芸大事件
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芸大事件(げいだいじけん)とは、1970年代後半に、東京藝術大学音楽学部教授海野義雄が鑑定書を偽造して贋物のヴァイオリンの購入を学生に斡旋し、その見返りとして、楽器輸入販売業者から80万円相当の弓を受け取っていた事件。1981年に発覚し、楽壇にとどまらない大スキャンダルとなった。
[編集] 概要
1981年11月、東京藝術大学音楽学部によりヴァイオリン名器ガダニーニとして購入された備品が贋物であると発覚。このため、楽器輸入販売業「神田商会」の責任者が詐欺罪の容疑で東京地検特捜部に逮捕されたが、取調べの過程で海野義雄への贈賄が明らかになった。海野は国内外の一流オーケストラと共演し、史上最年少で東京藝術大学教授に就任、数多の国際コンクールで審査員を務める高名なヴァイオリニストだった。
1981年12月8日、特捜部は海野を鑑定書偽造と受託収賄の容疑で逮捕。このほか、海野が東京藝術大学の入試課題曲を漏洩していた疑惑も持ち上がったが、特捜部はUの教え子のプライバシーに配慮して立件を見送った。
海野は東京藝術大学から解雇され、1985年4月8日、東京地方裁判所で執行猶予付きの有罪判決を言い渡された。これ以後、海野は家族と共にフランスに移住して音楽活動を続けている。
[編集] 背景
これは俗に言う「ヴァイオリン転がし」と呼ばれ、弦楽器業界の副業としてその名が知られていたが、1981年の時点で摘発に及ぶとは考えられていなかった。
多くの関係者が「ヴァイオリン転がし」に関っているにもかかわらず、海野だけが捕まるのはおかしいと見る向きも未だに多い。史上最年少で就任したのをねたんだ筋の仕業と、陰謀論を唱える者もいる。