守り人シリーズ
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守り人シリーズ(もりびとしりーず)は、上橋菜穂子による異世界ファンタジー小説のシリーズ作品である。
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[編集] 概要
ジャンルは児童文学だが、大人にもファンは多い。タイトルには「~の守り人」とつく。また、同じ世界て主人公が別の「旅人シリーズ」も存在する。(「旅人シリーズ」の主人公は新ヨゴ皇国の皇太子チャグム)2006年10月現在ハードカバー本で6冊、文庫本で2冊刊行。2006年11月15日に「ロタ王国編」が発売。また、11月下旬以降に「カンバル王国編」「新ヨゴ皇国編」の三部作より成る『天と地の守り人』が刊行予定である。
2006年8月から、NHKFM「青春アドベンチャー」枠で『精霊の守り人』のラジオドラマが放送された。また、『精霊の守り人』のアニメ化も決定している。2007年春にNHKで放送する予定。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 世界観
この作品の世界には、現実に見えている世界(サグ)と見えてない世界(ナユグ)がある。この二つの世界は重なり合って同時に存在しており、呪術師は呪術によってナユグの生き物としゃべったり景色を見たりできる。また、呪術を用いなくてもふとしたときにナユグが見える人間も存在している模様。たまにサグとナユグの触れ合っている場所もあり、カンバルの山の底、青霧山脈の谷間などがそれである。物語に主に登場する国は、新ヨゴ皇国・カンバル王国・サンガル王国・ロタ王国の5国だが、後半になると海の向こうの大国であるタルシュ帝国も登場する。言語は国によって異なり、国によって宗教も異なる。
[編集] あらすじ (旅人シリーズも含む)
[編集] 守り人シリーズ第一作「精霊の守り人」
女用心棒のバルサはふとしたことから新ヨゴの第二皇子チャグムの護衛を依頼される。彼はその身に、この世(サグ)と重なって存在する異世界(ナユグ)の水の精霊ニュンガ・ロ・イム〈水の守り手〉の卵を宿していた。チャグムは、怪しいものを宿した息子を殺そうとする父帝と、ニュンガ・ロ・イムの卵を食らうナユグの怪物ラルンガの両方から命を狙われている。チャグムを連れて宮から脱出したバルサは、卵がチャグムの体を離れる夏至まで、幼馴染の呪術師タンダやその師匠のトロガイと共にチャグムと暮らし始める。バルサもまた、養父であるジグロに助けられたことがあった。そのころ星読博士のシュガは、チャグムに宿った卵の精霊がかつて新ヨゴの初代天皇トルガルが倒したとされる妖怪と同じだと知り、過去の記録を調べはじめる。そこでシュガは、トルガルの伝説が歪曲されたものであるということと、本当はニュンガ・ロ・イムが雨を降らせて作物を助ける存在だということを知る。
[編集] 守り人シリーズ第二作「闇の守り人」
チャグムの護衛を無事に終えたバルサは、ジグロの供養のため自らの故郷のカンバル王国に向かう。バルサが幼い頃、王の主治医であったバルサの父親は王弟ログサムにおどされて王を毒殺させられた。口封じに自分共々バルサが殺されるのを恐れた彼は、親友で100年に1人と言われる天才短槍使いジグロにバルサをつれて逃げるように頼んだ。それ以後バルサはログサムが死ぬまでジグロと共に逃げ、短槍を習い、生き抜いてきた。その後ジグロが死に、用心棒となったバルサは、チャグムの護衛を終えて自らの過去を清算しようと思い立ったのだった。しかしカンバルに帰ってみると、ジグロは王即位の儀式に使う国宝の金の輪を盗んだ悪党の汚名を着せられていた。黒い闇に包まれたカンバルをバルサが救う。
[編集] 守り人シリーズ第三作「夢の守り人」
