正則関数
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複素解析において、正則関数(せいそくかんすう、holomorphic function)とは、ガウス平面あるいはリーマン面上のある領域で微分可能な複素変数複素数値の関数のことである。
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[編集] 概要
正則関数とは、複素数を変数に取る関数のうちで微分可能なものの事である。多項式関数、 指数関数、三角関数、対数関数、ガンマ関数, ゼータ関数など、複素解析において中心的な役割を演じる関数の多くはこの性質を持っている。
複素関数が正則であることを仮定すると、その関数は各点で何回でも微分することができる。すなわち、実数を変数に取る関数と違って微分可能な回数に縛られることは無く、微分できるかできないかという違いのみである。
さらに、正則関数であれば冪級数に展開されるので、複素関数に関しては、それが正則関数であるということと解析関数であることとは同じである。また、一致の定理により正則関数はその特異点を含まない領域へ一意的に拡張(解析接続)することができる場合がある。
ガウス平面の全域で正則である複素関数は整関数であるといい、正則関数の商として得られる関数は有理型関数という。
[編集] 定義
ガウス平面 C 内の開集合 U と U 上で定義される複素数値関数 f(z) について、a ∈ U に対し極限
が定まるとき、すなわち U 内で z を a に近づけるとき、どのような近づけ方によっても右辺の商がただ一つの値に収束するとき、f(z) は点 a で、あるいは z = a で微分可能であるといい、この極限値を
と書いて、関数 f(z) の点 a あるいは z = a における微分係数と呼ぶ。関数 f(z) が U の各点で微分可能であるとき、関数 f(z) は U において正則である、または U 上の正則関数であるという。
[編集] 性質
f, g を領域 U 上で定義される正則関数とする。また α, β を複素数の定数とすると
が成り立つ。ゆえに正則関数の和、定数倍(スカラー倍)、積は再び正則である。
正則関数は微分が 0 にならない点において複素平面上の等角写像である。
[編集] コーシー・リーマンの方程式
z = x + iy とおいて、ガウス平面 C を実平面 R2 と同一視すると、複素関数 f は 2 つの実 2 変数関数 u(x,y), v(x,y) を用いて
- f(x,y) = u(x,y) + iv(x,y)
と表すことができる。f(z) が正則関数であれば、u, v はコーシー・リーマンの方程式と呼ばれる偏微分方程式
を満たす。
- ここから正則関数 f(x,y) の実部 u(x,y), 虚部 v(x,y) は実 2 変数の関数として調和であることがわかる。
コーシー・リーマンの方程式は f(x,y) が正則となるための必要条件であるが、さらに u(x,y), v(x,y) が、二変数の関数として全微分可能であるならば、 f(x,y) は正則となる。
また、変数を
- z = x + iy
- z = x - iy
の2つとしたとき、コーシー・リーマンの方程式は、ディーバー方程式
に変換される。すなわち、f が微分可能であり z に依存せず
- f(z,z) = f(z)
の形で書けるとき、コーシー・リーマンの方程式は成り立つのである。
ディーバー方程式を用いれば、たとえば、多項式に z しか現れないとき、コーシー・リーマンの方程式が成り立つのは一目瞭然であるし、
のように z を含むものを、 z で微分して 0 にならないのであれば、コーシー・リーマンの方程式は満たされないのである。
- |z| の場合は、 z 微分して 0 にならないこともすぐ分かり、正則ではない。
[編集] 解析接続
- 詳細は解析接続の項を参照
ある領域 E において定義される正則関数 h(z) が与えられているとする。また、E を含む領域 D 上で定義される正則関数 f(z) で z が E に含まれるときは常に
- h(z) = f(z)
が成り立つならば、正則関数 f を正則関数 h の(D 上の)解析接続とよび、また h は f によって D まで解析接続可能であるという。正則関数に関する一致の定理によれば、局所的に恒等的に等しい正則関数は大域的に一致するため、解析接続の概念はもう少し一般に、二つの正則関数 h, f の定義域 E と D が共通部分 E ∩ D を持つときに
であるならば、h および f は領域の和集合 E ∪ D まで広げた領域で定義される正則関数と見なすことであるということもできる。つまり、ある領域における(局所的な)正則関数は一つの大きな(大域的な)正則関数の局所的な姿であると考えることができ、解析接続は局所的な関数とその定義域の組を張り合わせて大域的な正則関数を表示する方法であると捕らえられる。このような立場からは、正則関数は解析接続を可能な限り施して定義域を広げたものと考えて扱うのが自然である(ただしここで、ある領域を定義域としてそこで特定の表示を持つ正則関数に対して、その定義域を超えて解析接続して得られる正則関数を考えるとき、はじめの表示がもとの定義域の外でも有効であるわけではないことには注意しなければならない)。
最初に与えられた正則関数を解析接続したときに、ガウス平面内の領域でこれ以上解析接続できないような極大単連結領域が存在する場合はさほど問題は起きないのであるが、一般には特異点のまわりで「おかしな振る舞い」が現れて状況が複雑化するため、大域的な議論はそれほど単純ではない。たとえば、局所的には一価な正則関数でも、大域的には多価関数となるような場面に遭遇するのはこのような事情の現れの一つである。二つの解析接続がいつ一致するかというのはホモトピーの言葉を使って述べることができ、一価性定理(モノドロミー定理)などが知られている。一方、局所的に成立する関数等式は解析接続によって大域的な議論に移しても保たれる(関数関係不変の法則あるいは定理)ことが知られており、特徴的な関数等式が判っている Γ 関数やリーマン ζ 関数などの解析接続は、しばしば関数等式を用いて行われる。
解析接続と一致の定理により、正則関数の全体は層を成す。この立場から見れば、上記の局所的な正則関数は正則関数の芽であり、大域的な正則関数は正則関数の層の切断にあたる。
[編集] 関連項目
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