず、生物全般を人工的に育てることを指す。ただし、陸生植物に関しては栽培、哺乳類に関しては畜産あるいは酪農、鶏に関しては養鶏という用語が利用される。生育した生物本体または副生成物を利用することを目的としており、鑑賞、愛玩目的で育てる場合は養殖とは呼ばない。養殖するためには対象となる生物の生態を知る必要があり、養殖に成功するまでには時間がかかる。魚介類に関しては、卵あるいは稚魚、稚貝から育てることが多い。
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[編集] 養殖の目的
ほとんどの場合、育てた生物自体の利用(主に食用)が目的だが、生物の育成によって副次的に生成される物質の利用を目的とする場合(真珠など)もある。
[編集] 完全養殖
生物の誕生から次世代への継続というサイクルをすべて人工飼育で実施することを完全養殖(かんぜんようしょく)という。例えば、魚類であれば、成魚から卵を採り、人工孵化の後に成魚にして、さらに成長し大魚から卵を採って人工孵化させることが出来ると完全養殖と呼んでいる。
完全養殖は親がどのように子を誕生させ、孵化させるのかという部分まで研究を行う必要があり、生態が明らかになっていない動植物、特に水中で生育する魚類では大変に難しい技術とされている。しかし、21世紀に入ってから、かつては不可能とされていたウナギやマグロといった魚介類での完全養殖の実験が成功しており、今後の技術発展に水産業者の関心が集まっている。
[編集] 養殖される主な魚類
- 養殖生産量のトップ5魚種
- 1位 カキ類(殻付き) 236千トン
- 2位 ホタテガイ 215千トン
- 3位 ブリ類 150千トン
- 4位 マダイ 81千トン
- 5位 ワカメ類 62千トン
- 2004年農林水産省統計より
- 水産統計では魚種はひらがな表記であるが、リンクの便のためカタカナ表記とした
[編集] 主産地
魚種によって生産地はまったく異なるが、生産金額では下記の地域が上位にランクされる。西九州、四国はいずれもタイ、ブリ類(ハマチ等)の養殖が盛んである。なお、海面漁業も含めると北海道がトップである。
- 養殖業生産額上位5道県
[編集] 養殖の問題点
- 生産過剰
- 養殖技術が確立され、稚魚から成魚になるまでの歩留まりが向上すると、生産過剰になり、成魚の市場価格が暴落する。ある魚種が収益が高いと注目されると多くの養殖業者がその魚種を取り扱おうとすることから生じ、また市場価格が低迷しているからといって長期間蓄養すると餌代金も無視できないので、安値でも出荷せざるを得なくなる。稚魚の確保に制約のある魚種の場合、一定のブレーキがきくが、幼生から養殖できる魚種の場合、その歯止めが利かない。
- 魚場汚染
- 餌の過剰投与、過密養殖等により、魚場の汚染がかねてから指摘されている。陸と海とが入り組み、海流のおだやかな入り江で養殖されることが多いので、海流による浄化作用がききにくい。近年では餌も改良され、また投餌技術も進歩したため、食べ残し、汚染の少ない餌が用いられるようになっている。また、フグ養殖業者によるホルマリンたれ流し騒動もかつてはあった。
- 品質への不信
- 日本の消費者には天然物志向が極めて強く、「養殖物は何を食べさせているかわからない」という観念が支配的である。また、抗生物質など投与物への不信も根強いものがある。例えば、大日本水産会が2003年度(平成15年度)に行なった「水産物を中心とした消費に関する調査(若年層対象調査)」でも、養殖魚は海水汚染の問題や魚病対策に使用される抗生物質・抗菌剤残留など、多くの消費者が不安を抱いていることがわかった。
- 養殖業者では餌の改良など食味の改良に取り組み、品質の向上に努めている。また、関係団体では消費者への広報活動等も行っている。なお、養殖業者では、「何を餌に食べているかわからない天然物より食べさせた餌のはっきりしている養殖物の方が安心」と主張している。
- ブランド化
- 外国産水産物との競合
- 外国産の水産物が多量に流入し、これらとの競合に揉まれている。