マギ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マギ(ギリシア語形: 単 Μάγος、 ラテン語形: 単 magus, 複 magi)とは、本来、メディア王国で宗教儀礼をつかさどっていたペルシア系祭司階級の呼称。アヴェスター語形マグ(magu, maγu)に由来する。
ヘロドトスの『歴史』には、「マギには、死体を鳥や犬に食いちぎらせたり、 アリや蛇をはじめその他の爬虫類などを無差別に殺す特異な習慣があった」と記されている。 これらの習慣はアヴェスターに記された宗教法と一致しており、彼らはゾロアスター教と同系の信仰を持っていたと考えられる。
アケメネス朝ペルシア史上では、王位簒奪者のマギであったガウマータを、ダレイオス1世が倒して王位に就いたとされている。
しかし、キリスト教世界では新約聖書、福音書の『マタイによる福音書』にあらわれる東方(ギリシア語、anatole当時はペルシャのみならずエジプト北部などその範囲は広い)の三博士(三人の王とも訳される)を指して言う場合が多い。直訳すれば星見すなわち占星術師であるが、マタイ福音書の文脈では、天文学者と推測される。
やがて、マギという言葉は 人知を超える知恵や力を持つ存在を指す言葉となり、英語のmagus、magicなどの語源となった。
[編集] 福音書の伝える三博士の礼拝
イエス関連項目 |
---|
『マタイによる福音書』(2:1-12)によれば、イエスが生まれた時、東方にてマギ(博士たち)が大きな星を見、その星に導かれてエルサレムまで赴き、新しい王が誕生したのはどこかとヘロデ大王に尋ねる。ヘロデは動揺しながらも側近に尋ね、側近は聖書の記述からそれはベツレヘムであると博士たちに教えた。博士たちはさっそくその場を発つと、星にしたがってイエスのいる場所につくことができた。幼子の前にたどり着くと、彼らはひれ伏し、黄金、乳香、没薬を贈り物として捧げた。ヘロデは新しい王など生まれては困るので、博士たちに場所を教えるよう命じていたが、博士たちは夢のお告げでヘロデに会わないよう命じられたため、ヘロデを避けて別の道から故郷に戻った。
『ルカによる福音書』に描かれたイエスの誕生場面ではこの三博士は登場せず、代わりに飼い葉桶に寝ていた幼子イエスに羊飼い達が訪れる場面がある。西洋美術やクリスマスに飾られる馬小屋の飾りでは、博士と羊飼いが一緒に描かれているものも多い。
前掲の福音書には記述がないが、博士たちの人数は贈り物の数から伝統的に3人とされている。彼らの名前として西洋では7世紀から次のような名が当てられている。それはメルキオール(Melchior, 黄金(王権の象徴)、青年の姿の賢者)、バルタザール(Balthasar, 乳香(神性の象徴)、壮年の姿の賢者)、カスパール(Casper, 没薬(将来の受難である死の象徴)、老人の姿の賢者)である。シリアの教会では、ラルヴァンダド(Larvandad),ホルミスダス(Hormisdas), グシュナサファ(Gushnasaph)という別の名が当てられているが。いずれもペルシア人の名でなく、何らかの意味も確認できない。アルメニア教会では、カグバ(Kagba), バダディルマ(Badadilma) 等の名前を当てている。
なお、インドの一部の伝統では、ある人物が光明を得るためには、三人の他の光明を得た人物によって、その人物の将来の光明が予言される必要があるという言い伝えもある。