ポール・ディラック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ポール・エイドリアン・モーリス・ディラック(Paul Adrien Maurice Dirac, 1902年8月8日 - 1984年10月20日)はイギリスの理論物理学者。 ブリストル大学で電気工学、数学をケンブリッジ大学で物理学を学んだ。
1928年に電子の相対論的な量子力学を記述する方程式として(ディラック方程式)を考案した。
この方程式から導かれるマイナスエネルギーを持つ電子の解釈で苦労するが、後にそれが陽電子の形で実験的に確認(1932年)され、1933年にノーベル物理学賞を受賞している。
彼は数学の分野にも大きな影響を与えた。δ関数は数学における超関数理論へと発展し、ディラック方程式においてはスピノールなど新しい数学的概念を生み出した。また、数学的な美しさの追求から単一の電荷に対応して単一の磁荷もあって良いのではないかと考えそれをモノポールと名付けた。ディラックの考えた素粒子としての素朴なモノポールの存在については多くの物理学者は否定的だが、その後の理論的発展により大統一理論において量子場の配位としてのモノポールは存在し得ることがわかり精力的に研究されている。
量子力学に関する洞察をそのまま記号形式に置き換えたようなブラベクトル、ケットベクトルを駆使して記述した著書『量子力学』(Principles of Quantum Mechanics)は、名著と言われている。ファインマンはこの著書からヒントを得て経路積分を考案した。量子力学への貢献の多いディラックではあるが、珍しいところでは一般相対性理論の教科書なども書いている。
インドの数学者ハリシュ・チャンドラも元々はディラックの弟子であり。彼の代数での業績はディラックの非コンパクト群の無限次元ユニタリ表現などの業績が影響していると考えられる。
カテゴリ: イギリスの物理学者 | ノーベル物理学賞受賞者 | 1902年生 | 1984年没