必須脂肪酸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
必須脂肪酸(ひっすしぼうさん、essential fatty acid)は、体内で合成されないために、外界(通常は食事)から摂取する必要がある脂肪酸のこと。物質が特定される以前はビタミンFとされていたが、いわゆるビタミンと総称される、摂取を必須とする生理活性物質の多くと比べて必要摂取量が多く、必須アミノ酸と同様に主要な体組織構成物質の一角をなしていること、ビタミンや無機質(ミネラル)以外の、いわゆる古典的に三大栄養素と呼ばれたタンパク質、炭水化物、脂肪のひとつである、脂肪(中性脂肪)分子の構成要素でもあることなどから、現在ではビタミンに含めないことが多い。
ヒトを含めて後生動物には自身の生理代謝過程に必須であっても、自身で合成できない脂肪酸の分子種がいくつもあることが多い。そのため、多くの動物がそうした脂肪酸の分子種を合成できる植物、菌類、原生生物、原核生物を食物として摂取したり、これらの生物を起源とする分子種を食物連鎖を経て保持する、他の動物を捕食することで摂取したりして必要を満たしている。
ヒトにとって、どの脂肪酸が必須であるかは、現時点では判断が分かれる。しかし、リノール酸が必須脂肪酸であることは確実である。また、リノール酸を原料として体内で合成されるが、γ-リノレン酸、アラキドン酸も必須脂肪酸に含めることがある。
必須脂肪酸は、多くの代謝過程ではたらいているため、不足したり、後述のω-3/ω-6バランスが悪かったりすると、体調を崩す原因になるといわれ、多くの健康食品が販売されている。ただし、通常の人であればリノール酸は1日あたり2-4グラム摂取すればよいとされている。
目次 |
[編集] ω-N脂肪酸
必須脂肪酸の分類法として、ω-N脂肪酸(おめがNしぼうさん、Nは何らかの数字)という表記をすることがある。ここでω-Nは、脂肪酸の炭素鎖を末端から数えて、N番目の炭素がはじめて不飽和結合になる、ということを示す。例えばα-リノレン酸は、構造式を見れば分かるように、末端から3つ目の炭素が不飽和結合であるので、ω-3脂肪酸に分類される。
以下に代表的なω-3およびω-6の脂肪酸を示す。なお、(18:3)などの表記は(炭素数:不飽和結合の数)を示す。
- ω-3脂肪酸
- α-リノレン酸(最も短い炭素鎖のω-3脂肪酸、18:3)
- エイコサペンタエン酸 (EPA) (20:5)
- ドコサヘキサエン酸 (DHA) (22:6)
ω-3脂肪酸は魚介類・亜麻仁油・魚油に、ω-6脂肪酸は、高リノール紅花油・高リノールひまわり油・大豆油・菜種油・クルミに多く含まれている。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 『第2版 標準化学用語辞典』, 日本化学会編, 丸善, 2005年 (「必須脂肪酸」の項目).
- 『化学大辞典』, 化学大辞典編集委員会編, 共立出版, 1961年 (「ビタミンF」の項目).