核膜孔
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真核生物の核膜の内膜と外膜が融合する場にあり、核の内外を連絡する穴を核膜孔(かくまくこう)と呼び、核と細胞質間の物質の移動はこの核膜孔を介して行われる。
核膜孔の数は細胞の状態によって様々だが、1核あたり出芽酵母では平均100個強 (約10個/μm2) Winey et al., 1997、NRK cellでは1700個前後 (約3個/μm2) Daigle et al., 2001、という報告がある。
以下の数字は特記なき場合脊椎動物のもの。
核膜孔には総分子量125 MDa、直径120 nmの核膜孔複合体が位置する。これは8個のサブユニットが回転対称に配置された巨大な蛋白質複合体であり、150種もの蛋白質から構成される。 細胞質側には細胞質フィラメント、核質側には核バスケットと呼ばれる構造が突き出ていて、輸送過程ではこれらの構造と輸送される物質の相互作用が重要な役割を果たしている。中心部はplugと呼ばれる構造が認められるが、多様な外見を成し、カルシウム濃度と構造変化の関連が指摘されているが詳細な役割は不明となっている。
開口部の直径は10 nmで、イオンや分子量10 kDa以下の分子は濃度に依存して拡散する。40 kDaまでの分子は細胞内のカルシウム濃度による制御も受けるが拡散によって移動できる。分子量60 kDa以上の分子は拡散によって受動的にこの穴を通り抜けることはできない。 一方、ATPを使用するエネルギー依存性の輸送系では、約3 MDaという桁違いに大きいサイズの60S リボソーム前駆体やさらに巨大なmRNPが通り抜けることができる。出芽酵母では毎分2000個のリボソームが合成されるとすると (Meskauskas et al., 2003 経由Warner 1999)、一つの核膜孔は一分間に最低20個の60Sサブユニットを核外へと輸送していると予想される。もちろんこの他に40Sリボソーマルサブユニットや多数の核蛋白質、tRNAなどが輸送されており、一分間に数千の分子が一つの核膜孔を通過するという見積もりもある。
輸送過程ではインポーティンやエクスポーティンなどの輸送因子が関わることが明らかとなってきた。これらは荷物となる分子に存在する核移行シグナルや核外輸送シグナルを認識結合する一方、核膜孔複合体とも作用し、様々な分子のアダブターとして働いている。