次郎物語
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次郎物語(じろうものがたり)は、下村湖人の長編教養小説。1941年(昭和16年)~1954年(昭和29年)刊。全五部。未完。
幼少期に里子に出された主人公本田次郎の成長を、青年期にかけて描く。湖人自身の里子体験が反映されるなど、自伝的色彩が濃い。児童文学として読まれることも多いが、第一部のあとがきからは、大人の読者を想定して書かれていることがわかる。
内容的には、家族や学校といった生活行動範囲の広がりに沿って主人公の人格的成長を描く第三部までと、五・一五事件、二・二六事件に集約される軍国主義的な時代背景や、主人公の精神的恋愛を作品の重要な要素として、社会性の広がりに沿って展開する第四部以降に大別できると考えられる。
第一、二、五部には「あとがき」が、第四部には「附記」があり、執筆意図、テーマ、経緯などを知る上で重要。例えば、第二部のあとがきによれば、第一部は「教育と母性愛」、第二部は「自己開拓者としての少年次郎」がテーマであると述べられている。また、第五部のあとがきには、「戦争末期の次郎を第六部、終戦後数年たってからの次郎を第七部として描いてみたいと思っている」とあり、少なくとも2巻を残して未完となったことがわかる。