ミズゴケ類
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ミズゴケ類(ミズゴケるい)は、ミズゴケ科ミズゴケ属(Sphagnum)の蘚類の総称。多孔質の植物体を形成し、多量の水を含むことができる。日本では約40種が知られる。オオミズゴケ(Sphagnum squarrosum)などは園芸用途で用いられる。
[編集] 特徴
ミズゴケ科はコケ植物門蘚綱に属し、単独でミズゴケ亜綱を構成する。茎と葉の区別のある茎葉体であるが、独特の構造をもつ。軸は木質化し、主軸はほぼ上に伸びるが、放射状に側面方向に枝を出す。葉は軸の回りに密生する。葉の細胞には、光合成をしない、空洞になった細胞が多数交じる。この透明細胞には表面に穴があって、内部に多量の水を蓄えられるようになっている。
茎の上からさく(胞子のう)をつける。胞子のうは柄の上に生じ、球形で黒くなる。他の蘚類とは異なり、この柄はさくの柄ではなく、植物体の方から作られたものである。
温帯から寒帯に分布し、湿地に多くの種が生育する。湿地の地面に密生してクッション状の群落を形成する。特に、寒冷地ではミズゴケ類を中心として湿地に生育する植物遺体が積み重なっても分解せず、次第に厚い層を形成するようになる。このようにして盛り上がった湿地を高層湿原と言う。ミズゴケ類は高層湿原を形成する主力である。イボミズゴケ(Sphagnum papillosum)やユガミミズゴケ(Sphagnum subsecundum)などがこれにあたる。
なお、もっと温暖な地域に生息する種もある。ホソベリミズゴケ(S. junghuhnianum subsp. pseudomolle)は九州にまで生息し、水の染み出す崖地や岩場に塊状の群落を作る。
[編集] 利用
ミズゴケ類はコケ植物中で群を抜いて実用的価値が高い。葉に水を蓄える細胞が多数あるため、乾燥させれば多孔質の軽くて弾力のある素材となり、梱包材や脱脂綿の代用として用いられたことがある。水を吸わせれば水もちがよく、隙間が多いので空気の通りがよい。このことを利用して、園芸用の培養土として用いられる。シダ類や、食虫植物など、湿地性植物や着生植物の培養には欠かせない。特に、洋ランなど、ラン科植物の栽培には、ほとんど代替品がないほど重要である。日本、特に中部以南ではミズゴケの生育場所が限られており、この目的での採集による減少が著しい。
また、寒冷地では、ミズゴケを主体として、湿地生植物の遺体が堆積して厚い層を作る。これが低温のため容易に分解せず、次第に炭化したものを泥炭(でいたん)と称する。北部ヨーロッパなどでは昔、燃料として用いられていた。