代理母出産
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代理母出産(だいりははしゅっさん、だいりぼしゅっさん)とは、「ある女性が別の女性に子供を引き渡す目的で妊娠・出産すること」 (Warnock Commitee 1984-1991) 。その出産を行う女性を代理母という。代理出産と略されることもある。また、妊娠するという部分を強調して代理懐胎と表す場合もある。
代理母出産については、厚生労働省の審議会(厚生科学審議会生殖補助医療部会)が2003年にとりまとめた『精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書』において、女性蔑視や妊娠・出産に対するリスクの問題(下記の問題点を参照)等を理由として禁止することが提言されている。また、日本産科婦人科学会の自主規制(参考1、参考2)により、国内での代理母出産は原則として実施されていない。ただし、代理母出産をそのものを規制する法制度は未整備である。
代理母出産には以下のケースがあり、従来は卵子提供者が誰かによって呼び分けられていたが、「借り腹」にネガティブな印象があることから、現在は全て「代理母」と呼ばれている。
- Gestational Surrogacy … 代理母とは遺伝的につながりの無い受精卵を子宮に入れ、出産する。借り腹。ホストマザー。
- 夫婦の受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
- 第三者から提供された卵子と夫の精子を体外受精し、その受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
- 第三者から提供された精子と妻の卵子を体外受精し、その受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
- 第三者から提供された精子と卵子を体外受精し、その受精卵を代理母の子宮に入れ、出産する。
- Traditional Surrogacy … 夫の精子を使用して代理母が人工授精を行い、出産する。代理母。サロゲートマザー。
[編集] 代理母出産への各種の批判
- 人間に許される行為ではないという意見
- 女性蔑視を助長するのではないかという意見- 代理母出産を「女性を子供を産む機関として扱っている」として批判する意見もある。「妊娠中の生活について、細かく規定されていることが多い」。というのがその論拠であるが、代理母ではない妊娠中の女性の生活と比較しての実証的な議論ではない。
- 母性本能を軽視しているという意見 - 代理母が子の引き渡しを拒否する事件が起きている(ベビーM事件)。つまり代理母の母性本能を軽視しているというのがこの批判である。ただし全ての代理母が生まれた子供の引き渡しを拒否するわけではない。
- 妊娠・出産に対するリスクを軽視しているという意見 - 出産時に母体に障碍が発生した場合について、代理母側に不利な条件での契約がなされていることもある。ただし全ての代理母が不利な契約を結ばされているわけではない。
- 障害者差別を助長するという意見 - 妊娠時の羊水染色体検査が義務づけられており、障碍がみつかった場合は強制的に中絶させられることが多い(注意:これは代理母出産に限られたことではない)。また、障害児が生まれた場合、依頼者が受け取りを拒否する事件も起きている。
- 人種差別を助長するという意見 - 米国においては、代理母として同一人種・同一民族・同一国籍の女性を求める傾向があるため、(依頼人に多い)白人に需要があつまり、黒人女性が代理母をつとめる場合よりも白人女性が代理母をつとめる場合の方が契約金が高額である。代理母出産を批判するグループは、この現象が黒人差別を助長すると主張している。
- 民法上の扱い - 現在の日本の最高裁判例においては、「母子関係は分娩の事実により発生する(最高裁判所 昭和35(オ)1189 親子関係存在確認請求)」と定められており、遺伝子上は他者の子であっても代理母の子として扱われる。このため、代理母と子との間で相続上の問題が発生することが懸念されている。遺伝子上の親を実親として認めさせようという動きもあるが、生まれた子が依頼者・被依頼者双方と遺伝子上のつながりを持たないケース(上記1-4)があり、単純に遺伝子的なつながりのみで親子関係を確定することはできない。
[編集] 代理母出産批判への反論
- 「人間に許される範囲を超えている」という指摘もあるが、どこまでが「人間に許されること」なのかを一義的に決定することは難しいのではないかという反論もある。例えば夫婦ともに健康で通常の妊娠出産が可能であるのに代理母出産での生殖を行う場合と、子宮癌など生死に関わる病気を患い、代理母出産の可能性だけを生きる望みとして闘病生活を乗り越えてきた女性が代理母出産での生殖を行う場合では、倫理面で同じ基準を適用しうるかどうか。
- 多くの批判は「このような事例もある」という、個々の事例の問題を持ち出して、代理母出産の全てがそういった問題を引きおこすかのような議論を行っているのではないかという批判がある。
- 「差別を助長する可能性があること」と「差別が恒常的に発生していること」は別の問題であるが、代理母出産を批判するグループは、精密な社会調査を踏まえた実証的な研究を行わないまま可能性の問題を事実の問題にすり換えてしまうことがある。
- 人類史を振り返ってみれば家族のあり方は極めて多様なものであることを考えると、代理母出産を批判する際にしばしば持ち出される「家族関係を複雑化する」という主張は説得力を欠く。
- 「複雑化した家族関係を背負って生まれる子供が哀れだ」という批判もあるが、こうした批判もまた「複雑化した家族関係を背負って生まれる子供は哀れだ」と決めつけており、差別を逆に助長するのではないかという意見もある。
- 柘植あづみ、鈴木良子らフェミニズム系の論客は「子供を欲しいと思う感情は人間の本能ではないから、克服可能である(だから高度な生殖医療は必要無い)」としているが、このような主張は社会構築主義を援用したレトリックであって、人文科学の分野での議論に限っては一定の妥当性を持つ(このような理屈で解釈が可能な事象も存在する)が、自然科学的に実証された理論(全ての事例に例外なく妥当する)ではない。
[編集] 関連用語
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