モノアラガイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
モノアラガイ | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分類 | ||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||
Radix auricularia japonica Jay, 1857 | ||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||
モノアラガイ |
モノアラガイ( 物洗貝 学名:Radix auricularia japonica )は、有肺目 モノアラガイ科 に分類される巻貝の一種。また、広義にはモノアラガイ科の種の総称。一般的に、モノアラガイ科やサカマキガイ科などの淡水域に産する小型貝類をまとめてモノアラガイと呼ぶこともあるが、サカマキガイなどをモノアラガイと呼ぶ事は、誤りである。
因みに、記載者のジェイ ( J.C.Jay ) はアメリカの貝類学者である。
目次 |
[編集] 形態
殻高、殻幅20mm前後の卵円形。殻は薄質で、薄茶色~飴色でやや透明感があるが、模様や彫刻はなく、成長脈があるのみである。また、殻口は広く、殻高の八割前後にも及ぶが、相対的に螺塔はとても低い。軟体は黒い斑模様があり、殻の上からでも透けて見えるため、生時は一見殻に模様が在るかの様である。その他軸唇は広く、また捩れ、臍孔はない。また、蓋はない。
[編集] 生態
落ち葉や藻類、死骸などを食べ、食性の幅は広い。雌雄同体で他個体と交尾し、寒天質の袋に入った数個~数十個の卵を水草や石などに6月頃から産み付ける。また、卵はその後2~3週間で孵化し、2~3ヶ月程で成熟、繁殖し、繁殖力は比較的強いとされる。
[編集] 分布
北海道~九州までの各地に分布。日本国外では朝鮮半島。淀んだ小川や溜め池、水田、沼や池などのやや富栄養化の進んだ止水、半止水域に生息し、数十年前は普通種とされていた。しかし、水質汚濁、汚染の酷い場所や、極端に富栄養化が進んだ場所では生息できない事、サカマキガイやハブタエモノアラガイなどの移入種との競合、圃場整備や河川改修による環境の変化などの理由により激減し、現在では準絶滅危惧(環境省レッドリスト)に指定されている。
[編集] 利用
田圃などの身近な環境に生息するため、古くから人間に親しまれてきたが、食用には適さず、特にこれと言った利用法があるわけではない。また、その広い食性からアクアリウムのタンクメイトとして残餌の処理や苔取りなどに利用されることもあるが、逆に爆発的に殖え、水草などを食害することから、アクアリストの間ではスネールと呼ばれ、忌み嫌われる存在となることもある。ただし、これらの場合、多くは狭義のモノアラガイではなく、広義のモノアラガイ、特にヒメモノアラガイやサカマキガイの事を指してモノアラガイとしている場合が殆どで、実際に狭義のモノアラガイがアクアリウム内でタンクメイトとして利用されたり、爆発的に繁殖したりすることはあまりないと思われる。
その他、ヘイケボタルやガムシの幼虫の餌となるが、やはり、飼育下では、サカマキガイやヒメモノアラガイを与えることが多い。
[編集] 近似種
モノアラガイ科の種でモノアラガイに近似する種は多い。しかし、外観の変異や大きさなどから殻だけでは分類が困難であるため、正確な同定には軟体部の解剖などが必要とされるが、あまり研究は進んでおらず、分類は混迷している様である。また、外来種の近似種も多く在来種との交雑などを引き起こし、より一層、種の区別を困難、複雑にしているものと思われる。
[編集] 在来種
在来種では主に以下の様な近似種が知られる。
- ヒメモノアラガイ Austropeplea ollula (Gould,1859)
全国的に広く分布し、モノアラガイよりも汚染等には強い。殻高10~15mm、殻幅8mm前後。モノアラガイよりも螺塔が高く、細身。また、軸唇は広いが捩れない。
- イグチモノアラガイ Radix auricularia (Linnaeus, 1758)
モノアラガイと同種とされることも多い。北極圏に広く分布し、日本では北海道に分布する。モノアラガイと比べ殻口がさらに広く、殻高と同程度の大きさとなることで異なる。
- タイワンモノアラガイ Radix auricularia swinhoei H.Adams, 1866
モノアラガイと同種とされることもある。南西諸島以南、台湾に分布。殻高10~15mm 殻幅8mm前後。モノアラガイよりも細身でむしろ、ヒメモノアラガイに似る。
- ハマダモノアラガイ Radix hamadai Habe, 1968
大分県の一部にのみ分布し、既に絶滅したとも考えられる。絶滅危惧Ⅰ類。殻高は5mm前後で体層が非常に大きく、螺塔はとても低い。生息地などからモノアラガイとの判別は容易。非常に局地的な生息地などから外来種とも考えられる。
[編集] 外来種
外来種の近似種も多い。下記に主な種を挙げるが、下記種以外にもかなり多くの種が移入しているものと思われ、また、在来種との交雑などを引き起こしていると考えられる。
- ハブタエモノアラガイ Pseudosuccinea columella (Say, 1817)
東北以南~中国、四国地方に広く分布。日本国外ではアメリカなどに分布する。殻高10mm前後、殻幅5mm前後で、モノアラガイに比べかなり細長く、殻表の成長脈は明瞭である。また、臍孔がある点でも異なる。
- コシダカヒメモノアラガイ Lymnaea truncatula (Mueller, 1774)
ヨーロッパ原産で1940年前後に水草などに伴い移入したとされる。日本各地に分布するが、近年は減少傾向にある。殻高5mm、殻幅2mm前後で螺塔はモノアラガイに比べ高く、殻高の5割ほど。また、ヒメモノアラガイとも類似するが、より螺塔が高いことや、殻表に僅かな成長脈を刻むことなどから見分けられる。
[編集] その他
その他、サカマキガイ科のサカマキガイや、オカモノアラガイ科のオカモノアラガイなどにもやや似るが、区別は容易である。