天羅万象
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天羅万象(てんらばんしょう Tenra Bansho)とは、テーブルトークRPGのタイトル、また、そのシリーズ。作者は井上純弌。 時代劇にサイバーパンクの要素を取り入れた独特の世界観を持つゲームで「ハイパーオリエンタルTRPG」という独自のジャンルを名乗っている。
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[編集] 概略
高度な機械技術と戦国時代_(日本)の日本文化が混在したSF時代劇な世界「天羅」を舞台とする。 プレイヤーキャラクターは、戦乱が続く天羅世界の中で、強大な力を持ちながらも業と宿命に翻弄される悲しき超人たちを演じることになる。
プレイヤーキャラクターたちのゲームの中での目的は、「モンスターと戦う」や「宝物を見つける」などといったわかりやすいものではなく、「キャラクターの個々の生き様を演じること」という解釈の広いものとなっている。
「生き様を演ずる」ことを主目的にしたゲームなために、キャラクターを格好よく演ずることでそのキャラクターが強くなっていくという、”ロールプレイング評価”のルールがシステムの根幹として組み込まれているのが特徴である。
[編集] システム
判定は6面ダイスを数個振って一定以下の目(通常の判定では3以下)がいくつ出るかで達成値を決める。 一度の判定で振れるダイスの個数は能力値と技能によって決まり、通常は10個未満であることがほとんどである。しかし、このダイスの数は「気合」と呼ばれるポイントを消費することで瞬間的に増やすことができる。シナリオのクライマックスでは100個近いダイスを一度に振ることさえ珍しい光景ではない。
この「気合」のルールは天羅万象のもっとも特徴的な部分であり、ゲームシステムの根幹である。
天羅万象では、「キャラクターの性格」「他人との人間関係」「キャラクターが過去に出会った重要な出来事」などといったのキャラクターの背景設定が「因縁」という形でゲームデータとして表現される。 そして、因縁に従ったロールプレイを行ったとき、GM(もしくは「裁定者」と言われるプレイヤー)がそれを上手なロールプレイだと認定すれば、気合ポイントを得るチャンスが与えられるのだ。
ただし、気合を使うたびに「業」と呼ばれるポイントがたまり、これが108を超えると人間性を失い「修羅」と化す。こうなるとキャラクターはNPCとなり、プレイヤーキャラクターとしてはロストした扱いになる。
[編集] 舞台
[編集] 永遠の戦国「天羅」
ゲームの舞台となるのは「天羅」という名の広大な大陸である。ここは日本の戦国時代をベースにした文化をもつ世界なのだが、神宮家と言われる天空に住まう超越種たちによってナノテクノロジーやサイバネティクスなどのオーバーテクノロジーがもたらされている。
これらのオーバーテクノロジーを受け取るかわりに、各国の大名たちは神宮家を権威として認めることになる。神宮家は基本的には地上の国々に直接的な支配力を持たないが、権威として干渉を行う。その最たるものが「戦乱」を煽ることであり、神宮家はたくみに各国にテクノロジーをばらまき、天羅に終わることのない永遠の戦乱をもたらしているのである。
ただ人が戦い続けるだけに作られた"未来のない箱庭"の中で、ちっぽけな人間たちが運命に抗い、業を燃やして因縁に殉ずる。それが『天羅万象』の基本的なゲームスタイルである。
[編集] 代表的なアーキタイプ
天羅万象では、クラスの代わりにアーキタイプというものを選択(もしくは組み合わせて)プレイヤーキャラクターを作ることになる。
- サムライ
- 天羅世界におけるサイボーグ。戦うために機械の身体を得たものたち。
- 陰陽師(おんみょうじ)
- ナノテクノロジーの使い手。ナノテクの産物である「式神」を使役する。
- 蟲使い
- 人間に寄生する生体兵器「蟲」を移植した改造人間。
- ヨロイ
- 天羅世界におけるロボット兵器。少年少女にしか操縦することができず、それゆえに天羅の戦場は子供たちを戦いに駆り出す陰惨なものとなっている。
- 金剛機(こんごうき)
- ヨロイの中に人間の魂を移植した自律型戦闘兵器。完全義体のようなもの。
- オニ
- 天羅世界の先住民族。被差別民。ヴィジュアル的にはアイヌ民族のオマージュになっている。超能力が使える。
- 法師
- 天羅世界の宗教家。モチーフは仏教。法術が使える。
- 傀儡(くぐつ)
- 天羅世界のアンドロイド。大名たちの観賞用(愛玩用)として作られ高価な傀儡を持つことはそれだけで権威とされる。戦国時代の茶器文化のオマージュでもある。戦闘用の傀儡も存在する。
- 巫女
- 天羅世界の圧倒的な権威「神宮家(じんぐうけ)」のエージェント。
- 神宮家は天羅世界(惑星)にはじめにやってきた地球の移民船団のリーダーたちの子孫である。太古の地球の高度なテクノロジーを保持していて、テクノロジーを失った他の入植者の子孫たち(つまり、天羅の一般住人)を支配している。
