十字架
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十字架(じゅうじか)はイエス・キリストが磔刑に処されたときの刑具と伝えられ、主要なキリスト教教派が、最も重要な宗教的象徴とするもの。イエスの十字架を象り、立体のものを作ったり画布や板に描いたものを崇敬の対象とする。日本語では立体のものを十字架と呼び、二次元のものは十字と呼ぶことが多い。十字はまた祈祷の一部として手で自分の胸に画いたり、相手の頭上に画いたりする。
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[編集] 歴史と受容
十字架がキリスト教の信仰のなかで重視されるようになったのは4世紀以降である。十字架はキリストの受難の象徴また死に対する勝利のしるし、さらには復活の象徴として捉えられた。このため「聖なる木」「死を滅ぼしし矛」などの美称がある。
キリスト教を公認したローマ皇帝コンスタンティヌス1世の夢に十字架が勝利のしるしとして現れたという伝承や、コンスタンティヌスの母ヘレナがエルサレム巡礼に際して十字架の遺物を発見したという伝承がある。
いくつかの図像や立体の十字架の根元にはときにされこうべが置かれ、これは伝承によればアダムのされこうべであるといわれる。
カトリックや東方正教会など伝統的諸教会においては、十字架への崇敬を公の場面でも私の場面でも行う。特別の祭日において十字架を崇敬するほか、十字架の携帯を信者に義務付ける、十字架への接吻や跪礼を行う、十字架を主題とした祈祷を行う、一般の祈祷において十字を手で画くなどさまざまな仕方で、十字架は信仰生活の一部となっている。
十字の描き方には教派によっていくつかの種類がある。こうした際は古代の教義論争の結果成立したものであり、最初期には一本指・二本指などいろいろな方法があった。また十字を画く場所も多岐にわたった。
プロテスタントのほとんどの教派でも、十字架はキリストの受難を象徴するものとして教会装飾に取り入れられる。一方ほとんどのプロテスタント教派では手で十字を描く習慣は廃されている。
エホバの証人は、イエスが架けられた木は十字架ではなく杭であったと主張する。また、カトリック系の研究家の中にもイエスが架けられた木が十字架であったとは断言できないと主張をする者もいる。
[編集] 信仰実践の中の十字架
カトリックや東方正教会など伝統的諸教会においては、十字架発見を始めとして、幾つかの十字架に関する祝祭日がある。
東方正教会においては年に3度、十字架のための特別の祭日がある。大斎中の「十字架叩拝の主日」、8月の十字行、9月の「十字架挙栄祭」である。十字架挙栄祭は十字架発見を記憶する祭で、十二大祭のひとつである。またそれ以外のときにも、復活祭など特別の折に、十字を先頭にした行列を行うことがある。これを十字行という。十字行は聖歌を伴い、したがって祈祷の一種である。
信者は十字架を身に付けるほか、指を用いて十字を描くのを常とする。また東方正教会においては、主日ほか祭日の早課中と聖体礼儀の後、十字架に接吻し司祭の祝福を受ける習慣がある。この十字架接吻で用いられる十字架は多く金製であり、また東方教会には珍しく十字架上のキリストの身体の象りを含む。
[編集] 個人の信仰実践における十字
中世末期以降、東方正教会では十字を画く(かく)のに右手を用い、まず上から下へ、つぎに右肩から左肩へと画く。このとき指は親指・人差し指・中指の三指を伸ばして合わせ三位一体を現し、残る二本の指は内側へ折る。ただし司祭以上の聖職者が信者等を祝福するときには、上から下へ、左から右へと画く。
カトリックでは、東方教会と逆、上から下、左から右へと描く。カトリックでは十字を「切る」という。
十字の画き方の統一を嫌って、分派した異端には、東方正教会のロシア古儀派などがある。
十字を画くことは祈祷の一部である。ないし十字を画くとは身体によって表現された祈祷である。東方正教会の場合、具体的には、それぞれの祈祷の終結に際して、また聖堂へ入るとき、入ったとき、退出するとき、十字架・福音書・イコン・不朽体などに崇敬を表し接吻する際、福音書ほか聖書が読み上げられる際、「父と子と聖神」あるいはハリストスと神の名を呼ぶ際、聖人に祈祷しその名を呼ぶ際、執り成しの祈りにおいて特に名を上げて人の名を呼ぶ際、などに十字を画く。
[編集] 十字架の道行き
カトリックで行われる祈祷の一形態。中世末期から行われるようになった。キリストのまねびの一形態ともいえる。 イエスの受難を、捕縛から受難を経て復活まで15の場面を、その一つ一つの場所や出来事を心に留めて祈りを奉げる。 聖地巡礼ではそれぞれの場所で祈祷を行う。これを模すために カトリック教会の聖堂では壁に捕縛から埋葬まで14場面の聖画像が掲げてある。 最後の15番目場面の復活は祭壇側に向かって祈る。ただし、四旬節中は、14番目までの祈りが奉げられる。 特に四旬節は毎週金曜日に行われるのが一般的である。