福音主義
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福音主義(ふくいんしゅぎ)とは、キリスト教の教派・神学分類の用語であり、
[編集] 福音主義と福音派
福音主義と福音派は、似て非なる用語である。元来はキリスト教において宗教改革の立場を採る考え方を福音主義と呼び、その対立概念は「教皇主義」であった。つまりそれぞれ「プロテスタント」と「ローマ・カトリック」と言い換えられる(上記第一定義)。
近年は、キリスト・イエスの神性を認めない、もはやキリスト教の体を為さない先鋭化した自由主義神学に対して、それ以外の伝統的立場を福音主義と呼ぶ事が多い。この福音主義には伝統的信仰箇条を堅持する緩やかな自由主義神学が含まれる。他の言い方では「教会派(=福音主義)」と「社会派(=先鋭自由主義)」である(上記第二定義)。ここでいう「教会派」と同義で「福音派」の語を用いる者もおり、その場合、後述の「(更に保守的な)福音派」との区別は文脈でつけるしかなくなる。
一方、福音派は福音主義に内包される一派だが、自己を聖書主義的と規定する集団で、その対立概念は自由主義神学である。つまり、穏やかな自由主義と先鋭化自由主義の峻別を拒否して同一視した上で、その全てを拒絶する。
逆に、福音派の自己規定が、聖書主義・反自由主義神学であるため、聖書に対するアプローチや自由主義神学の定義範囲によって福音派像そのものが変わってくる。そのため、福音派の内実も全くキリスト教根本主義(=逐語霊感、自由主義に穏やかも極端もない)から、自由主義者の自覚がないだけの緩やかな自由主義(=聖書は信仰の規範、自由主義とは極端なものたちのこと)まで幅広く分布する。
以上のことから
福音主義(第一定義)=福音主義(第二定義) + 社会派(=先鋭自由主義)
福音主義(第二定義)=福音派 + 自覚的な穏やかな自由主義神学
福音派=キリスト教根本主義 + 自覚のない穏やかな自由主義神学
という簡易的な包含図式が成り立つ。
このように、プロテスタントの信仰は元々福音主義の名称で語られてきた事実があり、たとえばルター派の教会などで伝統的な「福音主義」或は「福音派」を名乗る人物も一部に見受けられる。そのため、厳密に言えば福音派を聖書根本主義と同義であるとするのは必ずしも正確であるとは言えない。ただし、特に日本において福音派を名乗る教会の殆どが聖書根本主義の信仰に立っているのが実情である。