遺伝子プール
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遺伝子プールとは、繁殖可能な同種の個体群(メンデル集団)が持つ遺伝子の総体のこと。
有性生殖によって次世代の子孫を作る生物においては、受精により両親からの遺伝子が組み合わさって個体をつくり、配偶子形成のための減数分裂によって遺伝子が分離する。受精は、遺伝子プールからランダムに2つの遺伝子をピックアップして個体の中に新しい遺伝子の組み合わせを形成することに相当し、減数分裂は個体が持つ2つの遺伝子を遺伝子プールに戻すことに相当する。
ヒトを例に取ると、個体群の総数は約60億人からなり、ゲノムの遺伝子総数は25,000個程度からなり、各遺伝子座に存在する対立遺伝子の数は多数存在する。25,000個の各遺伝子座について、対立遺伝子を2個ずつ遺伝子プールからランダムにピックアップすることで、個人が形づくられる。仮に遺伝子座あたりの対立遺伝子数を平均10個とすると、個人を作るための遺伝子型の組み合わせ方は1025000になり、これは60億をはるかに上回る数字である。従って遺伝的には、個人はまったくユニークな存在であり、一卵性双生児を除いて、完全に同じ遺伝子構成を持った個人は世界のどこにも存在しないし、過去にも存在しなかったと考えてよい。
このような概念が必要な理由は、以下のようなものである。たとえば、ABO式血液型の遺伝子はA,B,O の3つであり、AとBはいずれもOに対して優性である。にもかかわらず、日本においてはB型はA型の約半数しか居ない。これは、日本人全体に見られる遺伝子の中でのそれぞれの遺伝子の頻度によるものである。つまり、それぞれの個体に於ける表現型はその個体の持つ遺伝子の力関係で決まるが、ある遺伝子を持つ個体がどの程度の数に達するかは、その個体群の中に含まれる個体の遺伝子を全部まとめて、その中でその遺伝子がどの程度の割合で含まれるか、によって決まるのである。
[編集] 参考文献
- 『生物進化を考える』木村資生 ISBN 4-00-430019-3