日本紀略
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本紀略(にほんぎりゃく)は、平安時代に編纂された歴史書で、六国史の抜粋と、六国史以後後一条天皇までの歴史を記す。範囲は神代から長元9年 (1036年) まで。編者不詳。漢文、編年体、全34巻。
[編集] 編纂
成立時期は11世紀後半から12世紀頃とされるが不明である。編者もわからない。本来の書名もはっきりしない。『日本史紀略』、『日本史略』、『日本史類』とも呼ばれていた。
[編集] 内容
冒頭の神代に関する稿は、後代の挿入で、当初はなかったらしい。
第20巻の前半、光孝天皇の代までは、六国史から重要部分を短く抜き出して採録している。ただし、省略版にするための字句修正を施したところもあり、完全に同文・同字ではない。
六国史にない独自の文を挿入した箇所もある。藤原種継暗殺と早良親王排除の事情に触れた部分では、政治的理由で消された『続日本紀』の削除文を記して貴重である。また、『日本後紀』の散逸部分を知る際に『日本紀略』が助けになる。
宇多天皇から後一条天皇まで、887年から1036年の記述は、抜粋ではなく日本紀略編者の作った部分である。『新国史』などに資料を求めたようだが、内容的には月日の記録に疎漏があるという。
[編集] 参考文献
- 黒板勝美編『新訂増補国史大系 日本紀略』、前篇上下巻と後篇一巻の三分冊、吉川弘文館、1929年、普及版1979年。
- 坂本太郎『六国史』、吉川弘文館、1970年、新装版1994年。