フレックスタイム制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フレックスタイム制(-せい)とは、労働者が一定の定められた時間帯の中で、始業及び就業の時刻を自由に決定することができる変形労働時間制の一つである。具体的には、1日の労働時間帯を、必ず勤務しなければならない時間(コアタイム)と、その時間帯の中であればいつ出退勤してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分けて実施するのが一般的である。
目次 |
[編集] 歴史
日本においては、1987年の労働基準法の改正により、1988年4月から正式にフレックスタイム制が導入されており、一定範囲の労働者について始業及び終業の時刻をその決定に委ねることを就業規則等で定め、かつフレックスタイム制をとる労働者の範囲等の一定事項を労使協定で定めれば、使用者はフレックスタイム制をとる労働者について、精算時間(1ヶ月以内の期間で、労使協定で定めた期間)を平均し、1週間あたりの法定労働時間(1日につき8時間、1週間につき40時間)を超えない範囲内において、1週又は1日の法定時間を超えて労働させることができるようになった(労働基準法第32条の3)。
[編集] コアタイム
フレックスタイム制では、「変則できない時間帯」としてコアタイムを設定するのが一般的である。この時間帯を使い、職制内でのミーティングや取引先との打ち合わせなどの時間を確保することが多い。
コアタイムの考え方として、例えば、午前10時から午後3時までをコアタイムとする場合には、休暇を取らない限り、午前10時から午後3時までは「必ず就業」しなければならない。
[編集] 国家公務員におけるフレックスタイム
平成5年4月から、国家公務員のうち試験研究機関等に勤務する研究公務員及び研究支援職員についてフレックスタイムと称する制度が実施されているが、これは労働基準法に規定されたものではなく、職員の申請に基づいて正規の勤務時間を割り振る制度である。(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第6条第3項)。
[編集] 地方公務員におけるフレックスタイム
地方公務員については、地方公務員法第58条第3項の規定により、労働基準法第32条の3の規定が適用除外となっていることから労働基準法によるフレックスタイム制はない。
[編集] 所定労働時間との関係
フレックスタイム制度によって1日あたりの労働時間が変則可能だが、月あたりの所定労働時間(1日あたりの所定労働時間×月あたりの勤務日数)を下回ると、不足している時間が遅刻・欠勤などの扱いになる。労働者は、時間外労働時間の超過に注意するだけではなく、実働時間の不足にも注意を払う必要がある。
「申告した時刻より遅れたがコアタイムには間に合っている」場合の取り扱いは、導入各社の就業規則による。部署によって「不問」「遅刻扱い」など差異が生じることがある。退勤時も同様で、不問にするか早退扱いにするかは就業規則による。
[編集] 利点/問題点
労働者が勤務時間をある程度自由にできるため、夜遅く仕事した日の次の日は遅めに出勤するなど、身体的な負担を減らすことができる。また、勤務時間をずらすことで、通勤ラッシュを避けることもできる。
その一方、ずらすことが定常的になり常時遅刻状態に近くなることや、取引会社や他部門との連携を行なうときに時間の設定が難しくなるという問題点もある。 そのため、例えば部署ごとの内規として、フレックスタイム制を行使して勤務時間を変則にする場合、部署によっては取引先との取引上の時間調整を容易にするため、翌週の出勤予定を事前に上長に申告し、申告した範囲でフレックスタイムの行使を認めるところもある。
また、企業によっては、フレックスタイムを使用して始業時刻を早めても早く退社できない場合があり、結果として労働時間の拡大を招くことがある他、フレックスタイムに否定的な管理者がいる場合は、部署の風土としてフレックスタイム制を利用しづらい場合もある。
上記の問題点などのため、一度フレックスタイム制を導入したが廃止または休止した、という事例が大手メーカー系企業を中心に相次いでいる。