第一皇子の死により皇太子となっていたチャグムは憂鬱だった。タンダやバルサなどに出会い、民衆の暖かさを知ってしまった彼が宮の暮らしを喜ぶはずはなく、ましてや自分を殺めようとした帝を尊敬する訳もなかった。毎日不満を漏らすチャグムにシュガはつい、密かに自分が街におりてトロガイに呪術を習っていることを話してしまう。一気に懐かしさが増した彼は、その夜、夢の中で聞こえる声にひかれ目覚めなくなってしまう。そのころ、皇子を亡くしたばかりの一ノ妃など目覚めなくなった者は他にもいた。タンダの兄の娘カヤもその一人であった。カヤを助けようと一人で呪術を行い、敵の罠にはまってしまうタンダ。肉体をすべて『花』にのっとられつつも、なんとか心をのっとられるのを防いだタンダは夢の中でチャグムを見つける。
[編集] 守り人シリーズ 第四作「神の守り人」(来訪編)(帰還編)
タンダに付き添って、ロタ王国で行われる「ロタの草市」に来たバルサは、そこで人買いに売り飛ばされるところだったタルの民(ロタに住む背が高く顔立ちの整った種族。昔この種族の一人が血を好む残酷な鬼神タルハマヤを宿したサーダ・タルハマヤが全ロタ人を圧政で支配したためロタ人からは忌み嫌われている)の兄弟に出会う。彼らを売買しようとした人たちは、皆何かにのどを切り裂かれて死んでいた。そして兄弟のうちの妹アスラは無傷にもかかわらず気絶していた。アスラに何か秘密があると察したバルサとタンダはなにかと彼らを気にかける。すると彼らの宿に火事が起こり誰かがアスラと兄のチキサを連れてゆこうとする。なんとかアスラを助け出したバルサは山の中に逃走し、タンダやチキサと別々になってしまう。山の中を逃げてゆくバルサたちと離れたチキサとタンダは牢に入れられる。牢に入れた相手はなんと、タンダの知り合いでロタの呪術師スファルとその娘シハナだった。そこでタンダはスファルに、アスラがその身にタルハマヤを宿し、さらにアスラが怒るとタルハマヤが召喚されることを聞く。
[編集] 旅人シリーズ第一作「虚空の旅人」
新ヨゴ皇国の皇太子チャグムは隣国のサンガル王国の〈新王即位ノ儀〉に出席するため、相談役のシュガを伴い望光の都〈サンガル・ヤシーラ〉にはいる。そこでサンガルの開放的な国の様子に魅了される。だが、このサンガル王国を支配しようとするタルシュ帝国からの密使、南のヨゴ人の呪術師が〈ナユーグル・ライタの目〉となった少女の体を使い、チャグムと親しくなったサンガルの第二王子、タルサン王子に呪いをかけ、次代の王となるカルナン王子に重傷を負わせる。チャグムは呪術師の陰謀を洗い出そうとするが…。
[編集] 旅人シリーズ第二作「蒼路の旅人」
タルシュ帝国と交戦状態にあるサンガルは勝てないと知り降伏、新ヨゴを罠にかけようとする。新ヨゴ皇国の皇太子チャグムは、祖父のトーサ(海軍大提督)を、罠と知りながら敵地に送り込んだ父帝に激怒し、トーサと共に行くことになってしまう。そして予想通りサンガルに拿捕され、虜囚となってしまい、トーサは自殺してしまう。虜囚となったチャグムは狩人(帝の命により暗殺を行う)であるジンや数名の海士と共に逃亡をはかるが肩に銛を受け、タルシュ軍に捕まる。そしてタルシュ帝国に連れて行かれ・・・。
[編集] 天と地の守り人 第一部 ロタ王国編
迫り来るタルシュ帝国の脅威に新ヨゴ皇国は鎖国をおこなう。新ヨゴへの出入りが禁じられて帰国入国ができなくなった人々の国境破りを世話していたバルサは、自分のことを探していた一人のもと新ヨゴの上級海士に出会う。彼に託されていたジンの手紙で、バルサは、チャグムの生存と目的を知る。大国タルシュに報いるため、たった一人で進もうとするチャグムを心配し、バルサも彼の後を追うが…。
[編集] 登場人物
[編集] 主な登場人物(2作品以上に登場)
- バルサ
