重水炉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
重水炉(じゅうすいろ)は、減速材に重水を用いる原子炉のこと。
重水炉の優れている所は重水が中性子の吸収をしにくい事であり、その比は軽水の三百分の一で減速材として優れている。中性子吸収量が少ないため、この炉は燃料として濃縮していない天然ウランが使用できる。
重水炉の一番の利点はこの天然ウラン燃料が使用できる点である。濃縮されていない天然ウランは価格が安く、核拡散の点から国際世論から厳しい目を向けられる濃縮工場を持たずに済む。他国から濃縮ウラン燃料を買う場合はその国の事情に左右される可能性を考慮しなければ成らない。かように濃縮ウランの取り扱いは不便であり、それが天然ウラン利用の利点となっている。
1999年現在、重水炉はカナダ(14基)、インド(8基)、韓国(4基)で稼動している他、数カ国で採用されている(日本原子力産業会議(編)世界の原子力発電開発の動向 1999年次報告より)。
[編集] 主な重水炉
- ふげん(新型転換炉)(重水減速軽水冷却圧力管型沸騰水炉)→ 日本が開発、計画中止
- 日本はエネルギー安全保障の一環として将来的に国内での核燃料サイクル完成を目指しており、再処理で得られるプルトニウムと海外から買いつけたウラン燃料の有効利用策として独自形式の重水炉を開発した。
- CANDU炉(重水減速重水冷却圧力管型加圧水炉)→ カナダが開発
- カナダは自国の豊富なウラン資源が有効に活用できる重水炉を重視している。
[編集] 重水炉の問題点
- 重水を作るコストが高い
- 通常の水に含まれる重水は0.015574%でしかない。その濃縮にかかるコストは高く、したがって重水はきわめて高価となる。1968年の記録にはポンド当り28.5USドルとあるし、2004年現在、試薬用の純度99%の重水は15,000円 / 100gである。この重水を発電炉ではトン単位で使用しなければならない。
- 使用済み燃料が多く出る