ミラクル少女リミットちゃん
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『ミラクル少女リミットちゃん』 (ミラクルしょうじょリミットちゃん) は、永島慎二・ひろみプロダクション(現・おもちゃ箱)原作のSFサイボーグアニメ作品・漫画作品。
- 厳密には、漫画家永島慎二・企画集団ひろみプロ原作のアニメ作品および、当該アニメの漫画化作品であるが、漫画化作品の学年誌への連載開始月(1973年9月)がアニメ作品放送開始月(1973年10月)よりも先になるという逆転が起きている。媒体の発表順序がややこしいが、主従をつけるとするなら、アニメ作品が主である。
- ちなみに永島慎二作画による漫画連載は行われなかった。
- 2006年のDVD化までは、通常考えられる方法によって(再放送、市販ビデオ、ムック本、古書店など)、本作品を鑑賞する機会が絶無に近かったため、公に語ることは困難であった(いわゆる「暗黒の時代」)。2006年が一つの画期となり、「再」評価の機運がたかまっている。
- ところが、「暗黒の時代」があったことが逆に幸いし、本作品は、数多の商業的な色彩の強いアニメメディアに晒されることが極めて少なく、「鑑賞の処女地」「批評の処女地」として残された、希有な1970年代アニメ作品である。
- 1973年は『600万ドルの男』のスペシャルが3月に米国で放送済み。シリーズ化は1974年とリミットちゃんの方が先。『地上最強の美女バイオニック・ジェミー』は1976年シリーズ化(ベースとなった『600万ドルの男』中のエピソードの放送は1975年である)。本作品はバイオニック・ジェミーを参考にしたものではない。
- 本作品は、カフカの『変身』や、『メトロポリス』、『ブレードランナー』、『攻殻機動隊』、『トータル・リコール』(TVシリーズ)と比較されうる要素を持っている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] ストーリー
[編集] アニメ作品
西山リミットは、小学4年生の夏休みのとき、飛行機事故で瀕死の重傷を負ったものの、科学者の父親によってサイボーグ手術を受けることにより、九死に一生をえる。リミットは、秋学期からは、サイボーグとしての能力を使い、日常のトラブルを解決する。 またリミットがサイボーグであることは秘密であり、自分がサイボーグであるというコンプレックスに苦しむこともある。
[編集] 漫画化作品
西山利美は、小学4年生の夏休みのとき、飛行機事故(ヘリコプター事故)で瀕死の重傷を負ったものの、科学者の父親によってサイボーグ手術を受けることにより、九死に一生をえる。リミットは、秋学期からは、サイボーグとしての能力を使い、日常のトラブルを解決する。
[編集] 登場人物
- 西山リミット-利美(声:栗葉子)
- 西山博士(声:柴田秀勝)
- トミさん(声:野沢雅子)
- グー(声:千々松幸子)
- 湯本みどり(声:千々松幸子)
- 浅見信子(声:山本圭子)
- 浅見友男(声:坪井章子)
- チー坊(声:坪井章子)
- 栗本ジュン(声:神谷明、塩屋翼、山本圭子)
- 石橋隆太(声:肝付兼太)
- 石橋綾子(声:坪井章子)
- 竹下光子(声:吉田理保子、千々松幸子)
- 乙姫先生(声:坪井章子)
- 金時先生(声:矢田耕司)
- 司会者(声:)
[編集] アニメ
1973年10月1日~1974年3月25日にNET系で東映動画の魔女っ子シリーズの第6弾として全25話が放映された。
[編集] スタッフ
- 企画:高見義雄
- 原作:永島慎二、ひろみプロダクション
- 漫画:池原成利、奥村真理子、志村みどり
- NETプロデューサー:宮崎慎一、小澤英輔
- 脚本:辻真先、雪室俊一他
- キャラクターデザイン:小松原一男
- 作画:小松原一男、端名貴勇、木暮輝夫、江藤文男他
- 演出:田宮武、明比正行、岡崎稔、山口康男他
- 製作:東映動画、NET
- OP主題歌:「幸わせを呼ぶリミットちゃん」大杉久美子、ヤングフレッシュ
- ED主題歌:「センチなリミットちゃん」大杉久美子
[編集] サブタイトルリスト
- おてんばさんこんにちは
- なんだか変だぞ
- 見られちゃったワ!?
- 転校生はライバル
- ぼくのおヨメさん
- パパ大嫌い!!
