中井久夫
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中井久夫(なかい ひさお、1934年1月16日 - )は奈良県天理市生まれの精神科医。専門は統合失調症の治療法研究。兵庫県宝塚市、伊丹市で育つ。最初はウイルス研究をしていたが、東大分院で精神科に転向。
1969年に考案した風景構成法は有力な心理療法を行う中での一つのクライエント理解のツールとして日本で独自創案開発されたものであり、ロールシャッハテストのように侵襲性が高いものとはまた違った視点でクライエントの現状況を推察できる。著作集の初期から中期にかけての難解とも言える分裂病理論は、日本精神医学史上屈指の高い水準に達していると言っても過言ではない。
阪神・淡路大震災では、被害者の心のケアにあたった。
以上のようにまずもっては卓越した精神療法家・臨床家・医師・精神医学理論家でもある中井だが、そればかりではなく古き佳き「文人」とも言える資質を兼ね備えており、そのこれ見よがしのところがない抑制されたリズムある文体と、英仏独は当然としてラテン語や現代ギリシャ語やオランダ語までを自在に操る抜群の語学力を駆使した、極めて優れた詩の翻訳や含蓄の深いエッセイなどでも知られる。とくに、ヴァレリーの翻訳はいままでのフランス文学者の翻訳を顔色なからしむる程のものである。ちなみに、中井はヴァレリーの研究者となるか科学者、医者となるかかなり迷ったと自ら語っている。歴史にも通暁しており、その大教養人としての一端は代表作『治療文化論』『西欧精神医学背景史』において遺憾なく発揮されている。また、無類の軍艦好き・船舶好きでもある。 PTSDの研究・紹介を精力的に行っている。
[編集] 学歴
- 1946年 甲南高等学校尋常科入学
- 1948年3月 学制改訂により甲南中学3年生となる
- 1949年4月 甲南高等学校入学
- 1952年 京都大学法学部入学するも結核で休学
- 1955年 京都大学医学部に転向
- 1959年4月 大阪大学医学部でインターン
- 1959年8月 医師免許取得
- 1966年6月 ウイルス研究で、京都大学より医学博士号取得
[編集] 職歴
- 1960年4月 京都大学ウイルス研究所助手
- 1967年4月 東京大学医学部附属病院分院精神科研究生
- 1969年 青木病院勤務
- 1971年4月 東京大学医学部附属病院分院助手
- 1971年3月 東京大学医学部附属病院分院講師
- 1975年3月 名古屋市立大学医学部精神科助教授
- 1980年6月 神戸大学医学部精神神経科教授
- 1997年3月 神戸大学定年退官
- 1997年4月 甲南大学文学部人間科学科教授、神戸大学名誉教授