紅 (小説)
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『紅』(くれない)は、片山憲太郎/著、山本ヤマト/イラストのライトノベル。スーパーダッシュ文庫刊。 同作者の『電波的な彼女』と社会背景や登場人物がクロスオーバーした、アナザーストーリーに位置付けられている。
目次 |
[編集] あらすじ
五月雨荘に住む駆け出しの揉め事処理屋・紅真九郎の元へ、恩人であり尊敬する大先輩・柔沢紅香に連れられて来た一人の少女。 世界屈指の大財閥の御令嬢、九鳳院紫の護衛を依頼したいと言う。 世間知らずだが好奇心旺盛な紫との共同生活に慣れた頃、彼女を狙う人物が二人を襲う。 依頼の裏に隠された彼女の真相を知った時、真九郎が選んだ行動は・・・
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 登場人物
[編集] メインキャラクター
- 紅真九郎(くれない しんくろう)
- 星領学園1年1組の16歳。五月雨荘5号室在住。
- 8年前にアメリカで起きた国際空港爆破事件に遭い両親・姉と死別した後、幼馴染の村上銀子の家に厄介になっていたが、国際的な児童誘拐事件に銀子と共に巻き込まれてしまう。助けに現れた揉め事処理屋の柔沢紅香に憧れ、彼女の紹介により裏十三家の崩月家へ弟子入りし、高校入学と同時に揉め事処理屋を開業する。
- 崩月家当主・法泉の角を右腕に移植し、その力を解放する事により驚異的な剛力を発揮する。崩月流として対戦する際は、「崩月流甲一種第二級戦鬼(せんき)、紅真九郎」と名乗りを上げて対峙する。
- 極度の恋愛音痴。周りの女性からの好意に気付いていない。
- 九鳳院紫(くほういん むらさき)
- 世界屈指の大財閥にして表御三家の筆頭、九鳳院家の息女。公立小学校1年3組出席番号8番の7歳。
- 公式には九鳳院家の当主・九鳳院蓮丈とその妻の子とされるが、蓮丈と実妹・蒼樹との間の子である。
- 九鳳院家は遺伝子疾患により近親相姦でしか子孫を残せず、九鳳院に生まれた女子は奥ノ院と呼ばれる隔離施設で一生を過ごすが、紫の「恋というのをしてみたい」という願いを叶えるため、母・蒼樹の知り合いである柔沢紅香により奥ノ院から連れ出される。そこで出会った真九郎との共同生活を通じ、次第に彼に好意を寄せていく。
- 奥ノ院での教育方針の影響もあり、世間一般の常識には疎いが非常に好奇心が旺盛なため、解らない事があれば真九郎に質問して来る。但し7歳の少女が知るには早すぎる内容が多々あり、真九郎が回答に苦慮する場合が多い。
- 直感によって人の嘘を見抜ける持ち主。敵に回すと怖い。
- 崩月家の長女、夕乃とは真九郎を巡って対立している。
- 崩月夕乃(ほうづき ゆうの)
- 真九郎と同じ星領学園2年の17歳。裏十三家の一つ、崩月流次期後継者。
- 崩月家に弟子入りした真九郎にとって姉のような存在。才色兼備の持ち主で、学内には彼女のファンが多い。
- 辞書で「大和撫子」の意味を引いたら「崩月夕乃のこと」と書いてある、とは星領学園男子生徒の評価。
- 但し彼女にとって真九郎以外は眼中に無く、積極的にアプローチしているものの空回り気味である。
- 顔に似合わず好戦的。真九郎に敵対する者は、徹底的に叩き潰す気概を持つ。
- 真九郎を巡り、九鳳院紫とは対等なライバルとして対立している。
- 村上銀子(むらかみ ぎんこ)
- 星領学園1年1組の16歳。真九郎にとって幼稚園からの幼馴染。
- 裏世界では有名な情報屋、村上銀次の孫にあたり、その地盤を引き継いで情報屋を営んでいる。
- 幼い頃は、真九郎と結婚して親の営むラーメン屋「楓味(ふうみ)亭」を継ぐ事を夢見ていたが、真九郎が揉め事処理屋を目指すようになってからは、情報屋として真九郎をサポートしている。
- 学内では殆ど何時でもノートパソコンを操作しており無愛想、友人も真九郎以外は皆無の模様。
- 才色兼備の持ち主だが上記の点が災いしてか、その素顔を知る者は真九郎以外にいない。
- 当然ながら真九郎に好意を持っているが、紫や夕乃のような積極的なアプローチは行っていない。
- 柔沢紅香(じゅうざわ べにか)
- 業界最高クラスの実力を持つ揉め事処理屋。かつて真九郎が巻き込まれた誘拐事件を颯爽と解決しており、その活躍を目の当たりにした真九郎が、揉め事処理屋を目指し目標とするようになった張本人である。
- かつて九鳳院家の奥ノ院で警備を行った事があり、そこで紫の母・蒼樹と知り合い親友も同然の存在となる。
