七輪
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七輪(しちりん)は、木炭や豆炭を燃料に使用する調理用の炉である
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[編集] 概要
七輪は軽量かつコンパクトで移動の容易な調理用の木炭燃料の炉である。原型は太古の昔からあり、現在のものとほぼ同様のものは江戸時代に作られたといわれる。古い七輪は陶器製のものが主体で旧家などに現存するものも多い。現在の多くの七輪は珪藻土を焼成して作られているが、内外二重構造の陶器製の七輪(通称:三河コンロ)などもあり、素材は一様ではない。 形状は円筒形、四角形、長方形が主で、大きさも様々。用途に応じて多品種生産されている。 関西では「かんてき」とも言う。
七輪は耐火性・断熱性に優れ、赤外線の発生量も多く熱効率が極めて高く、燃料を節約できる。 赤外線の発生量が多いため、特に焼き物料理に向き、近年では炭火焼き料理が主体の調理器具として使われることが多い。 第二次世界大戦直後は、土間や竈のないバラックでも容易に使えるため、都心部の庶民生活を支える調理器具として大変な普及をみせた。このころは七輪一つで炊飯、煮炊き、魚焼きまでこなした。 円筒形の七輪は炊飯や煮炊きに使いやすく、このころの主流であったが、焼き物が主体となった近年では長方形の七輪の普及が目立つ。屋内外問わず使用され、近年では七輪を使用した炭火料理店も多い。
昔ながらの製法で珪藻土の塊を切り出し削って作ったものを「切り出し七輪」といい、これに対して珪藻土を押しつぶし、粘土状にしたものを金型でプレス成型した「練り物製品」がある。 切り出し七輪は職人による加工手間が多く、高価であるのに対し、練り物製品は量産しやすく安価で一般に普及している。 ホームセンターなどでは外国製品も販売されている。
[編集] 使用方法
着火させた木炭を入れ、上部に焼き網をのせ焼き物に使用する。七輪の形状によっては鍋をのせて煮炊きもできる。 火力調整は炭火の量や火元までの距離の調整、下部に設けられた風口の開閉による酸素供給により調整する。風口の開閉だけで100度以上の温度差が生まれる。 屋外なら団扇で送風することにより200~300度ほどの温度調整ができる。
[編集] 燃料
燃料は多くの場合木炭を使用する。屋外では黒炭が主流で、室内では臭気のない備長炭などの白炭に人気がある。 消費量の多い焼肉店などでは、安価なオガ炭(南洋材のオガクズを成型し木炭にしたもの)を使うことが多い。 その他の燃料としては、マメ炭、石炭、コークス、たどん、子割りにした薪なども使える。
[編集] 木炭の着火方法
多くの場合、火起し器に木炭を入れ、ガス火にかけて着火し七輪にあけて使う。しかし、この方法はガスコンロが必要なため、アウトドアでは、種火となる木片や着火剤を使ったり、専用のトーチバーナーを用いて着火させる。 ※カセットガスコンロは爆発の危険性があるので、絶対に使用してはならない。
[編集] 木炭の消火方法
火消し壷に移して消火させるか、安全な場所に移して自然消火を待つ。水を張ったバケツや空き缶に投入してもよい。 珪藻土など土製の七輪は水により劣化しやすいので水はかけないほうがよい。練り物製の七輪は水で土が溶けてしまう。
底部の灰中に埋まった炭火が残るので、消火には注意が必要。
[編集] 語源
語源は、わずか7厘(金銭単位)で買える木炭、わずか7厘(重量単位)の重さの木炭で十分な火力を得ることができた。また、下部の炭火を受ける皿に7つの穴があったなど諸説あるがはっきりしない。
[編集] 現在の七輪
1960年代頃までは、一般家庭に多く見られた器具ではあるが、生活形態の変化に伴い、点火・消火や火力調整が迅速でなく、そのために火災の原因ともなり、さらに灰の始末や燃料の扱いに手間を取る為に、殆どが他の調理熱源に取って代わられてしまった。 しかし近年では原点回帰型グルメ志向による炭火焼き用や、災害時の炊事熱源(後述)として見直されており、これらの需要に対応するため取り扱う店が増えている。
ホームセンターなどで購入が可能である。 サンマを焼くための需要か、晩夏~秋にかけて売れ行きが良くなるようである。
[編集] 取り扱い上の注意点等
珪藻土の性質上、濡れると吸水し崩れてしまうため、雨に濡れたり浸水する場所での保管はできない。また、割れやすいので慎重に扱うこと。
風通しの悪い場所での使用は一酸化炭素中毒の危険があり、危険である。殊に点火初期で炭が完全に熾っていない状態では一酸化炭素が多量に発生するので、注意が必要である。また酸欠に伴う一酸化炭素の発生にも注意する必要がある。
一般的な七輪の場合、燃料は木炭か豆炭を想定してある。全く使えない訳ではないが、家庭用の練炭には適さない。
火災を防ぐため、使用前に回りの可燃物は遠ざけておき、灰の始末にも気を付ける。灰の不始末による火災もかつては多かったようである。
[編集] 社会問題
七輪はその性質上、完全に火を消すのは容易ではなく、火種の残った七輪が、火災の原因となる事もある。車内や締め切った屋内での一酸化炭素中毒事故も後を絶たない。
2003年頃から、インターネット上で仲間を集めて、木炭や練炭を締め切った場所で燃やして一酸化炭素中毒で集団自殺する事件が多発し、以前よりあった「練炭自殺」という言葉が、注目を浴びている。(→自殺系サイト)
- なお、一酸化炭素中毒では、意識混濁から安易に死ねるかのような情報がインターネット上で流布されてはいるものの、致死前に救助されたり、思い直して自殺を取りやめた場合でも、急性一酸化炭素中毒の一般的症状は予後が非常に悪いため、余計に後で苦しむ事になる可能性も高い。過去に発生した炭鉱事故の際に一酸化炭素中毒に陥り、30年以上後遺症で苦しんでいる人も多くあるため、安易な自殺願望の結果、多大な負債を背負うリスクが高い方法である事は間違いない。
※最後の決断をしてしまう前に・・・ いのちの電話
[編集] 災害と七輪
日本では地震や水害等の災害が多いが、ライフラインが破壊された後でも、これら七輪は多くの被災現場で、ライフライン復旧までのあいだ、被災者の生活を長らく支えてきた。1980年頃から登場したカセットガスコンロによって、七輪は次第にその役割を終えつつあるが、その気になれば木切れなども燃料に用いる事が可能なため、現在でも防災用に七輪の準備がある地域防災倉庫は多い。
[編集] 環境保全と七輪
七輪は裸火を使って調理するよりも、遥かに燃料効率がよい。これは熱放射などによって、熱が逃げてしまわないためであるが、木炭を使用する事で、乾燥させた木を直接燃やすよりも、遥かに高い温度を得る事が出来るため、調理などの際は少ない燃料で煮炊きが可能となる。
近年では発展途上国等で、森林の乱伐採を防ぐため、木炭の使用が推奨されている所もあり、日本から、炭焼きの技術と共に、七輪の製造技術を伝え、その普及に努めているボランティア団体もある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
七輪の語源と歴史について
七輪の燃料、七輪の取り扱いについての詳細