現実主義
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現実主義(realism)は、国際政治学の主要な理論の一つ。
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[編集] 基本命題
国際政治学、国際関係学でいうところの現実主義(リアリズム、Realism)は、以下の特徴を持つ。
現実主義の思想の系譜は、マキャベリ、ホッブズを起源としている。国際関係においては各国家の上位に立つ中央政府が不在であり無政府状態(アナーキー)であるから、「万人の万人に対する闘争(bellum omnium contra omnes)」状態になる。
しかし、「無政府状態は常に無秩序状態となるわけではない」つまり、国家間の協調は可能であると批判される。
[編集] 批判
上記の1-4.に対する批判は以下の通りである。
- 国際関係における行為主体は主権国家に限らない(例、国際機関、NGO、個人など)
- 国家の追及する目標は安全保障に限らない(例、経済的・文化的繁栄など)
- 国際関係におけるパワーは軍事力に限らない(例、経済力、文化力、ソフトパワーなど)
- 国際政治は権力闘争の色彩のみではない(例、政治、社会、経済、金融、文化の交流・協調など)
20世紀の2度の大戦を経て、戦後の国際協調・経済発展・相互依存の深化、国家以外のアクターの隆盛、国家の目標の多様化、軍事力の効果の限定性などを考慮に入れると、現代国際関係は必ずしも現実主義の想定に沿うものではない。
しかし、国際政治学における基本的な視座としてこれらの見方を提供した現実主義の功績は大きいといえるし、現在でも中東のような不安定要素を多く抱える地域では、現実主義の見方は妥当であると考えることもできる。