- その際、九鳳院蓮丈とも知り合ったようだが、二人の間に何があったかは不明。
- 斬島切彦(きりしま きりひこ)
- 単行本二巻にて登場。
- 裏十三家の一つ、斬島家の第六十六代目で悪宇商会所属、通称《ギロチン》。年齢は10代前半らしいが不明。
- 切彦と名乗るが暦とした女の子。斬島では本家直系で殺し屋家業を継いだ者が「切彦」を名乗るので、継ぐ前の本名があるかもしれないが、現時点では不明。トレードマークは髪を結んだ黒いリボン。
- 暑いのも寒いのも駄目な虚弱体質で、おまけに花粉症で猫舌。アーケードの対戦ゲームが得意で、真九郎と出会った時は50人抜きを達成していた。
- 刃物を持つと大きく性格の変わるブレードハッピーであり、刃物を持った状態の彼女は非常に好戦的。
- 刃物の扱いが異常に上手く、歴戦の剣士でさえも剣技ではなく純粋な刃物の勝負で彼女には敵わない。
[編集] サブキャラクター
[編集] 五月雨荘の住人
- 闇絵(やみえ)
- 五月雨荘4号室に住む女性。五月雨荘で一番妖しい人物。
- つばの広い帽子、皮の手袋、ブラウス、ロングスカート、ハイヒールという出で立ちで、その全てが黒。首からこぶし大のドクロの首飾りをぶら下げている。
- 年齢及び職業不明。ヘビースモーカーで、夕暮れどきにはよく木の側にいる。黒猫を飼っており、名前はダビデという。
- 真九郎が行き詰ると、あれこれと助言を与えてくれる。
- 武藤環(むとう たまき)
- 五月雨荘6号室(真九郎の部屋の隣)に住む女子大生。五月雨荘で一番騒がしい人物。
- よく見れば美人だが、とにかく身だしなみに気を遣わない人間で、素材を全て台無しにしている。大酒呑みで酒癖が悪く、助平な話を平然と振るエロ女。拳で岩をも砕き、下駄でフルマラソンを走り切る、とは本人の弁。
- 町の空手道場で師範をしている。その道場には円と光という少女が通っているらしいが、それが『電波的な彼女』に登場する円堂円、堕花光のことかは不明。
- 鋼森(こうもり)
- 五月雨荘1号室の住人。滅多に部屋に居ない。“彼”という表記があるので、恐らく男性。
- 五月雨荘で唯一運転免許を持っており、愛車はフォルクスワーゲンのビートル。
- 真九郎との交流がある五月雨荘の住人は、闇絵と環と鋼森の三人のみらしい。現状(第二巻まで)では名前のみ登場。
[編集] 崩月家の人間
- 崩月法泉(ほうづき ほうせん)
- 裏十三家の一つ、崩月家現当主。
- 真九郎の師匠であり、自らの角(つの)の一つを真九郎に託す。
- 裏世界では知らない者は無い崩月流だが、法泉の代で裏世界の権力闘争からは身を引いている。
- 孫の夕乃と真九郎が一緒になって崩月流を継ぐ事を密かに思っているようだが、本人自身の女好きの性格も影響してか、真九郎の現状(主に女性関係)に不満は無い模様。
- 崩月冥理(ほうづき めいり)
- 夕乃と散鶴の母。夫は海外に出張中である。
- 詳しい描写は少ないが、どうやら大和撫子な優しい母親のようだ。
- 崩月散鶴(ほうづき ちづる)
- 崩月家の次女で、夕乃の妹。現在5歳。性格はとても大人しく、人見知りが激しい。
- 例によって真九郎に好意を寄せている模様。
[編集] 九鳳院の関係者
- 九鳳院蓮丈(くほういん れんじょう)
- 九鳳院財閥の総帥にして九鳳院家の現当主。紫や竜士の父。
- 口と顎に逞しい髭を蓄え、権力者、貴族というよりも世界の転覆を企む革命家の如き異相を持ち、凄まじい眼力で他者を圧倒する。この国の支配者の一人。
- 九鳳院蒼樹(くほういん そうじゅ)
- 九鳳院蓮丈の実の妹。紫の母であり紅香の古い友人でもある。紫が3歳の頃に他界している。
- 過去に交わした彼女との約束を理由に、紅香は紫を奥ノ院から連れ出した。
- 九鳳院竜士(くほういん りゅうじ)
- 九鳳院家の次男。16歳。真正のペドフィリア。性格はとことん最悪で、過去に幾度と無く紫の心や身体を傷つけてきた。《鉄腕》を雇い、真九郎から紫を取り戻そうとする。
- 単行本二巻では、頭を冷やせと蓮丈に命令され海外に飛ばされている。
- 騎場大作(きば だいさく)
- 黒いスーツで身を固めた初老の男性。黒いソフト帽を被り、左目に眼帯をしている。
- 左目は昔、柔沢紅香に潰されたものだが本人にとってこの傷は名誉の勲章である。九鳳院近衛隊の副隊長で、小学校に通い始めた紫の護衛及び送迎を務めている。
- リン・チェンシン
- 九鳳院近衛隊に所属する女性。隊での階級は第八位。
- 二刀を巧みに操る凄腕の剣士。彼女の持つ刀はかの有名な備前長船である。
