不法投棄
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不法投棄(ふほうとうき)とは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(主に、廃棄物処理法、廃掃法と略される)に違反して、同法に定めた処分場以外に廃棄物を投棄することをいう。近年、最終処分場などの逼迫により処理費用が高騰していること、合法的な経済活動では生成されない物質(硫酸ピッチ)を秘密裏に処理する必要などから行われる。なお、既設の中間処理施設や最終処分場に、許可要件を超えて搬入・保管している状態は、不適正保管などと呼ばれ、不法投棄ではない。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、不法投棄した者の責任ばかりではなく、適正な監督を怠った排出者(事業者)に対しても撤去などの措置命令が可能となっている。不法投棄に対する罰金刑の最高額は1億円である。
目次 |
[編集] 対策
[編集] 法令等
各地で見られた不法投棄に対応するため、廃棄物処理法の改正が行われた。
- 平成3年改正
- 廃棄物処理体系の抜本的見直し(規制強化、特別管理廃棄物区分の制定)
- 平成9年改正
- 廃棄物処理管理票(マニフェスト制度)の適用範囲の拡大、産業廃棄物の投棄禁止違反等に対する罰則の強化、生活環境の保全上の支障の除去(不法投棄地の原状回復)
- 平成12年改正
- 廃棄物の適正処理のための規制強化(産業廃棄物管理票制度の見直しによる排出事業者責任の徹底、不適正処分に関する支障の除去等の措置命令の強化)
- 平成15年改正
- 不法投棄の未然防止等の措置の強化
- 都道府県の調査権限の拡充
- 不法投棄に係る罰則の強化
- 国の責務の明確化
- 廃棄物処理業の許可手続きの適正化
- 事業者が一般廃棄物の処理を委託する場合の基準等の策定
- 不法投棄の未然防止等の措置の強化
加えて、平成15年に新法(特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法)が制定された。この法律の内容は以下の通り。
- 平成9年の廃棄物処理法改正前に不法投棄された廃棄物について、都道府県等が行う対策費用に対して、国庫補助および地方債の起債特例などの特別措置による財政支援を行うことを制定。
- 2003年度から10年間の時限法である。
[編集] 調査と対策工法
不法投棄地の調査・対策は、1)不法投棄の未然防止と、2)不法投棄されている廃棄物の対策、に大別できる。
- 不法投棄の未然防止
- 法による規制の強化(例えば排出事業者責任の強化)、地域住民への協力要請(通報窓口の設置)や、地域による夜間のパトロールや事業所への立ち入り(例えば産廃Gメンなど)、投棄されやすい場所への監視カメラ(ナンバープレート読み取り装置付き)の設置、主要幹線道路での抜き打ち積載貨物検査、行政区域を越えたパトロール(例えば産廃スクラム27:27都県市との広域連携による監視強化)、事業者の事業内容の報告と公表、などにより未然防止が行われている。
- 投棄されている廃棄物の対策工法(投棄地の原状回復・周辺影響の防止工事)
- 廃棄物は一般環境から隔離されているものである。廃棄物が発生した段階から、中間処理・最終処分に至るまで、全てのルートは一般環境から隔離されている。この視点から、不法投棄された地域では、廃棄物から周辺環境への影響の防止を第一として、調査・対策工事が行われている。なお調査法・対策工法については、特に不法投棄に対する工法を定めた指針等はないものの、環境調査・土壌汚染対策工法に関連する各種指針等を準用し、対策工事が行われている。
刑法で裁かれ、禁固刑もある。
[編集] 問題点
不法投棄された事案を察知できても、私有地への立ち入り調査をすることが難しいことや、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の偽造、廃棄物の法的定義に曖昧に解釈できる点があること等から、違法であることの認定や、投棄者の特定などの調査に時間を要し、実効ある対策を実施するまでに時間を要してしまうことが多く。被害が拡大してしまう事も多い。このため、以前は、正面から不法投棄の捜査をせずに、違法な土地の利用、例えば森林法の林地開発許可制度の違反などで、いったん足がかりを作ってから違法状況を調査することが行われてきた。最近では、警察との協同体制(県庁に専門の部署を設け、県警からの出向者を入れる)により、強い調査・対策を行うようになってきた。