鎮守神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
鎮守神(ちんじゅ がみ)とは特定の建造物や一定区域の土地を守護するために祀られた神である。現在では、氏神(うじがみ)、産土神(うぶすながみ)と同一視されることも多い。
中国の伽藍神に起源を持つといわれる。日本の寺院においても、仏教が伝わり、神仏習合が進む中で、寺院守護のための神祇が祀られるようになり、のちに寺院以外の建造物や一定の区域の土地にも鎮守神を祀るようになった。 現在では、鎮守神はその土地に住む神(地主神)だと考えられることが多いが、元をたどれば、鎮守神は、地主神を押さえ込み、服従させるために新たに祀られた神である。つまり、人間がある土地に人工物を造営したとき、その土地に宿る神霊が人間や造営物に対して危害を加える祟りを起こさせないように、その地主神よりも霊威の強い神を新たに勧請して祀ったのである。そして、地主神は鎮守神に従順に服属し、その活動を守護・補佐することが期待された(ときには地主神が抵抗し祟りを起こすこともあった。)。 しかし、時代とともに鎮守神の本来の意味は忘れられ、地主神との混同が起こり、両者は習合する結果となった。一度帰順すると地主神も抵抗することはなくなり、鎮守神と同じように守護にあたると考えられたことも両者を同一視する一因となったのだろう。 こうした鎮守神は、寺院・邸宅・荘園・城郭などに祀られ、村落においても祀られるようになった。村落に神が鎮守神として祀られるようになったことについては、ある村落とその周辺を治める豪族との対立関係の中で、豪族が祀る一族神としての氏神の霊威に対抗する形で、村落に鎮守として神社を祀るようになったことが一因として考えられる。
様々な形態の村落神を一様に鎮守と呼ぶようになったことについては、
- 地主神と鎮守神との習合により、神観念が変化し、地主神が人間の活動を妨げずにそのまま鎮守としての機能を果たしてくれるという信仰が生まれ、従来祀ってある産土神も新たに祀る地主神・産土神も鎮守と見なされたこと。
- ひとつの同族集団により構成されていた村落が複数の同族集団により構成されるようになったことにより、血縁より地縁が重視されるようになり、同族を守護する神から、土地を守護する神に神格が変化していったこと。
- 徳川幕府下の村落では、多く、寺院が神社を管理することとなっていたので、あたかも寺院の鎮守神のように見なされたこと。
などの理由が考えられる。
カテゴリ: 神道関連のスタブ項目 | 神道 | 日本の神 | 民間信仰