- 誕生日は5月3日で年齢は19歳。スリーサイズは上から76、51、80。趣味は時代劇鑑賞で、好きな俳優は『隠密侍千人斬り』の佐東剛。
- 単行本二巻では、真九郎と共に志具原理津の護衛を勤める。
- 志具原理津(しぐはら りつ)
- 悪宇商会の殺し屋に命を狙われ、真九郎が護衛を務めることになる少女。西里総合病院に入院している。
- 真九郎が両親を失ったテロ事件に彼女も巻き込まれており、同じく両親を失っている。
- 志具原の家は九鳳院蓮丈の妻の遠縁にあたる。リン・チェンシンたち近衛隊が彼女の警護にあたっていたのは、蓮丈の厚意によるもの。
[編集] 悪宇商会の人間
- ルーシー・メイ
- 悪宇商会人事部副部長を務める女性。単行本二巻にて、真九郎をスカウトしにやってくる。
- 仕事に必要な情報は全て記憶しているのだが、白紙の手帳を捲らないと記憶を上手く引き出せない。
- 《鉄腕》 ダニエル・ブランチャード
- 悪宇商会に所属する黒人の戦闘屋。その二つ名の通り、両腕を戦闘用の義手に変えている。
- 単行本一巻では竜士に雇われている。
- 《ビッグフット》 フランク・ブランカ
- 悪宇商会に所属する巨漢の戦闘屋。ホラー映画に出てくる化け物のような外見をしている。
- その巨体に似合わず隠密行動が得意。
[編集] その他の人間たち
- 犬塚弥生(いぬづか やよい)
- 紅香の付き人。実家は古い忍の家系らしい。
- 普段は姿が見えないが、紅香が呼ぶと、何も無い空間から突然姿を現す。どうやら完全に気配を消す術を会得しているようだ。
- リン・チェンシンに「柔沢の犬が!」と言われ、「犬です」と答えるあたり、紅香の付き人としての自分にそれなりの誇りを持っているのだろう。
- 『電波的な彼女』には登場していないが、もしかしたら呼べば出てくるのかもしれない。
- 村上銀次(むらかみ ぎんじ)
- 戦前戦後の混乱期、及び高度経済成長期に暗躍した凄腕の情報屋。
- 数年前に海外で消息を絶ち、以来行方不明。
- 銀子の祖父であり、銀子は彼から情報屋としての人脈、ノウハウを全て受け継いでいる。
- 村上銀正(むらかみ ぎんせい)
- 銀子の父。ラーメン屋「楓味(ふうみ)亭」の店主。昔は喧嘩師として相当に鳴らしていたが、ある時ラーメン屋の娘に一目惚れし、ラーメン屋を継ぐことに決めた。
- 本来なら彼が村上銀次から情報屋を継ぐはずだったのだが……。
- 山浦銅太(やまうら どうた)
- 真九郎の住む町で山浦医院という小さな病院を経営している医師。年齢は50代後半。
- 医院を開業する以前は海外で兵士やゲリラを相手に腕を磨いてきた。
- 医者の前には患者は等しく平等、と言う信念を持ち、患者ならば誰であろうと差別はしない。
- 東西南(とうざい みなみ)
- 山浦の病院で働く看護師で、山浦の愛人。
- 看護師らしからぬ色気に溢れた女性で、老若男女問わず、患者からは人気がある。
[編集] 用語解説
[編集] 表御三家
- 作品世界において、表世界で絶大な権力を握る三つの家系を指す。いずれも財閥、そして名家中の名家であるため、この国でその名を知らない者はいない。
- 九鳳院(くほういん)
- 九鳳院蓮丈を当主とする大財閥。その資産は世界全体の数%に及ぶとされており、近衛隊と呼ばれる私設武装集団が一族の身辺警護を行っている。近衛隊は銃火器の装備すら許され、その戦力は自衛隊に次ぐほどのものとされる。なお近衛隊の幹部クラスは「真の強者は飛び道具を使用しない」という思想のため、銃火器を装備しない。
- 麒麟塚(きりんづか)
- 皇牙宮(こうがのみや)
[編集] 裏十三家
- 作品世界において、近現代まで裏世界で勢力を持っていた十三の家系を指す。今ではその半数近くが廃業、あるいは断絶しているが、その勇名、悪名、凶名は未だに裏世界での影響力を残している。
- 歪空(ゆがみそら)
- 堕花(おちばな)
- 斬島(きりしま)
- 円堂(えんどう)
- 崩月(ほうづき)
- 虚村(うつろむら)
- 豪我(ごうが)
- 師水(しみず)
- 戒園(かいえん)
- 御巫(みかなぎ)
- 病葉(わくらば)
- 亞城(あじょう)
- 星噛(ほしがみ)
[編集] 既刊一覧
- 紅 ISBN 4-08-630272-1
- 紅 ~ギロチン~ ISBN 4-08-630290-X
[編集] 関連項目
- 電波的な彼女:同作者の別作品。
[編集] 外部リンク
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