- 落葉とバイオリン
- ほんとの秀才
- 変身!エラーマン
- 夢がいっぱいわたしのリュック
- ボスのような男になりたい
- チャペルの天使
- あの町この町暮れの町
- それでも女の子
- 学校裏門なみだ門
- 誘拐
- おんどりのタマゴ
- 乙姫先生大ピンチ
- 幻の狼
- スケートの女神
- 消えたマジック・ベレー
- 春を呼ぶ愛の歌
- 走れラクガキ鉄道
- さよならキャプテン
- おめでとう!先生
[編集] 漫画
[編集] 池原成利
- 昭和48年9月号~昭和49年3月号まで小学一年生、小学三年生で連載。
[編集] 奥村真理子
- 昭和48年9月号~昭和49年3月号まで小学二年生で連載。
[編集] 志村みどり
- 昭和48年9月号~昭和49年3月号まで小学四年生で連載。
[編集] ミラクルパワー等
[編集] ミラクルパワー
- ミラクルパワー
- ミラクルラン
- ミラクルジャンプ
- チェンジフェイス
[編集] アイテム
- マジックペンダント
- マジックベレー
- フライングバッグ
- 透視コンパクト
- ダンシングブーツ
- フラワーリング
- あぶり出しリップクリーム
[編集] ロボット犬「グー」
- 飛行機能
- 脚部伸縮機能
[編集] 解説
[編集] DVD発売以前と以後
2006年2月、本作品のDVDが発売された。ビデオでもレーザーディスクでも映像化されていなかったこと、再放送が数年行われなかったこと等の事情から、ファン待望のDVDであった。ところで、DVD発売以前は、本作品のムック本等もほとんどないことも災いし、「暗黒の時代」とでも評すべき時期であった。本作品のファンは「記憶だけを頼り」に、本作品を語るしかなかったからであり、「新しいファン」の獲得チャネルが絶無であったからである。
※なおDVD発売以前においても、少数ながらファンサイトが存在した。
[編集] 作り手の評価と受け手の評価との分離
前述の通り「暗黒の時代」は、ファン側の批評の支えとなる「映像」自体へのアクセス(接触接近)ルートが事実上断たれていたため、映像の受け手側からの発言がほとんど不可能であった。勢い、(消去法で)作り手側の評価のみが表に現れる。
[編集] 作り手側の評価
辻真先などの評価などがそれである。特に本作品は「サイボーグ少女=非魔法少女」「リアルな日本=非異国」という作り手側の自由度の乏しい舞台設定であり、作劇上苦労する要素が多く、そうした苦労話がイコール本作の「評価」として長期の間、定着していた。
※キャラデザイン担当の小松原一男は、1993年に発刊されたムック「魔女っ子大全集<東映動画篇>」の中で、もともと親交のあった永島慎二の原作と聞いて仕事を引き受けた、という趣旨を語っている。
[編集] 受け手側の評価1(メディアの評価)
同時代の『キューティーハニー』には、本放送終了後であるが1980年代には徳間書店からムック本が作られる等、早くから注目されていたが、本作品をメインとしたムック本は発売されていない。魔法少女シリーズを特集するムック本に、簡単な作品解説と、設定資料等が掲載される程度にとどまる。同様にビデオ化もレーザーディスク化もされていないため、そうした映像化作品に添付される解説資料等も存在していない。漫画化作品も学年誌への掲載のみで、単行本化はされていない(学年誌の古書を探すか国会図書館で読むしかない)。そして、一旦「一定数の固定ファン」+「新規のファン」というマーケットが消滅してしまってからは「ムック本を出しても売れない、そもそも企画が通らない」のは誰が考えても必定であり、2005年までは、メディアの評価はほとんど聞こえてこなかった。
[編集] 受け手側の評価2(アニメファンの評価)
本放送、再放送の記憶を頼りに、「魔法少女シリーズ」・小松原一男・菊地俊輔・栗葉子と言った切り口から、細々と語られるにすぎなかった。また「暗黒の時代」には、新しいファンの獲得が不可能であるほか、(幸運にもビデオを保存していたファンを例外として)多くのファンは「記憶」にたよるしかなく、議論の根拠が薄弱であり、あまり活発的な評論はなされてこなかった。
[編集] これまでの受け手側の評価
[編集] 魔法少女シリーズとして
サイボーグ少女という設定は、女の子の感情移入不可能な設定であり、女の子の視聴者獲得という本来の制作目的からすれば、まったくの失敗であった。(ただし、「萌え」アニメとしての要素が含まれていた点には注意。)しかし、煩瑣に繰り返される再放送により、シリーズの意図とは別に、男の子のファンを獲得していった。再放送とともに評価が高まることは、一般に多い(『宇宙戦艦ヤマト』、『機動戦士ガンダム』等)。ミラクルランのポーズをまねて走る男の子(女の子ではない)も街ではみられた。
