閑居友
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閑居友(かんきょのとも)は仮名文で書かれた鎌倉初期の仏教説話集。識語に「閑居之真友、発心之良媒」とあり、命名の義と思われる。承久四年(1222)春成立。二巻32話からなり、先行の説話集に無い話だけを収める。高貴な女性某のために、求道のあるべき姿を示した書。先行する『発心集』の影響を受けて、その欠陥を改め、思想を継承・補完することが意図と、作者は言う。
作者について古来慈鎮和尚と言われてきたが、慈鎮でなく彼の兄の孫である天台僧証月房慶政上人であることが研究によって明らかになった。慶政は和歌を嗜み、豊富な著述活動を行った才人。初期の著作『閑居友』のほか、『比良山古人霊託』という説話集も彼の手になるという。摂政九条良経の子息にして関白道家の兄に生まれながら、幼時の事故が身体に障害を来たしたといい、園城寺に入り出家。東寺に顕密を学んだ後、建保五年(1217)入宋し翌年帰国した。洛西松尾に法華山寺を建立しそこに住み、栂尾の明恵と親交を結んだ。
『閑居友』上巻21話は真如親王の天竺求道譚から起筆し、善珠・玄賓・空也ら高僧譚をはじめ、有名無名の聖の信仰生活を描き、下巻11話は建礼門院ら女性関係の説話が多い。遁世者へ深く共感しながら、作者は厭世思想を持たない。慶政の不幸から来る強さというものであろう。ほかに死と不浄への関心が指摘される。
尊経閣文庫に古写本が伝存する。新日本古典文学大系所収。