乱気流
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乱気流(らんきりゅう)とは、空気中に渦が生じて乱れ、不規則になった気流のことである。
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[編集] 一般的な乱気流
[編集] 飛行機と乱気流
乱気流は、通常、我々の生活の上では特に気になるものではないが、飛行機と乱気流は切っても切れない関係にある。
積乱雲の中や台風の周りに多く見られ、飛行機が乱気流の中に入ると大きく揺れ、急激な上・下降を繰り返すため機体に大きな負担を与え、最悪の場合墜落することがある。また、シートベルトのサインが遅れたために機内の乗客・乗員が重軽傷を負う事故も毎年に何例か発生している。そのため、旅客機の場合、ウェザーレーダーと呼ばれる気象レーダーを装備しているため、乱気流に遭遇する前にある程度の発見は可能であるが、そのレーダーを読み取るためには熟練が必要と言われる。そして、パイロットが前方に乱気流があることを発見したときは、可能な限り回避しなければならない。それは、機体への負担の軽減のほか、機内サービスや乗客の乗り心地といった快適性の他、前記の通り乗客・乗員の身体・生命に影響を及ぼするためである。また、乱気流に遭遇した航空機は、乱気流に遭遇した旨を当該管制空域の管制官に報告しなければならない。それは、他の航空機の早期の乱気流の回避につながるからである。
エアラインのパイロットは、フライトシミュレーターとよばれる機械を使った飛行訓練で、機体の腹が上になった状態、つまり天地が逆さまになった状態からの復帰訓練をさせられる。これは、実際に旅客機が乱気流によって機体がひっくり返って天地が逆さまになったという事例が何例か存在するためであると言われる。
「わざわざ訓練しなくても上下が逆になる事態に遭遇すれば戻すのは当たり前」と思う人も居るかもしれないが、人間のバランス感覚は目と耳で感じ取っているが、気圧の低い高高度では耳の機能が低下しているため、人間のバランス感覚に狂いが生じており、天地が逆になってもどちらが上か下か分からない状態となり(プールで潜って回転するとどちらが水面が分からなくなる時があるのと同じ状況)、パイロットがパニック状態になり墜落につながる可能性がある。したがって、冷静に計器のみによって判断をして機体を元に戻す訓練が必要なのである。
[編集] その他の乱気流
[編集] ダウンバースト(マイクロ・バースト)
空港進入経路上で雷雨が発生するとダウンバーストもしくはマイクロ・バーストと呼ばれる強い下降気流が発生することがある。このような下降気流が発生し着陸航空機が巻き込まれると滑走路に機体がたたきつけられる形となり着陸失敗という大事故につながる。
航空機は、通常、着陸時とくに滑走路着地前は、その飛行機が飛行をしているに必要な浮力が発生するだけの最小限の速度しか出していない。しかし、それでも小型旅客機クラスだと時速120キロ、大型機だと時速300キロ近い速度が出ている。そこに下降気流が発生すると飛行に必要な浮力を失うとともに、高度を上げるなどの飛行態勢を立て直す高度もないことから、時速100キロから300キロという速度が出ている中で地面にたたきつけられる形になるので大事故につながる。ただし、現在はドップラーレーダーにより、そのような事故は発生することはない。また、空港管制塔もそうした気象現象の発生が確認されれば着陸許可を航空機に与えない。
[編集] ウインドシア
航空機が着陸する際に滑走路に着地寸前に風向きが変わり、翼に影響を与え航空機が危険な状態になる風のこと。
気象は晴天や雨天にかかわらず常に変化をしている。前記の通り、航空機は着陸寸前でもかなりの高速度であるため、微妙な風向きの変化が大事故につながる危険がある。旅客機にはウインドシアを感知するレーダがあり、ウインドシアを感知すると警告を発し、パイロットは速やかにゴーアラウンド着陸復航をしなければならない。
[編集] 山岳波(定常波)
山岳地帯で飛行する場合に、山岳地帯特有の風によって機体が大きく揺れることがある。厳密には前記の積乱雲による乱気流とは区別される。
山間や谷間に風が通ることによって特有の風の通り道ができたり、山の斜面に太陽があたり加熱されることによって上昇気流が発生したりすることによって、山岳波とよばれる波状乱流が発生し、そこを通過する航空機に大きな揺れや急激な上・下降といった影響を与えることがある。
動力を持たないグライダーは、山岳波による上昇風帯を利用して、長距離飛行や高高度飛行を行う。日本国内では奥羽山脈に発生する山岳波を利用して1000㎞以上の飛行記録があり、海外ではアンデス山脈に発生する山岳波を利用して、3000㎞以上の長距離飛行記録と、高度15000m超に達する高高度飛行記録が作られた。
1966年3月に富士山上空で英国航空ボーイング707型機が空中分解するという事故が発生した(英国海外航空機空中分解事故)。事故当日は、雲一つない快晴だった。そこで、事故機の機長の判断で飛行コースを変更し、日本の名物である富士山を乗客に間近で見せようという機長のサービス精神が仇となったのではないかと言われている。すなわち、3月は上空の空気は冷たいが、太陽の熱で富士山の斜面が過熱されることによって上昇気流が発生し上空で冷やされるという形で、その空域では大気が上下に渦巻くという状態が形成されていたと考えられる(例えるなら、寒い部屋でストーブを焚いてその上に紙を持っていくと紙が舞い上がる現象と同じ)。そこに事故機が通過した際に、機体が急激な上昇をした後に、今度は急激な下降をして機体の耐久限界をこえて空中分解につながったのではないかとされる。
日本のパイロットの間では、その事故前から「晴れた日には富士山に近づくな!」と言われており、危険度の認識はあったが、外国機であった事故機長は、その言葉を知らなかったこと思われる。また、ある程度、山岳波の知識はあり富士山で発生することは認識があったとしても、その度合いを甘く考えていた可能性がある。
[編集] 後方乱気流
大型の航空機(実際に問題となるのは「重さ」だが)の離陸時、主に翼端渦が元で後方に生じる空気の乱れはウェイク・タービュランス(wake turbulence, 後方乱気流、後流(こうりゅう)などと訳される)と呼ばれる。
離陸機よりも後続する離陸/着陸機の方が軽量である場合に特に危険性が高く、離陸機と後続機との重量に応じて、最低管制間隔の制限を設けたり、無線通信により注意を促すなどの対策が採られる。