[編集] 小松原一男関係作品として
数多の小松原関連作の中では珍しい「少女もの」と言えるだろう。動きを抑えたエンディングの画像は、哀愁を帯びた副主題歌と相まって印象的な美しさを醸し出す。これを永島慎二の作画だと誤解した視聴者もいたらしい。
[編集] 作曲家菊池俊輔関係作品として
主題歌は、作品とは独立した形で、評価されて来た。特にOPは3拍子ワルツであり、ダンシングブーツを履いたリミットちゃんが踊る映像は高く評価されている。
アニメ本編が長らく映像ソフト化されなかったのに対し、主題歌と副主題歌は1990年代半ばごろから度々CD化されていた。1960~70年代のいわゆる「東映動画魔法少女アニメ」の主題歌等を収録したCDには本作の主題歌等も含まれた。
[編集] 再評価とそのの方向性
2006年を境に、「暗黒の時代」は終り、「ポスト暗黒の時代」にはいる。DVD化により、本作品への一般アニメファンの接触が可能となったからであり、「記憶」に頼った評論から、実際の作品に依拠した評論が可能となった。
[編集] 「ファンタジー」から「リアル」
本作品は、『鉄腕アトム』のような人間型ロポットがもたらす「未来ファンタジー」への対抗、『魔法使いサリー』のような「魔法」へ対抗で作られている。
[編集] サイボーグアニメとして
世上、『サイボーグ009』をはじめとした、サイボーグアニメは数多あるが、本作品こそ、架空の設定や未来という舞台に逃げること無く、サイボーグの日常生活をリアルに描くことに成功した最初で唯一のアニメ作品である。
[編集] 『009』との比較
- ミラクルパワー:005
- ミラクルラン:002や009
- ミラクルジャンプ&フライングバック:002
- チェンジフェイス:007
- 透視コンパクト:003
- ギルモア博士:西山博士
[編集] 「変身」譚として〜『変身』との比較
本作品はカフカの『変身』と比肩しうる。目覚めると「虫」になっていたか、「サイボーグ」になっていたかの違いである。『変身』の主人公ザムザは、「人間」と「虫」との心身問題に苦悩するが、リミットちゃんは「人間」と「機械」との心身問題に苦悩する。もちろん、ザムザは「見かけが虫」「中身が人間」であり、リミットちゃんは「見かけは人間」「中身は人間と機械の半々」という違いがあり、外見上の違和感になやむザムザの苦悩はリミットちゃんには欠けている。しかし「チェンジフェイス」というリミットちゃんの能力を忘れてはいまいか。「見かけは人間+チェンジフェイス(別人)」「中身は人間と機械の半々」という対比はやはり、ザムザと同じなのである。
[編集] 「昭和」をリアルに描写したアニメとして
放送当時は、足かせであった、リアル路線が、逆に、平成の時代においては、古典的価値を本作に与えている。「昭和」の時代に放送されていたアニメ作品の多くは、「無国籍」アニメであるか、「日本のどこか」を舞台にするものである。確かに,著名なアニメ作品の多く(『機動戦士ガンダム』『超時空要塞マクロス』)が「未来」を舞台とし、著名な長寿アニメ(『ドラえもん』『サザエさん』等)が「どこかの街」を舞台とする(『サザエさん』の旅行シリーズは例外)ことを特長とするところ、「ミラクル少女リミットちゃん」は、絶滅した日本狼(の生き残り)をテーマとしたり、廃止された直後の蒸気機関車をテーマとしたりと、リアルな「昭和の日本」を感じさせるエピソードを持った作品となっている。(リアルな昭和の日本を描写した他の作品には『聖戦士ダンバイン』の地上編がある程度である。)本作品を「再評価」する視点からは、こうしたエピソードこそ古典的価値であり、貴重であるように思われる。
※魔女っ子シリーズ前作「魔法使いチャッピー」にも、昭和の日本(=放映当時の世相等)を題材とした描写及びエピソードが少なくない。
[編集] 元祖「萌え」アニメとして
「暗黒の時代」にメディア露出が絶無あったため、萌え的要素は看過されてきたが、本作品には「ロボット萌え」「妹萌え」の要素が複合的に存在する。
[編集] ショートカットキャラが活躍するアニメとして
アニメキャラクター造型上の系譜からも、おもしろい特長を有している。『Zガンダム』の強化人間フォウ・ムラサメ、『バイファム』のカチュア・ピアスンとともに、ショートカットシスターズとも称される。単に髪型を指すだけでなく、三人の「特殊な境遇」(サイボーグ・強化人間・異星人)「薄幸な境遇」(母死亡・両親死亡・育ての両親死亡)「抱える秘密」(サイボーグであること、記憶を奪われていること・異星人であること)「高い戦闘能力」(ミラクルパワー・モビールアーマー・ラウンドバーニアン)といった共通要素をもつ。
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