中京商対明石中延長25回

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中京商対明石中延長25回（ちゅうきょうしょう たい あかしちゅう えんちょう25かい）とは、昭和8年（1933年）8月19日に甲子園球場で行われた、第19回全国中等学校優勝野球大会の準決勝第2試合の東海代表・中京商業学校（愛知県、現・中京大学附属中京高等学校）対兵庫代表・兵庫県立明石中学校（兵庫県、現・兵庫県立明石高等学校）の試合を指す。延長25回による決着は、県予選、春・夏の大会を通じて高校野球史上最長記録である。

目次 1 試合前の状況 2 試合経過 3 試合結果 4 エピソード 5 関連項目 6 関連書籍

[編集] 試合前の状況

中京商は、この大会に史上初の3連覇がかかっていた。3年連続でエースを務める吉田正男を中心として、捕手に野口明を擁するなど、まとまった戦力を有していた。吉田は1回戦の善隣商戦でノーヒットノーランを達成するなど好調であったが、続く2回戦の浪華商戦で負傷し、左瞼を3針縫う事態に見舞われた。ただしこの試合を続投し、準々決勝で藤村富美男がいた大正中を退け、準決勝に進出してきた。

一方、明石中には剛球投手として名高い楠本保がいた｡楠本は前回大会で4試合36イニングを投げて被安打9、奪三振64、与四球8、失点3というすばらしい記録を樹立し、本大会でも3試合24イニングで奪三振38、失点0、2回戦水戸商戦では中田武雄との継投でノーヒットノーラン達成という驚異的な力を発揮していた。しかも、楠本は本年春の選抜大会準決勝で中京商を3安打完封に抑えていた。

中京商にとっては3連覇達成の前に大きく厚い壁が立ちはだかっていた。

[編集] 試合経過

8月19日午後1時10分に試合開始となった。先発は中京商吉田、明石中は中田であった。中田先発についての反響は大きく、当時の新聞も「中京は不死身の吉田、明石は意外や楠本を右翼に退けて」と表現している。実は、楠本は脚気の兆しがあり体調不良だったらしく、また中田が楠本からの継投でノーヒットノーランを達成したり、準々決勝の横浜商戦で3イニングに7三振を奪ったのが明石中に決断させたのであろう。いずれにしろ前夜のうちに先発中田は決まっていたという。

両投手力投のうちに回は進み、9回表までで中京商は無安打、明石中は１安打であった。

9回裏、中京商は内野安打と犠打失策で無死2、3塁と絶好機を迎える。中田は満塁策をとった｡次打者の打球は快音を残すがピッチャーライナー併殺となり、続いて凡退となって延長戦に入った。

14回表、明石中は2死1塁で吉田の暴投により進塁。続いて三盗に成功したがオーバーランしてしまいアウトとなった。

15回表、明石中は2死満塁と攻めたが、楠本が三振。

中京商は10回から16回まで無安打であったが、17回裏2死1塁でこの日2本目の安打をようやく放つが無得点。

22回から24回まで中京商は3塁に走者を進めるが無得点。

25回裏、中京商は先頭打者が四球で出ると、次打者がバント安打、続いて犠打が野選になって無死満塁となった。打順は1番大野木。打った当たりは平凡な二ゴロであったが、二塁手嘉藤が雑な握りのままあわてて本塁へ送球したため悪送球となり、ついにサヨナラ勝ちとなった。

時に午後6時5分。試合時間は4時間55分。安打数は中京商7本、明石中8本。失策数は中京商0、明石中7。投球数は吉田336球、中田247球で両者完投であった。

[編集] 試合結果

• 審判 球審 - 水上

[編集] エピソード

• 大会本部は24回終了時に、25回でやめることを決めたという。
• 延長25回は甲子園ではこの試合のみだが、県予選を含めると昭和23年（1948年）の大分県大会・準決勝の「大分二対臼杵」が延長25回を記録している。試合結果は 3 - 0 で大分二が勝った。
• 当日名古屋でこの試合のラジオ中継を1時間半聞き、その後東海道線の列車で大阪駅に着いた人が、野球放送を聞いてまだ続いているのかと驚いたらしい。当時名古屋から大阪までは3時間ほどかかった。
• 当時スコアボードは16回までしかなく、17回以降は球場職員が「0」と書いた板をスコアボードの横に釘で打ちつけながら継ぎ足していった。
• 野球実況はNHKの高野アナウンサー1人だった。

「スコアボードのおかしな所に0が出まして、これは押さえる所がなくて人間が1人この0を押さえております。」

「（声をからして）全選手も、アンパイアも全観衆もヘトヘトです。」

「（試合終了の瞬間）あっ。セーフ。ホームイン。ホームイン。ゲームセット。ゲームセット。6時3分。6時4分。1アルファ対0。劇的この大試合、遂に中京勝ったのでございます。」

• 翌日、中京商は平安中と決勝戦を戦い、見事に勝って3連覇の偉業を達成した。

[編集] 関連項目

• 魚津対徳島商延長18回引き分け再試合
• 掛川西対八代東延長18回引き分け再試合
• 三沢対松山商決勝延長18回引き分け再試合
• 箕島対星稜延長18回
• PL学園対横浜延長17回
• 駒大苫小牧対早稲田実業決勝延長15回引き分け再試合
• 花咲徳栄対東洋大姫路延長15回引き分け再試合

[編集] 関連書籍

• 松本大輔著、神戸新聞社編「明石中-中京商延長25回 キミは「伝説の球児たち」を知っているか!!」神戸新聞総合出版センター、ISBN 4-343-00217-9