- 忍(しのび)
- 大名などに仕えるエージェント
[編集] シリーズ概略
[編集] 天羅万象(初代)
1996年にホビージャパンより発売。 発売より数年前からRPGマガジンで世界観を解説する連載が続いており、井上純弌の美麗なイラストもあいまって発売が待望されていたゲームであった。
しかし、いざ蓋を開けてみると、「気合」のルールの運用のしにくさが問題視された。初代天羅のルールではロールプレイを評価することがGM任せであったがために、全国の多くの天羅万象のプレイ卓においてGMとプレイヤーとの間で諍いが起こった。(どれだけプレイヤーが”因縁に従った”ロールプレイをしてもGMに理解されない限りは気合はもらえないのである。そして気合がもらえないとこのゲームはシナリオをクリアすることはまず不可能である)
また、気合ポイントの処理や管理が煩雑であり、気合ルールに熟達するまでは、一般のテーブルトークRPGよりもロールプレイのテンポが悪くなるという本末転倒な状況も頻発した。
結果、初代天羅は今までにないタイプのゲームと注目されたものの、「システムが実験的すぎる」「ゲームプレイが困難」と様々な烙印を押されることになった[1]
ルールブックが完全版と簡易版の二冊が発売されたことも特徴であった。簡易版はルールブックというよりイラスト集のような構成で、天羅万象の独特の世界観を文章でなく絵で伝えている。これは、イラストよりもテキストに比重が置かれるのがあたりまえだった日本のそれまでのテーブルトークRPGの常識からは強いインパクトをもって受け入れられた。
- 関連書籍
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- 天羅万象RPG (基本ルールブック。ボックス版)
- 天羅万象ビジュアルブック (簡易ルールブック。A4版。イラストが豊富で世界観の説明が主だが、プレイヤーに必要なルールとデータは揃っている)
- 天羅万象ソースブック (サプリメント。A4版)
- 天羅万象シナリオ集 吸血鬼 (シナリオ集。ボックス版)
[編集] 天羅万象・零
1999年にエンターブレインより発売。 天修万象の第二版であり、「気合」周りのルールが大幅に改革された。 ロールプレイの評価をGMだけでなくプレイヤーもできるようにしたことや、気合ポイントの管理が簡易化されたことなどが特徴で、初代の天羅万象よりもはるかに高速なプレイが実現するようになった。
ロールプレイ評価のルールとしては初めて実用レベルに耐えうるルールを実装したと言える作品で、『零』の商業的な成功をきっかけに、ロールプレイ評価のルールを持つテーブルトークRPGが他にも多数出てくるようになった。[2]
- 関連書籍
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- 天羅万象・零 (基本ルールブック。B5版)
- 天上天下 (サプリメント)
- 天羅万象・零 仇殺の戦場 (小説。ファミ通文庫)
- 天羅万象・零 スーパーシナリオサポート Vol1~6 (シナリオ集。B5版)
[編集] 天羅WAR
詳細は天羅WARの項目を参考のこと。
[編集] その他
- 本作には映画や漫画などからの無数のパロディが存在する。黒澤明の時代劇と雨宮慶太の映画(特に未来忍者とタオの月は天羅万象を理解するのにはうってつけの作品である)からのオマージュはすぐ見てとれるが、他におよそゲームのテーマと関係なさそうな部分からのパロディ(スターウォーズ、X-MEN、ストリートファイターなど)も大量に存在し、それが「同人の二次創作のようだ」と批判されることもある。しかし、天羅万象のこの”二次創作のような”ところは、そのようなノリを好む一定のファン層を強く惹きつけている要因にもなっている。
- 既存作品の大量のパロディによる、二次創作めいたノリを持つゲームとしては他に異界戦記カオスフレアがあるが、このゲームのデザイナーは天羅万象に影響を受けていることを公言している。
- 天羅万象の世界設定に使われている用語の中には、『アルシャード』や『エンゼルギア』など他の井上純弌のゲームと共通するものもあるが、これらはセルフパロディに過ぎず、天羅万象と世界設定がつながっていることを示しているわけではない。ただし、『テラ:ザ・ガンスリンガー』だけは明確に天羅万象と同じ世界を舞台にしているゲームである。
- デザイナーが天羅万象をわかりやすく解説した言葉に『天羅十倍則』というものがある。これは、通常の戦国時代劇のスケールを10倍するとちょうど天羅のようになるという意味である。
[編集] 関連項目
- 井上純弌
- テラ:ザ・ガンスリンガー
- 天羅WAR
[編集] 外部リンク
- 天羅万象・零公式ウェブサイト
- Tenra Bansho in English website (発売予定になっている『零』の英語版のサイト)
- ときめき天羅学園 (天羅万象のルールをつかってギャルゲーをやるためのヴァリアントルール)