レターボックス (映像技術)
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レターボックスとは映像メディアの表示画面サイズにおいて、他の画面サイズ規格との表示互換性をとるために本来の撮影された映像部分の上限部に黒帯を追加した状態のものを呼ぶ。略号でLBとして表示される場合も多い。
命名の由来は、表示された映像部分の形状が封筒に似ていることからこう呼ばれるようになったという説明を多く見るが、技術用語としてのレターボックスは和製英語ではなく純然とした英語でも用いられる用語であり、また「Letter box」は封書・封筒の事ではなく英国で言うところの家庭にある郵便受け、米国で言うところの街角にある郵便箱の事を呼び、また一般的なレターボックスを形状は横から眺めると横長長方形の形状をしている事から、封書・封筒の形状ではなく、レターボックスの形状に因るもの。
また、追加された黒帯そのものをレターボックスと呼ぶケースを見受けるが、これは勘違いに因るもの。
[編集] 概要
映像メディアにおいては、その技術の発展の経緯の中で、基準とされる画面サイズが幾つか提唱・策定されてきた。現在においては、概ねスタンダード・ビスタ・シネマスコープ(シネスコ)の3方式サイズに集約されて定義されていて、それぞれ画面サイズ・アスペクト比が異なる。 テレビ放送の番組や映画作品、DVDソフト、ビデオソフトなどの製作・表示画面サイズや映像表示機器の規格もこれらが基準になっていて、対応関係はスタンダードサイズが4:3画面サイズに、ビスタサイズが16:9画面サイズ相当にそれぞれ対応している。従って、ある作品を画面サイズの異なった映像表示機器で表示する必要もあり、そのための工夫としての互換表示規格が幾つか生まれた。その一つがレターボックスと呼ばれる表示形態になる。(関連が強い規格に「スクイーズ」がある。詳細については当該関連項目を参照の事。)
一般的には、画面サイズ比率(アスペクト比)が16:9のものを4:3のものへ収めたものをレターボックスという場合が多いが、16:9よりもさらに横の比率が大きいシネマコープサイズものを4:3サイズに収めたものもレターボックスにあたる。
映像部分以外に黒枠が付く場合は、
- ビスタサイズやシネスコサイズの撮影映像をスタンダードサイズ向けに表示した時に上下に黒枠が付いた状態のもの。 ⇒ ケース1
- スタンダードサイズの映像をそれ以外のサイズ(主にビスタサイズ)向けに表示したときに左右に黒枠が付いたもの ⇒ ケース2
の以上2通りが基本形となるが、レターボックスと呼ばれるのは前者のみ。後者についてはあまり広く認知されていないが、専門用語ではピラーボックスと呼ばれる。
また両ケースのそれぞれの場合で、映像ソース作成時にサイズ調整の為に黒い部分を付ける場合と、画面サイズ情報が異なる映像信号を受信した場合に機器側が自動的に付ける場合がある。そのため、両ケースが複合された状態が発生し、上下左右に黒枠が付いて額縁状態になる場合もある(多くの場合、映像ソースの提供側の事情による)。
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- 前述ケース1を画面比16:9のワイドサイズ画面で見た場合
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- 前述ケース2を画面比4:3のノーマルサイズ画面で見た場合
[編集] レターボックスの実例
- テレビ番組
- ハイビジョン用番組(HDTV)を中心として、映画作品などのワイド画面向けに制作された番組や映像ソースを4:3画面サイズテレビ用あるいはアナログ放送向け(SDTV)にダウンコンバートする際の手段の一つとして、レターボックス形式を用いる。放送された映像は、4:3画面サイズのノーマル型テレビでも、16:9画面サイズのワイド画面型テレビでも、4:3画面内ではレターボックス形式で表示される。(但し、ワイド面型テレビの場合は、テレビ側に特別なズーム機能がない限り、4:3映像を画面に映す場合に自動的に左右に付く無映像部分を含めて額縁表示になる。)
- デジタル放送では、映像ソースがレターボックスの形になっているものには放送信号のアスペクト比とは別の付加情報としてレターボクスを示す識別情報が付いているものと付いていないものがある。識別情報付きでレターボックス放送を受けた16:9画面サイズ型テレビやチューナーの16:9画面サイズ向け映像出力は、横幅を全画面に合わせる形で縦横同時にズーム(上下の黒い余白部分が見えなくなる程度)して全画面表示にする。レターボックスの識別子がない場合やアナログ放送で受信したレターボックス形式の映像は、そのまま4:3のレターボックス表示になる。またレターボックス識別情報付きでも4:3画面サイズ型テレビの場合は識別情報無しの場合と変らない。
- なお、レターボックス形式の映像をズームした場合は、ズーム後の映像の解像度は元の映像より低下することになる。本来は、レターボックス識別情報を受け、それによって映像拡大し、それに伴い失われた解像度を補完することで高精細度映像放送を実現するワイドクリアビジョンを前提にした仕組みだが、現行のデジタルハイビジョンの普及に伴い機能搭載は収束方向にある。現在はズーム機能のみしか備えていないものや、信号を検出しても自動ズームしない機種もある。
- DVDビデオ
- 映画作品を収録したDVDビデオソフトの大半は、【16:9 LB】か【LB】の表示が付いている。DVDビデオ自体はNTSC準拠の映像規格なので、映像データの記録領域には4:3の画面サイズでしか記録できないので、16:9の映像ソースは、16:9の映像を横方向に圧縮したスクイーズ形式か、レターボックス形式で記録される。表示画質の面でメリットが大きいスクイーズ形式の方が多用されている。
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- 【16:9 LB】:スクイーズ方式で記録されていて、4:3画面向けには再生機器側がレターボックスに変換して出力し、16:9画面向けにはそのまま出力することで、映像表示機器側が横方向に拡大して16:9のワイド画面表示を実現する。(出力方式の切替は再生機器側の機能になる。)
- 【LB】:レターボックス形式で記録されていて、4:3画面向けにも16:9画面向けにもそのまま出力する。16:9画面サイズの映像表示機器ではそのまま4:3サイズの映像として額縁表示になるか、ワイド画面サイズへのズーム(レターボックスでの上下の帯は表示カットされる)して16:9サイズに合わせて視聴する。なお、テレビ側の機種によっては接続端子経由で送られたレターボックス識別信号を検出することで自動的にズームする機能を備えたものもあるが、DVDソフトの作り・再生機器(DVDプレイヤーなぞ)・接続ケーブルなどがそれぞれその信号の出力に対応している必用がある。
テレビ放送の場合もDVDビデオの場合も、16:9よりも更に横長のシネマスコープサイズの映像作品の映像部分を全て表示する場合の記録は、レターボックスでビスタサイズにしたものをスクイーズ方式で記録している。