四つ仮名
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四つ仮名(よつがな)とは、ジ・ヂ・ズ・ヅの4つの仮名をいう。現代日本語(標準語)の音韻においてジとヂ、ズとヅは同じ発音であることに言及するために使われる術語である。
[編集] キリシタン資料
16世紀に来日したポルトガル人のキリスト教宣教師たちが残した資料(当時の日本語をポルトガル風のローマ字で表記している)では、四つ仮名の表記はジがji、ヂがgi、ズがzu、ヅがzzuと書かれており、当時、これらの仮名は区別が存在していたことが分かっている。
小松英雄著『日本語の音韻(日本語の世界7)』(中央公論社、昭和56年)によると、その音価はジが有声後部歯茎摩擦音[ʒi]、ヂが有声後部歯茎破擦音[ʤi]、ズが有声歯茎摩擦音[zu]、ヅが有声歯茎破擦音[ʣu]であったと推定されている。
なお現在のジ・ヂは語頭や促音・撥音の後においては有声歯茎硬口蓋破擦音[ʑi]、語中においては有声歯茎硬口蓋摩擦音[ʥi]となっており、ズ・ヅは有声歯茎破擦音[ʣu]、語中においては有声歯茎摩擦音[zu]となっている。
[編集] 蜆縮涼鼓集
江戸時代に四つ仮名の区別は失われ、ジとヂ、ズとヅが同じ発音となった。元禄8年(1695年)に「蜆縮涼鼓集(けんしゅくりょうこしゅう)」が刊行された。蜆は「しじみ」、縮は「ちぢみ」、涼は「すずみ」、鼓は「つづみ」であり、四つ仮名の表記の仕方で問題になるものを集めた書籍である。
このような書籍が出版されている背景には、四つ仮名が発音上は区別されなくなっている一方、表記上は厳密な書き分けが要求されており、混乱があったものと考えられている。