三湖伝説
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三湖伝説(さんこでんせつ)は青森県、岩手県、秋田県にまたがる伝説。主に秋田県を中心として語り継がれている。異類婚姻譚、変身譚、見るなのタブーの類型のひとつ。
[編集] 物語の要約
一
鹿角郡のある村に八郎太郎(はちろうたろう)という名の若者が暮らしていた。
八郎太郎は村の娘と旅の男との間の息子で、父親は寒風山で竜に姿を変えて消えたと言われており、母親は難産で死んでいたので祖父母に育てられ、マタギをして生活していた。
しかしある日仲間の掟を破り、仲間の分のイワナまで自分一人で食べてしまったところ、急に喉が渇き始め、33夜も川の水を飲み続け、いつしか竜へと変化していった。自分の身に起こった報いを知った八郎太郎は、十和田山頂に湖を作り、そこの主として住むようになった。この湖が十和田湖である。
二
三戸郡のある神社に南祖坊(なんそのぼう)という男が住んでいた。
南祖坊は諸国で修行をした後、熊野で「草鞋が切れた場所が終の棲家になる」との神託と鉄の草鞋を授かり、十和田湖で草鞋が切れたため、八郎太郎に戦いを挑み、勝者となって十和田神社に祀られることとなった。
八郎太郎は米代川を通って逃げ、途中七座山の辺で川を堰止め湖を作ろうとしたが、地元の7柱の神々の使いの白鼠に邪魔され、更に下流へと向かった。
日本海附近まで来て、ようやく湖を作る適地が見つかったので、その支障となる老夫婦の家を訪ね、明朝洪水が来るから避難するようにと伝え、湖を作り始めた。しかし老夫婦は逃げ遅れたため、八郎太郎はそれぞれ別々の岸へと放り投げて助けた。夫は湖の東岸に、妻は北西岸に祀られている。出来上がった湖が八郎潟である。
三
仙北郡の神成村に辰子(たつこ)という名の娘が暮らしていた。
辰子は類い希な美しい娘であったが、その美貌に自ら気付いた日を境に、いつの日か衰えていくであろうその若さと美しさを何とか保ちたいと願うようになる。
辰子はその願いを胸に、観音菩薩に百夜の願掛けをした。必死の願いに観音が応え、山深い泉の在処を辰子に示した。そのお告げの通り泉の水を辰子は飲んだが、急に激しい喉の渇きを覚え、しかもいくら水を飲んでも渇きは激しくなるばかりであった。
狂奔する辰子の姿は、いつの間にか竜へと変化していった。自分の身に起こった報いを悟った辰子は、泉を広げて湖とし、そこの主として暮らすようになった。この湖が田沢湖である。
悲しむ辰子の母が、別れを告げる辰子を想って投げた松明が、水に入ると魚の姿をとった。これが田沢湖のクニマスの始まりという。
四
八郎太郎は、いつしか辰子に惹かれ、田沢湖へ毎冬通うようになった。辰子もその想いを受け容れたが、ある冬、辰子の元に南祖坊が立っていた。辰子を巡って再度戦った結果、今度は八郎太郎が勝ちを収めた。
それ以来八郎太郎は冬になる度、辰子と共に田沢湖に暮らすようになり、主が半年の間いなくなる八郎潟は年を追うごとに浅くなり、主の増えた田沢湖は逆に冬も凍ることなくますます深くなったのだという。
人間に姿を変えた八郎太郎の旅の途中、彼を泊めた旅籠では夜の間彼の部屋を見てはならないと言い含められ、覗き見た宿は必ず不幸に合うと言われていた。
いつしか時は流れ、八郎潟が干拓された今では、八郎太郎は一年中田沢湖に住んでいると言われている。