秩父弁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
秩父弁(ちちぶべん)とは日本語の方言の一つで、西関東方言の内、埼玉県の西部に位置する秩父地方で用いられている方言。地域によって微妙な語彙の変化があり、おおむね荒川を境に東西に分けることができる。隣接する群馬や山梨の方言との共通点が多く見受けられる。
目次 |
[編集] 言い回し
[編集] 文法
- ~かさぁ?
- ~ですか?
- ~かあねえけえ
- ~くはないですか
- ~したでぇ
- ~したよ
- ~すらっといい
- ~しなくてもいい
- ~すべえか?
- ~しようか?
- ~だんべえ
- ~でしょう
- ~なんよ
- ~です
- ~やるべえ
- ~やろう
- ~つぅんなぁ
- ~って聞いたよ
- ~さんねえ
- ~できない
[編集] 語彙
[編集] あ行
- あがりはな
- 家の登り口、上がり端
- あしっつるし
- アシナガバチ
- あちいにあたる
- 日射病になる、暑いに中る
- 朝っぱら
- 朝早く
- あなっこ
- (掘った)穴
- あぶらげずし
- 稲荷寿司
- あらいまて
- 食器類を洗うこと
- ありんどう
- あり
- あんき
- 安心
- いいあんべえ
- 良い具合、良い塩梅
- いいかげんずっぽ
- でたらめ
- いごく
- 動く
- いってんべー
- 行ってみよう
- いどころね
- うたた寝
- うしい
- 薄い
- うちゃぁる
- 捨てる、打ち捨てる
- うっかく・おっかく
- 折る、打ち欠く、折り欠く
- うっぽぉーる
- 放り投げる
- うんと
- 沢山
- うんまける
- 空にする
- えこっか
- にこにこと
- えっこはっこ
- (愛想)笑いを浮かべて
- えってみる・えんでみる
- 帰る
- えら
- 沢山
- えらいさわぎだ
- 大変なことになっている
- えれえ
- 偉い・大変
- えれる
- 入れる
- えんこする
- 座る
- おあがんな
- 召し上がれ
- おおしんつく
- ツクツクボウシ
- おくり
- 奥
- おごっつぉう
- 御ご馳走、大ご馳走
- おごと
- つらい、大変な事
- おだあげる
- 雑談をする
- おっかあ
- 自分の奥さん
- おっかけとく
- 立てかけておく、負い掛けておく
- おっきりこみ
- 太く短いうどん
- おっくう
- めんどう、億劫
- おっくじく
- 挫く
- おっこくる
- 押し出す
- おっとう
- 自分の旦那さん
- おっぺす
- 押す・(女性を)押し倒す
- おでんげえり
- 出戻り
- おてんたら
- おせいじ
- おとこし
- 男の人、男衆
- おひまち
- 月に一度集落内の一家庭に集まり、その家庭で夕飯をいただく行事(現在は廃れている)
- おらあ
- 自分のこと
- おらがち
- 私の家
- おらがほう・おらほぅ
- 私のほう
- おんなし
- 女の人、女衆
[編集] か行
- がいこう
- お世辞
- がいこうをぶつ
- おせじをいう
- かう
- あてがう
- かえりばち
- 頂き物をした時にするお返し物、返り鉢
- かかあ
- 奥さん
- かせる
- かぶれる
- かてめし
- 混ぜご飯
- かてる
- まぜる
- かんます
- かき混ぜる、掻き回す
- ~きし
- ~だけ・~ぐらいしか
- ぎっつ
- バッタ
- きない
- 来(こ)ない
- きやあしねえ
- まだ来ない
- きもがいれる
- いらいらする、腹が立つ
- くでえ
- くどい
- くれらあ
- あげる
- くんろい
- 頂戴
- ~げえ
- ~(人物)に
- げぇーやねぇ
- つまらない
- けえりしな
- かえりながら、帰りしな
- けえる
- 帰る
- けえるべぇ・けえるんべぇ
- 帰ろう
- ごうぎ
- 立派なこと
- こうしゃく
- 雑談
- こげたま
- 沢山
- こしご
- 腰につけるかご、腰籠
- こじゅうはん
- 間食
- こすい
- ケチ
- こせえる
- 作る
- こてえさんねえ
- たまらない、堪えられない
- こわい
- 堅い
- こんがらかる
- 複雑になる
[編集] さ行
- さくい
- 気さく
- さみい
- 寒い
- さんざ
- 十分に・過ぎるほど
- じいじいやき
- ニイニゼミ
- じゅうくう
- 生意気
- しりゃあしねえ
- 知らない
- しょんべん
- 小便
- しわい
- けち
- ずいてる
- 生意気な
- すけてくれぇ
- 手伝って
- ずっぽおす
- (思いがけないことが)うまくいく ※1
- ずでえ
- かなり
- すんべえ
- しましょう
- せっちょうする
- 世話する
- せやあねえ
- 大丈夫
- そうだむし
- そうですね
- そうでがんす
- その通り
- そおけえ
- そうですか
- そおなん
- そうなんですか
- そそらっぺえ
- いい加減
- そらっこと
