岡林直之
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岡林 直之（おかばやし なおゆき、延宝8年（1680年） - 元禄16年12月28日（1704年2月3日）は赤穂藩浅野家重臣。杢之助(もくのすけ)と称す。忠臣蔵の“不忠臣”の一人だが、吉良邸討ち入り後、世間体を気にした兄松平忠郷の命令で切腹させられた悲劇の人物。
1000石取りの旗本松平(桜井)左門忠治の四男として生まれる。この旗本家は十八松平の一人松平(桜井)右馬允忠頼(遠江浜松藩主・5万石)の次男忠直が分家して誕生した旗本家に更にその次男の忠治が分家して興していた旗本家であった。
しかし忠治の跡取りにはすでに三男の松平孫左衛門忠郷があったので(長男・次男は夭折)、弟である直之は父方の大伯父にあたる赤穂藩浅野家の家老岡林杢之助直宗(浅野家内分知行1000石)の養子に入った。養子先の岡林家は赤穂浅野家家臣団の中では大石家に次ぐ最名門であり、直宗の娘は赤穂浅野家の分家旗本浅野長賢（3500石）の養女に迎えられて旗本戸田伊豆守政依の室に入っているほど特別な扱いを受けていた。貞享3年（1686年）閏3月3日に養父杢之介直宗が死去し、幼くして岡林家を継ぐこととなった直之は、名門出として早いスピードで出世し、浅野長矩の刃傷の際には家老に次ぐ上席である組頭（番頭・侍大将）の地位に昇っていた。
浅野家改易に伴う赤穂城での論争では末席家老の大野九郎兵衛（650石）とともに開城派として行動し、大石内蔵助良雄ら篭城・殉死切腹派と対立した。最終的に藩論はお家再興・敵討ちを前提にした開城でまとまるが、『赤城盟伝』によれば神崎与五郎は、同じく開城派の組頭である玉虫七郎右衛門（400石）とともに岡林を「臆病」な人物と言ったという。しかし論争に敗れた大野九郎兵衛が、4月12日に赤穂城から逃亡したのに対して、岡林の方はその後も赤穂にとどまり、収城使や収城目付荒木政羽の御迎などの任務にあたり、赤穂藩士としての義務を果たしている。臆病者にはできないことであろう。
大石一派にはその後も近づかず、4月19日の開城後は、すぐに兄の旗本松平忠郷の江戸屋敷に帰っていた。しかし翌年、大石内蔵助らの吉良邸討ち入りがあると、兄の忠郷は「1000石取りの重臣でありながら、義挙に加わらなかったのは何事か、桜井松平家の恥さらしである」と、直之を罵った。さらに収まらない忠郷は、元禄16年（1703年）12月28日、直之を、弟松平左内忠輝（旗本300石）の介錯で強制的に殉死切腹させた。享年24。忠郷と忠輝は、これを町奉行所に届け出たが、町奉行所では“直之の乱心”としてこの事件を処理したという。
なお岡林の組に属していた藩士のうちからは早水藤左衛門満尭、間喜兵衛光延、千馬三郎兵衛光忠が吉良邸討ち入りに加わっていた。
