箱物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
箱物(はこもの)とは、日本の行政が整備する各種の建築物を、箱があって中身(工夫を凝らした独自性のある運営、住民の活発な利用、運営に必要な専門スタッフなど)が追いつかない状態のものが多いことを揶揄して用いられる語である。揶揄である語感を強調して片仮名書きでハコモノと表記することもある。
あくまでも行政の行動を揶揄しているのにも関わらず、ただの民間の建物までを箱物(ハコモノ)と言う人もいるが間違いである。
内閣における大臣や、地方公共団体の首長、議員にとっては、箱物を整備することそのものが、後世にも残る自らの業績となるため力を入れがちであり、また近隣や同規模の都道府県や市町村と施設規模や威容を競いがちである。こうした競争、張り合いは、多額の資金をつぎ込み、規模、仕様、スペックにおいて不必要とすら言えるものとなりがちである。また建設後の運営経費を考慮せず建設事業が企画され、さらに首長や議員がしばしば建設後の運営そのものの実情にあまり関心を向けないこともあって、十分な運営経費や人材が確保されていないことも多く、この事が実際の活動の停滞を生む大きな要因となる。
事業を実行する行政組織においても、事業の予算分配がソフト事業とハード事業に厳密に区別されていることが多いため、建設事業を担当する部署は、ハード事業としてついた予算を過不足ない成果を出すことで、自らの実績とみなす傾向が強い。そのため、あえてソフト事業と組み合わせて建設後の運用を考慮した事業計画を十分に練っていないことも多く、専門的な部分は下請け業者に丸投げしてしまっていることが多い。建設後に専門的な人材が確保されても使い勝手のよくない仕様や、活動予算の制限によって身動きが取れなくなってしまうことがしばしばである。また、運営に関する専門的知識、技能を持った職員を正職員ではなく、嘱託職員で間に合わせることも多く、正職員で確保していても、彼らは公務員として行政事務に携わる者よりも傍流と位置づけられているため、行政組織内での発言権が弱く、これも建設後の運用の発展を阻害している。
建設・整備する施設を箱物に陥らせないため、あらかじめ専門的知識・技能を持ったスタッフを確保し、彼らを整備計画段階から参加させてソフトウエアとハードウエアの両面からの事業計画を行い、また専門部分を下請け業者に丸投げしないことで箱物化を阻止しようと工夫している地方公共団体も見られる。