田口玄一
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田口 玄一(たぐち げんいち、1924年1月1日 - )は、品質工学(タグチメソッド)を構築した工学者。
1924年1月1日、新潟県に生まれる。1962年理学博士(九州大学)、直交表と線点図の研究(直交表から線点図という概念を作り、一つの直交表から作られる線点図の作成と数え上げを証明した)。電電公社電気通信研究所、インド統計学研究所、プリンストン大学、青山学院大学等に勤務。2003年現在、(株)オーケン社長。
統計学のように「ばらつき」を「偶然誤差」として理論立てることに真っ向から反対し、「ばらつき」を「必然誤差」としてロバストネスを設計する、そのための方法を打ち立ててきた。田口は、世界の統計学者たちと絶えず論争をしてきたにも関わらず、統計学出身の学者の集まり (ASQ) からも評価された。本当の意味でばらつきを実学に活かした人である。統計学者との有名な論争を以下に引用する。統計学の大前提は、誤差分布を定義し、その分布に対する対応を考える方法である。
田口が出した有名な質問に、「誤差に分布が仮定できるならば、時計の誤差の分布はどうなるのか?」という問いがある。統計学者たちは、返答できなかった。時々刻々と値が変化する中で、分布を定義できないのである。
統計学では平均と分散という2つのパラメータで分布を定義する。田口の方法は、平均ではなく理想の値を定義し、理想との差をばらつきとする。理想との差をばらつきの測度に用いるので、分布を定義する必要はない。 田口の方法によれば、分布を定義せずともばらつきに対して最も最小化する設計解は見出せる。 両者の違いは、ガウスの最小二乗法における4つの仮定のうち、正規性の仮定は最も弱い条件であることと似ている。
[編集] 経歴
- 1960年 デミング賞(日本)受賞。
- 1986年 国際技術協会ロックウェルメダル(米国)受賞
- 1986年 世界の科学,技術の殿堂入り(米国)。
- 1989年 藍綬褒章受章(日本)。
- 1996年 ASQC シューハートメダル(米国)受賞。
- 1997年 米国自動車殿堂入り(本田宗一郎、豊田英二に次いで3人目。ちなみに4人目は、元米国日産初代社長でフェアレディZの生みの親 片山豊)。他の方が自動車工業界の方であるのに対し、田口は外部のコンサルタントにもかかわらず、当時のアメリカ自動車工業に品質工学を導入することでアメリカを蘇らせた男と言われたほどの功績をたたえられての受賞。
- 1998年 米国品質学会 (ASQ) 名誉会員、米国機械学会 (ASME) 名誉会員。
- 2000年 20世紀の品質チャンピオン賞(スイス国選定)受賞。