「守り人シリーズ」の主人公。女性ながら「短槍使いのバルサ」の通り名を持つ凄腕の短槍使い。カンバル出身。子どもの時に王の主治医だった父親が政権争いに巻きこまれ、バルサも口封じに殺されるところを、父の友人だったジグロに助けられてカンバル国外に逃亡する。諸国を逃亡中に彼女に武術の才能を見出したジグロに短槍を教え込まれる。ジグロが病気で死んだ後は彼に習った格闘や短槍の腕を活かして各地で用心棒稼業をしている。ジグロと共にトロガイの家に居候していたことがあったためタンダとは幼馴染で、槍の稽古で怪我をする度に彼の治療を受けていた。
- チャグム
「旅人シリーズ」の主人公。新ヨゴ皇国の第二皇子だったが精霊の卵の事件の直後に第一皇子が死んだため皇太子となる。精霊の守り人の時点で年齢以上に分別があり利口。たまにナユグが見え、タンダのおかげで少しだけ呪術も使える。過去に精霊の卵を宿したときに庶民の暮らしにふれたため民を思う思いが強い。帝とは精霊の守り人のときの出来事により仲が悪い。
- トロガイ
当代一と言われる呪術師。七十代の老婆だが、もの凄い体力の持ち主。あまり人の身分を気にしないところがある。
- タンダ
トロガイの弟子。お人好しでのんびりとした性格。バルサを大事に思っている。幼い頃から、人の顔に死の影を見たり、魂を探す鳥が見えたりしたため、親兄弟に少々変人扱いされていた。
- シュガ
新ヨゴ皇国の星読博士で聖導師見習い。チャグムの教育係も兼ね、宮廷内でチャグムが信頼を置く相手である。密かにトロガイからヤクーの呪術や世界観を学んでいる。
- トーヤとサヤ
新ヨゴ皇国の市場の片隅で何でも屋を営む孤児たち。何でも屋の名の通り、客に頼まれたものは市場で何でも調達してくるのが職業。よく旅に出ているバルサとトロガイの橋渡し役を務めることが多い。2度目に登場したときには結婚していた。
- アラユタン・ヒュウゴ
タルシュによって滅ぼされたヨゴの国民で、現在はラウル王子の密偵をしている。かなりの切れ者で、「蒼路の旅人」でチャグム誘拐を行なった人物。火事が苦手らしい。 作者は「蒼路の旅人」より前に、少年時代の彼を主人公とした「炎路の旅人」を出版する予定だった。(今現在、出版予定は未定)
[編集] その他登場人物
[編集] 主な登場国
- 新ヨゴ皇国
バルサ・トロガイ・チャグム・タンダ・シュガなど、物語中の中心人物ほぼ全員の住む国(バルサの場合は定住していないので最近生活している国)。最高権力者は帝(みかど)で、彼は3人の后をめとることができる。また、皇族は神の子孫と信じられており、その目には神通力が宿ると信仰されている(実際はもちろんただの人)。この国の最も特徴的な制度が星読博士の制度である。この制度は新ヨゴの創始者カイナン・ナナイが作った制度で、星の位置や空の様子を見ることによって未来を占う「天道」という学問を学ぶことに基づいた出世制度である。作中に出てくる人間でこれに関わる人間は星読博士のシュガと聖導師である。聖導師は政治にも深く関わる重要な役職で国の闇の部分にも深くかかわっている。この国では王位継承権を自分から破棄することはできず、継承権から逃れる方法は死ぬ(病死か事故死、またはそれに見せかけた暗殺)以外ほとんどない。帝直属の暗殺者を狩人という。兵力はあまり強力ではない。
- カンバル王国
新ヨゴ皇国の北、青霧山脈を越えていった向こうにある国。10の氏族があり、最高権力者はカンバル王で、王都に住む。各氏族の氏族長の血を引く、氏族長筋(氏族長の息子や弟達の事。カンバルでは武人の血は父から息子に流れると言われている。)の者達が〈カンバル王の槍〉となる。貧しい国で、痩せた土地でも栽培できるガシャ(芋)やカンバル・ヤギの乳に頼るしかない。唯一の財源、ルイシャ(青光石)は《山の王》から送られる宝石で時期にずれはあるが、大体二十年ごとに王の城の奥にある《山の底への扉》が開き、《ルイシャ送りの儀式》が行なわれる。《ルイシャ送りの儀式》は〈王の槍〉とその従者が山の底へ下る。山の底で、最も優秀な槍の使い手が〈舞い手〉を務める。〈舞い手〉がヒョウル(闇の守り人)と〈槍舞い〉を舞う。
- ロタ王国
