顔認識システム
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顔認識システム(Facial Recognition System)は、デジタル画像から人を自動的に識別するためのコンピュータ用アプリケーションである。ライブ画像内の顔と思われる部分を抜き出し、顔面画像データベースと比較することで識別を行う。
一般にセキュリティシステムのために使われ、指紋認証システムや目の虹彩認識システムなどの他の生体認証と対比できる。ロンドンのニューハム地区では、地区全体の閉回路テレビシステムに組み込まれた顔認識システムを持っている。
一般的な認識アルゴリズムには、固有顔、fisherface、隠れマルコフモデル、およびニューロン動機づけによるダイナミックリンク照合などがある。最近の新たなトレンドとして、見えない部分も考慮した正確さを達成しようとする三次元顔認識がある。別のトレンドとして皮膚の詳細な質感に着目するものもある。FERETデータベース(DARPAが公表した顔面画像のデータベース)を使ったベンチマークでは、このアルゴリズムが以前のアルゴリズムより大幅に信頼性が高いことを示した。
Griffin Investigation は、カジノでカードカウンティングなどを行うブラックリストに載っている人物を識別するシステムで有名である。
技術評論家たちは、ニューハムに実際にデータベースに登録されている犯罪者がいたにも関わらず、システムが犯罪者を一人も認識していない(2004年現在)ことに批判的である。フロリダ州タンパでの警察による実験でも、同様の期待外れの結果となった。
[編集] 最初の顔認識システム
自動化された顔認識システムのパイオニアは、Woody Bledsoe、Helen Chan Wolf、Charles Bisson らである。
1964年から1965年にかけて、Bledsoe は Helen Chan と Charles Bisson と共にコンピュータを使った顔認識に取り組んだ。彼はこの仕事に誇りを持っていたが、資金提供したのが匿名の諜報機関であったため、あまり公けにされることはなく、ごく一部の成果が公表されるにとどまった。大規模な画像データベース(顔写真の本のようなもの)と一枚の写真を与えられたとき、データベースから写真にマッチする少数のレコードを抜き出すことが研究課題であった。手法の成功度は抜き出したレコード数のデータベース全体のレコード数に対する比率で表される。Bledsoeは、その困難さを以下のように述べている。
- 「この認識問題は頭の上下左右の動き、照度や角度、表情や加齢で大きな変化があることで難しくなっている。機械による顔認識に関する他の試みでは、これらの変化をほとんどまたは全く考慮しなかった。光学的に加工を施さない画像データで相関関係(またはパターン照合)を行う手法を使う研究者もいたが、それらは変化が激しい場合には必ず失敗した。特に、頭の左右の向きが違う同一人物の写真では、相関関係が極めて低い。
このプロジェクトは「マン・マシン」と分類された。というのは、人間が写真から特徴を抽出して、それをコンピュータが認識するのに使ったからである。GRAFACONやRAND TABLETといった装置を使って、オペレーターが瞳孔の中心、目の内側の端と外側の端、額の中心の生え際などといった特徴点を抽出した。これらの座標から、口や目の幅、瞳孔と瞳孔の間隔など20種類の距離が計算される。オペレーターは一時間に約40枚の写真を処理することができた。データベース構築時には、これらのデータと顔写真の人物名が対応付けてコンピュータに格納された。認識フェーズでは、これら距離データ群が対象となる写真から抽出した距離データ群と比較される。そして、最も近いレコードが回答として出てくる。
この説明は非常に単純化しているので、ほとんどの場合このまま実施すると失敗するだろう。何故なら二枚の別々に撮影された写真で顔の上下左右の向きやカメラとの距離といった条件が完全に一致することはないからである。従って、距離データは顔を真正面から見たときの値に正規化される。この正規化を行うために、プログラムは顔の向きや傾きの数値を決定しようとする。そして、それらの値(角度)を使って、コンピュータは向きや傾きの変化を打ち消して真正面から見た場合のデータを計算する。角度を計算するために、コンピュータは頭の三次元の位置を知る必要がある。実際の頭を使うことができないので、Bledsoe は七人の頭について測定を行い、標準的な頭の位置を求めた。
Bledsoeが1966年にこの研究を離れた後に、この作業は Peter Hart らによってスタンフォード研究所で続けられた。2000枚を超える写真のデータベースの上で実行された実験において、コンピュータと人間の顔認識力比較では常にコンピュータが優れていた。
[編集] 関連項目
- 自動車ナンバー自動読取装置
- 大量監視
- 人間の脳による顔認識
- パターン認識、アナロジー、事例ベース推論
[編集] 外部リンク
- Face Recognition Homepage
- Face Detection Homepage
- 関西空港での導入に関する記事(ASCII24)
- 2005年東京モーターショーでの顔認識技術に関する記事(日経BP)
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