ニース (衛星)

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ニース（Neith）は何度か観測の報告された金星の衛星につけられた名称である。現在は金星にこのような衛星は存在しないとされている。

ジョバンニ・カッシーニは1672年に金星の近くに小天体らしいものをみつけたがその時は、確信をもてなかったが、1686年に再度観測した後、金星に衛星のある可能性のあることを発表した。

金星の衛星のような天体はその後多くの観測者によって報告された。例えば,1740年にジェームズ・ショート、1759年にアンドレアス・メイヤー、1761年にジョゼフ＝ルイ・ラグランジュなどによってである。1761年には18の観測例が報告された。その中には金星の日面通過時に太陽面に金星以外の小さな点が観測されたとするものも含まれた。1764年には8例の観測が報告され、1768年にはクリスチアン・ホレボーが観測を報告した。

一方、ウィリアム・ハーシェルなど多くの天文学者は金星の衛星を見つけることはなく、議論をよんだ。

カッシーニはその大きさは金星の1/4であると報告し、1761年ラグランジェは衛星の軌道面は黄道面に直角であると発表し、1777年ヨハン・ハインリッヒ・ランベルトは公転周期を11日と3時間であると見積もった。

衛星がないとする天文学者のウィーン天文台長のファーザー・ヘルは明るい金星の光が観測者の眼球で反射して2次的な像を作っているのだと主張した。

1884年には、ブリュッセル王立天文台長を務めた、ホゾー（M.Hozeau)は、観測された天体が公転周期283日で太陽の周りをまわる惑星であれば、1080日ごとに金星に近づき、観測された記録に合うと主張した。ホゾーはエジプトの神の名からこの天体をニースと命名した。

1887年にベルギー科学アカデミーはニースが観測された記録を調べ、その大部分が金星の近くの恒星を見誤ったとして説明できることを示した。