新ヨゴ皇国の隣国である。北部の氏族は貧しく、南部は豊かなため格差が激しく、たびたび衝突が起きる。ヨーサム王が統治し、その弟イーハンが兄を助ける。また、ロタ人のほかに、タルの民という、おそろしい神を招く力のある〈異能者〉がうまれ、ロタを支配する、という言い伝えがある民がいて、彼らは陰に隠れて生きている。ロタは騎馬民族で、強力な軍隊を持っている。
- タルシュ帝国
南の大陸にある超大国。帝国主義で、他の国々を次々と併呑し、北へ迫る。サンガルはおとされ、新ヨゴ、ロタ、カンバルと狙いをさだめている。身分は関係せず、能力しだいで出世できる。圧倒的な軍事力を誇る。兵役があり、国獲りにより豊かになった国である。タルシュ人は赤銅色の肌をし、銀色の目をもち、大柄である。王子は、長男のハザールと次男のラウルがいて、手柄を競っている。帝都はラハーン。
- サンガル王国
[編集] 用語
- 短槍
武術に用いる槍で、バルサやジグロなどが使用する。北のカンバル王国で盛んであり、同国の王の護衛である「王の槍」は最強の短槍使いとして名高い。
- ヤクー
現在新ヨゴである土地に昔から住んでいた人種。トロガイはヤクー、タンダは混血である。ヨゴ人との混血を繰り返しているため、純粋なヤクーは現在ではそれほど多くない。サグやナユグという独自の世界観を持つ。
- サグ
ヤクー達の世界観で言う「こっちの世界」で、人々が普通に生活している世界。ナユグと重なって存在する。
- ナユグ
ヤクー達の世界観で言う「あっちの世界」で、精霊などがいる世界。サグと重なって存在する。カンバルなどにも、似たような呼び名がある。呪術を用いて見ることができるが、普通に見ることができる者もたまにいる(アスラやチャグムなど)。季節のサイクルが非常に長い。
- ルイシャ(青光石)
カンバル原産の青く発光する宝石。かなり高価で、カンバルの国庫を担う重要な輸出品。カンバルの山の底に住む「山の王」の脱皮した皮であり、十数年に一度カンバル人に送られる。
[編集] ラジオドラマ
「青春アドベンチャー」(NHK-FM)でラジオドラマ化。全10話。
[編集] キャスト
- バルサ - 唐沢潤
- チャグム - 大久保祥太郎
- トロガイ - 渡辺美佐子
- タンダ - 建蔵
- シュガ - 織田優成
- 聖導師 - 草薙幸二郎
- モン - 若松武史
- ジン - 渡辺卓
- ゼン - 岡村洋一
- カイナン・ナナイ - 酒向芳
- トルガル - 石住昭彦
- 語り - 沢りつお
[編集] テレビアニメ
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[編集] スタッフ
- 原作:上橋菜穂子
- 監督・脚本:神山健治
- 助監督:吉原正行
- 脚本:菅正太郎・櫻井圭記・岡田俊平・檜垣亮
- キャラクターデザイン:麻生我等
- 作画監督:後藤隆幸・中村悟・近藤圭一・杉光登・山中正博
- 演出:河野利幸・橘正紀・佐山聖子・新留俊哉・増井壮一・上田繁・高橋幸雄
- ストーリーボード:荒川直樹
- 美術監督:竹田悠介
- 色彩設計:片山由美子
- 撮影監督:田中宏侍
- 3D監督:遠藤誠
- 編集:植松淳一
- 音響監督:若林和弘
- 音楽:川井憲次
- 制作:Production I.G
[編集] キャスト
- バルサ:安藤麻吹
- チャグム:安達直人
- タンダ:辻谷耕史
- トロガイ:真山亜子
- トーヤ:浅野まゆみ
- サヤ:広橋涼
- ヒビトナン:石森達幸
- シュガ:野島裕史
- ガカイ:中博史
- 帝:斧アツシ
- サグム:小林良也
- 二ノ妃:篠原恵美
- モン:楠見尚己
- ジン:松風雅也
- ゼン:望月健一
- ユン:川田紳司
- ライ:笹田貴之
- タガ:福原耕平
- スン:増田裕生
- ジグロ:西凛太朗
[編集] 外部リンク
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