発勁
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剄発勁(はっけい)とは、中国武術の用語。「勁を発する。」という意味の中国語。「勁」は「力」の同義語 (全く同じという訳ではない。気で発するのが勁、骨と筋肉で発するのが力と、勁・力を明確に分ける場合もある) 。
その解釈はさまざまである。武術における「気」とは、体の「伸筋の力」、「張る力」、「重心移動の力」といわれることが多い。勁を鍛える為、様々な鍛錬 (中国武術では練功という) を行う。また、「力む」と屈筋に力が入ってしまい、「張る力」を阻害するため逆効果であるともされる。尚、伸筋を働かせても、「力む」感じはなく、「張る」感じがするだけである。
発勁とは勁・気が主に打撃あるいは押しに使われる場合を指す。この技法は、体の一部分に全身の力を集中させ、発する (溜めてから発する訳ではない) ことが可能で、習熟すると至近距離であっても相手を吹き飛ばす程の力量を発する。方法さえ知っていれば、密接して押し飛ばす方が容易で、体重の移動だけでも相当の力量を発する。
急激な運動量の増加が打撃力となる点では、ほとんどの技撃法で共通している。しかし、急激に増加させる対象である、原動力となる運動や、威力増加の方法は、千差万別であり、体を捻る (纏絲勁) ・踏み込む (震脚) ・重心の移動、など様々な方法で運動エネルギーを急激に増加 (又は威力の低減を防止) させて、撃力の増強を図る。特定の要素が上達しただけでは発勁とはならない。技術理論は格闘技における「インパクト」と大差ないが、根本的な身法が大きく異なる。気・勁しいては発勁の訓練法は流派 (門派) によって異なる。
撃力を測定した波形では、発勁は持続的にエネルギーを伝え、体当たりに近い波形を示す。エネルギーの伝わり方から、初心の内は、相手の体を吹き飛ばす (押し飛ばす) ような効果が現れやすい性質を持つ。錬成された発勁は、貫通力をもった打撃術となり、臓器を痛めつけるような性質を持つようになる (浸透勁とも呼ばれる) 。しかし、演武や練習時には、怪我を防ぐ為、わざと吹き飛ばすようにする (見ている者の受けが良いという点も挙げられる) 。
日本武術・中国武術共に、発勁の力は「気」、「張る力」などと呼ばれることが多い。詳しくは武術における気を参照。
[編集] 寸勁
寸勁(すんけい)とは、発勁の一種で、至近距離から相手に打撃を加える技術である。近似のものに、分勁、暗勁(この場合は密接した状態での発勁、又は発勁動作がわかりにくい発勁。)などもある。アメリカではブルース・リーが行ったものが有名で、ワンインチパンチと呼ばれた。これは1寸と1インチの長さが近いことに由来している。(尚、ブルース・リーが初めに修行した詠春拳などには、「発勁」や「寸勁」という用語は存在しない。)
1987年(昭和62年)、格闘技のフォーム等の研究で知られる中部大学助教授(当時)・吉福康郎が、松田隆智の寸勁を測定し、寸勁の力学的な特性の一端を解明した。