浅田次郎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
浅田 次郎(あさだ じろう、1951年12月13日-)は、日本の小説家。東京都生まれ。本名、岩戸康次郎(いわと こうじろう)。駒場東邦中学校、中央大学杉並高等学校卒。
三島由紀夫の自決に影響され自衛隊に入隊、のちアパレル業界など様々な職につきながら投稿生活を続け、1991年、『とられてたまるか!』でデビュー。悪漢小説ののち、『地下鉄に乗って』で吉川英治文学賞、『鉄道員』で直木賞を受賞。時代小説やエッセイのほか、『蒼穹の昴』などの中国歴史小説がある。日本の大衆小説の伝統を受け継ぐ代表的な小説家といえる。
目次 |
[編集] 経歴・人物
1951年に東京都に生まれた。家系は旧江戸幕府武士の末裔。自衛隊に入隊。この動機は、憧れていた三島由紀夫の自殺が原因である。この点について当初エッセイでは否定していたが、後に事実であると告白している(海竜社刊『ひとは情熱がなければ生きていけない』では、三島由紀夫に対する思いのほどが切々と語られている)。極道ないしはその周辺の世界に関しての描写が作品中多く見られ、自らの体験を元にしたとする作品もあるが、実際に暴力団の構成員であったことはないと語っている。しかし、作中でも書かれているように企業舎弟と呼ばれる暴力団の準構成員だった。ネズミ講などに関わっていたことは本人が認めている。また競馬で生活していた時期もあり、この方面に関するエッセイも多数ある。
1991年、『とられてたまるか!』でデビュー。ペンネームは、初めて新人賞の予選を通過した小説の主人公の名前。賞をもらうにはいたらなかったが、予選通過がうれしく、そのままペンネームにしたという。当初の作品傾向から悪漢小説を中心とした作家としての認知が先行したが、1995年に『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞を受賞した後は、清朝末期の宮廷を舞台に宦官を主人公として時代を活写した大作『蒼穹の昴』が1996年に直木賞の候補作となり、さらに翌年『鉄道員』にて直木賞を受賞するなど、作品の範囲は劇的な展開を見せている。
自らの祖先は旧幕府方の武士であったといい(『読売新聞』2006年10月16日付)、『壬生義士伝』などの新撰組を材に求めた作品のほか、人間の不変さを描いたという『お腹召しませ』などの作品がある。「小説の大衆食堂」を自称、「書くのは最大の道楽」と語り、作家生活14年以上、70冊を越える著書を書き上げた今日も執筆活動への意欲を見せている。
また自ら認めるヘビースモーカーであり、エッセイ『勇気凛凛ルリの色』のシリーズにて、「喫煙権について」などの稿で、喫煙者の立場から喫煙の権利を訴えている。
[編集] 受賞歴
- 1995年 - 『地下鉄に乗って』で第16回吉川英治文学新人賞
- 1997年 - 『鉄道員』で第16回日本冒険小説協会大賞特別賞・第117回直木賞
- 2000年 - 『壬生義士伝』で第13回柴田錬三郎賞
- 2006年 - 『お腹召しませ』で第1回中央公論文芸賞・第10回司馬遼太郎賞
[編集] 作品一覧
[編集] 小説
- きんぴか(1992年、Tenzan novels)※のちHiten novels、光文社で再刊。
- 気分はピカレスク キンピカ2(1993年、Hiten novels)
- ピカレスク英雄伝(1994年、Hiten novels)
- プリズンホテル(1993年、徳間書店)
- プリズンホテル・秋(1994年、徳間書店)
- プリズンホテル・冬(1995年、徳間書店)
- プリズンホテル・春(1997年、徳間書店)
- 日輪の遺産(1993年、青樹社)
- 地下鉄に乗って(1994年、徳間書店)
- 蒼穹の昴(1996年、講談社) ISBN 4-06-274891-6
- 天切り松 闇がたり(1996年、徳間書店)※のち集英社で再刊。
- 天切り松闇がたり 残侠(1999年、集英社)
- 天切り松闇がたり 初湯千両(2002年、集英社)
- 天切り松闇がたり 昭和侠盗伝(2005年、集英社)
- 鉄道員(1997年、集英社)
- 活動寫眞の女(1997年、双葉社)
- 月のしずく(1997年、文藝春秋)
- 珍妃の井戸(1997年、講談社)
- 見知らぬ妻へ(1998年、光文社)
- 霞町物語(1998年、講談社)
- 天国までの百マイル(1998年、朝日新聞社)
- シェエラザード(1999年、講談社)
- 壬生義士伝(2000年、文藝春秋)
- 薔薇盗人(2000年、新潮社)
- 姫椿(2001年、文藝春秋)
- 歩兵の本領(2001年、講談社) ISBN 4-06-210624-8
- 王妃の館(2001年、集英社)
- オー・マイ・ガアッ!(2001年、毎日新聞社)
- 沙高樓綺譚(2002年、徳間書店)
- 草原からの使者 沙高樓綺譚(2005年、徳間書店)
- 椿山課長の七日間(2002年、朝日新聞社)
- 五郎治殿御始末(2003年、中央公論新社)
- 輪違屋糸里(2004年、文藝春秋)
- 霧笛荘夜話(2004年、角川書店)
- 憑神(2005年、新潮社)
- お腹召しませ(2006年、中央公論新社)
- あやしうらめしあなかなし (2006年、双葉社)
- 中原の虹 (2006年 - 、講談社)
- 月下の恋人 (2006年、光文社)
[編集] その他
- とられてたまるか!(1991年、学研)※「極道放浪記 殺られてたまるか!」に改題して、1994年、ベストセラーシリーズ
- 極道放浪記2(1995年、ベストセラーシリーズ)
- 競馬の達人(1992年、ベストブック)
- 極道界 あなたの隣のコワイお兄さんたち(1993年、イースト文庫)
- 初等ヤクザの犯罪学教室(1993年、ベストセラーシリーズ)
- 勇気凛凛ルリの色(1996年、講談社)
- 勇気凛凛ルリの色2 四十肩と恋愛(1997年、講談社)
- 福音について 勇気凛々ルリの色(1998年、講談社; 2001年、同文庫)ISBN 4-06-273062-6
- 満天の星 勇気凛凛ルリの色(1999年、講談社)
- 勝負の極意(1997年、幻冬舎アウトロー文庫)
- 初等ヤクザの犯罪学教室(1998年、幻冬舎アウトロー文庫)
- 競馬どんぶり 語り下ろし必勝競馬エッセイ(1999年、マガジン・マガジン)
- サイマー!(2000年、集英社)
- 絶対幸福主義(2000年、徳間書店)
- 民子(2001年、角川書店)
- 僕は人生についてこんなふうに考えている(2003年、海竜社)
- カッシーノ!(2003年、ダイヤモンド社)
- カッシーノ!2(2004年、ダイヤモンド社)
- ひとは情熱がなければ生きていけない(2004年、海竜社)
- 歴史・小説・人生(2005年、河出書房新社)
- 見上げれば星は天に満ちて(2005年、文春文庫)※編著
- すべての愛について (2006年、河出書房新社)
[編集] 参照文献・資料
- 『読売新聞』2006年10月12日2面