物権的請求権

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物権的請求権（ぶっけんてきせいきゅうけん）は、請求権のひとつ。

物権とは、他人を排他し、物を支配する権利である。しかしながら、他人により物権が侵害されることも起こりうるため、物権に基づいてその侵害を排他する権利が物権的請求である。ただし、占有訴権と異なり、民法上に規定があるわけではなく、物権は当然に物権的請求権を有していると解される。

[編集] 概要

物権的請求権には、物権的返還請求権、物権的妨害排除請求権、物権的妨害予防請求権の3つがあるが、後者2つの権利について区別するのは実益に欠ける。以下に例を挙げる。

返還請求権: 自己の所有する土地を他人が不法占拠した場合は、「所有権に基づく返還請求権」により、土地を取りもどすことができる。もちろん、占有回収の訴え(第200条)によっても土地を取り戻すことはできるので、どちらの方法で取り戻すかは当事者が決めればよい。; 但し、不法占拠者も占有回収の訴えにより土地を取り戻そうとする場合がある。この場合は、所有権に基づく返還請求権による反訴は認められない。; なお、返還請求権の根拠となる物権には、抵当権や地役権などがあるが、全ての物権にこの効力が認められているわけではない。例えば、AがBに対して、自己の所有する不動産に質権を設定したが、引渡しの前にAが善意の第三者Cに対してその不動産を売却したとする。このとき、Bは質権に基づく不動産の返還請求権を行使することはできないとするのが判例である。これは、質権が物の継続する占有を成立要件（登記は第三者対抗要件）としていることを鑑みて、占有訴権による返還請求をすることが望ましいからである。もっとも、占有訴権は善意の承継人に対抗することができないから、Cが善意の第三者である場合には、Bが不動産を取り戻すことはできないかに思われるが、Bが、Aの所有権に基づく返還請求権を、債権者代位権の転用による代位行使をすればCより取り戻すことは可能である。この場合、BはCに、Aにではなく、直接自分に引き渡すよう請求できる。AがBに引き渡す意志がなければ債権者代位権を行使した意味がないからである。なお、債権者代位権の転用は、Aが無資力でなければならないという要件は必要ない。

妨害排除請求権: 所有権者が抵当権者から樹木の伐採禁止請求をする場合や、廃棄物を不法投棄され原状回復請求する場合等に認められている。

[編集] 費用負担についての議論

また、物権的請求権の行使により、誰が費用を負担をするかについては議論がある。例えば、自分の家の木が地震で倒れ、隣人の土地に横たわってしまった場合などがよく事例として取り上げられる。本件は、自己が洗濯物の所有権に基づく返還請求権を行使できるのに対し、土地の所有者は土地の所有権に基づく妨害排除請求権を行使することが考えられる。なお、占有訴権は話が繁雑になるので考えない。