師部
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師部(しぶ,phloem)は、維管束植物に於いて特にスクロースを含む有機性栄養素を需要のある植物全体に輸送する生体組織である。木に於いて師部"phloem"は下部に位置し樹皮と区別し難いことから、樹皮を意味するギリシア語"phloios"に由来する。
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[編集] 構造
師部は、あまり特化してない有核柔細胞や、師管細胞、伴細胞(他にもタンパク細胞,線維質,厚膜細胞)から構成される。師管細胞は核を欠失し殆ど小胞を持たないが、 リボソームなどの他の細胞小器官を有する。小胞体は外側壁に集中する。各部の師管構成物は端から端まで結合し、栄養性物質を体中に誘導する管を形成する。これら細胞の端壁は師壁と呼ばれ、微細孔や拡大した原形質連絡を持つ。
師管構成物の生存は伴細胞との密接関連に依存する。全ての師管要素の細胞機能は遥かに小型の伴細胞により齎される。つまり伴細胞以外の典型植物細胞は通例、より多数のリボソームやミトコンドリアを持つ。このため、伴細胞は他の"典型"植物細胞より代謝が活発なのである。伴細胞の細胞質は、原形質連絡を介して師管細胞要素と繋がっている。
[編集] 機能
主に死細胞から構成する木部と異なり、師部は樹液を輸送する生細胞から成る。この樹液は水主成分溶液だが、光合成器官によって合成される糖を豊富に含む。これら糖は根のような光合成性のない部位や、塊茎や球根のような貯蔵構造に輸送される。
圧流説は1930年Ernst Munchにより提案された仮説で、師部転流のメカニズムを説明する。葉のような糖源にある師部の細胞内の有機物質の高濃度化によって、水を細胞内に導く拡散勾配が創られる。師部内樹液は糖源から膨圧を用いて糖受け側に移動する。糖を生産し放出する糖源は植物のあらゆる部位にある。植物の成長期間(通常は春)は根などの貯蔵器官が糖源であり、成長部位が糖受け側である。師部内に於ける移動は双方向性だが、一方木部は一方向の上向きである。
生長期間の後の成長点が休止中の時は、葉が源で貯蔵器官が受け側である。果実のような発達上の種子を生み出す器官は常に受け側である。この多方向の流れのために、樹液は容易に近接する師管間を移動できない上に、隣接した師管に於いて樹液が逆方向に流れることは珍しくはない。
木部内の水とミネラルの移動が大抵の場合陰圧(張力)により動かされるのに対し、師部内の移動は陽の静水圧により動かされる。これは転流と呼ばれ、師部ローディングとアンローディングという過程により完成する。糖源にある細胞は積極的に溶質分子を中に輸送することで師管要素を取り込む(ロード)。これにより浸透作用のため水が師管要素内へ移動し、樹液を管内下方へ押す圧力が生じる。糖の受け側では、細胞は積極的に溶質を師管外に輸送しこれとは正反対の効果を生む。
糖、アミノ酸、幾つかのホルモン、更にメッセンジャーRNAのような有機分子は、師管要素を通り師部内を輸送される。
[編集] 由来
師管は維管束形成層の分裂組織細胞に由来し、そこから外側に成長する。段階的に生産され、一次師部は頂端分裂組織の傍に位置する。二次師部は師部の定着層内側に向かって維管束形成層付近に位置する。
[編集] 栄養利用
マツの師部はフィンランドでは飢饉の際の代替食糧として使われて来た。特に北東部に於いては、1860年代の大飢饉の初期の頃から幾らか飢餓を食い止めるものとして師部の供給が役立った。
[編集] 環状除皮
殆どの植物では師部は木部の外側に位置するため、木や他の植物は幹や茎にある輪状の皮を剥ぐことで簡単に殺すことが出来る。師部が壊れ、栄養が根に届かないため死ぬのである。ビーバーのような動物の棲む区域に位置する木は、ビーバーが的確な高さでその幹を噛り取るために損傷を受け易い。このように輪状に剥ぐ過程を環状除皮と呼び、農業目的に於いて使われる。例えば、定期市や祭りで見られる果実や野菜は環状除皮を経て生産させる。太い茎の根元に環状除皮を施し、その茎から一つ以外の果実や野菜を除く。このためその茎上の葉で作られた全ての糖は他に受け側が無いため、一つの果実や野菜は標準サイズの何倍も肥大するのである。