- でたらめな事
- そらっぺえ
- でたらめを言う事
- ぞんぜえる
- 態度が大きい
- そんぬぐれえ
- そのぐらい
[編集] た行
- だけんども
- だけど
- だごうしゃく
- くだらない話をすること
- たまか
- つつましい
- たらっぺ
- たらの芽
- ちっとんべえ
- 少し
- ちょうきゅう
- 正確
- つぐひ
- 翌日
- つっとさる
- 入る
- つっとおす
- 突き通す
- つぶあし
- 素足
- つるっとく
- 吊るして置く
- つっぺぇしこむ
- 押し込む
- つみっこ
- すいとん
- つんつるてんてん
- つんつるてん
- つんむぐる
- 水に潜る
- つんもす
- 燃やすこと
- てえ
- 人たち
- てぇーら
- 平ら
- てえげえ
- たいがい
- てんぐるま
- かたぐるま
- てんごうべえしている
- いたずらばかりしている
- てんでぇに
- それぞれに
- とぶ
- 走る
[編集] な行
- なから
- かなり
- なす
- 返す
- なびる
- ぬる
- なるい
- なだらか
- なんだんべえ
- 何だろう
- にかしにする
- 邪魔にする
- ぬきい・ぬくい
- あったかい
- のしていく
- 早足でいく
- のす
- スピードを出す
- のめっけー
- つるつるしてる
[編集] は行
- はあ
- もう
- ばきゃあろめ
- 馬鹿野郎
- はぎる
- (はさみで)切る
- はしっけぇ
- すばしこい
- はっこう
- 早く来い
- ひがっぷしい
- まぶしい
- ひだりい
- お腹が空いてる
- ひっちょる
- 背負う
- ひっぽおす
- (風呂などの)水を抜く
- ひもし
- 焚き火
- ひゃっけえ
- 冷たい
- ひょうぎゃあねえや
- たいした事は無い
- ふえんどう
- スズメバチ
- ぶき
- 不器用
- ぶちかる
- あぐらをかく
- ふっこし
- かざはな
- ぶっこぬき
- 瓜二つ
- ぶっつむ
- 積む
- ぶっぱたく
- 叩く
- ぶに
- (~の)分
- ふんぐりげえし
- ねんざ
- ふんとけえ
- 本当ですか
- ~べえ
- ~だらけ
- へえる
- 入る
- へげる
- はげる
- べっちょ
- 女性器
- べっとこしゃー
- カエル
- べべっこうしゃく
- 卑猥な話
- ほうじゃく
- スズメバチ(特に大きいもの)
- ほうぼう
- いろいろな所
- ほっかい
- そうなんですか
- ほりっこ
- 堀・側溝
- ほりねえ
- はずかしい
[編集] ま行
- まず
- まったくもって
- まさか・まさかまあ
- ずいぶんと
- まったくねぇ
- まったくその通りですね
- まっと
- もっと
- むぐす
- (便を)もらす
- むぐってぇー
- くすぐったい
- むる
- 漏れる
- むるい
- 弱い
- めかご
- ものもらい
- めたらっこ
- でたらめ
- めっかんねえ
- 見つからない
- めっためった
- 何度も何度も
- めめず
- ミミズ
- めめんたろう
- ミミズ
- もちにいく
- 取りに行く
[編集] や行
- やごろ
- そのうち
- やっけぇ
- めんどう
- やまんね
- 山のふもとの方(山の根から)
- ゆんべ
- 昨晩
- ようる
- 触る
- よええ
- 弱い
- よげ
- 良さそう
- よおっぱり
- 夜更かし
- よかんべぇ
- いいでしょう
- よた
- 弱虫
- よめいごと
- 愚痴
- よめご
- お嫁さん
[編集] わ行
- わきゃあねえ
- 簡単
- わけえし
- 若い人
- わざと
- 少し
- わっくさ
- カメムシ
- わりいんね
- ありがとう
- わるげ
- 悪そう
- わるさ
- いたずら
[編集] 補足
※1麻雀のカンチャン待ちをツモったときによく使う。
- 「ぶっつむ」や「おっかく」など接頭辞が多い。
- 行動を表すときに「お世話になる」ということが多い。(例:お茶ぁいっぺえお世話になるべえ=お茶を一杯いただきましょう)なお「お世話になります」はこの地域では挨拶として使われる。ときに敬語形として、「お世話さまになります」も使用する。ちなみに帰りの挨拶は「お世話になりました」である。
- 「まち」が「祭り」を指すことがある。(例:はあ秩父のまちがくらい=もうすぐ秩父夜祭ですね)
- とくに荒川左岸(西側)では「んで終わる主語」+「を、は」は連声する。
(例: 「本の取ってくれい。」(本を取ってください。) 「○○さんなはぁけぇったん?」 (○○さんはもう帰りましたか?)」
- 秩父弁はアクセントが非常に明確であり、
アクセントの高低差はおそらくは標準語よりも大きい。寺尾地区などでよく使われる「どーしたい?」 (おおむねWhats up?の意で、親しい者同士のあいさつのことば)という表現は「-」の部分を 高く発話するが、その高低差は関東方言の中では最大級である。