五十猛神
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五十猛神(イソタケル)は、日本神話に登場する神である。「イタケル」とも読まれる。日本書紀のみに登場するが、古事記に登場する大屋毘古神(オホヤビコ)と同一神とされる。スサノオの子である。
本文ではヤマタノオロチ退治が述べられている段の第四の一書において、高天原を追放されたスサノオとともに新羅に天降り、スサノオが「ここにはいたくない」と言ったので、一緒に船に乗って出雲に着いたとある。五十猛神が天降る際に多くの樹木の種を持っていたが、新羅には植えずに全てを日本に持ってきて、九州からはじめて全国に植えたので、日本は全国が木に被われる国となったという。同段の第五の一書では、スサノオが体毛を抜いて作った各種の樹木を、二柱の妹神とともに全国に植えたとある。どちらの一書でも、今は紀伊に祀られているとしている。
これらの記述から、五十猛神は林業の神として信仰されている。紀伊は古来より林業の盛んな地であったので、それらの人々が信仰していた神と考えられる。紀伊国(かつては「木の国」と言った)に祀られているとの記述から、古事記でオオナムジがその元に逃げ込んだ木国の大屋毘古神と同一神とされる。イザナギ・イザナミの子である大屋毘古神(禍津日神と同一神とされる)とは別神であるが、同一神とされることもある。