ドクター・フー
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ドクター・フー (Doctor Who) は、1963年から、イギリスBBCで放映されているSFテレビドラマシリーズである。1989年に一度終了した後、1996年に単発の特別版を経て、2005年に新シリーズがスタートし、現在も放映中である。
当初は子供向け番組だったが、シリーズ長期化に伴ってその人気は不動のものとなり、イギリスのポップカルチャーに多大な影響を与えた番組となった。
アメリカ、オーストラリアをはじめ世界各地でも放送されており、日本では新シリーズがNHK-BS2にて2006年秋から放送中である。
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[編集] 概要
基本的なストーリーとして一貫しているのは、"ドクター" (Doctor) と呼ばれる異星人が地球人の仲間とともに時空を自由に行き来して、地球や他の惑星で起こる理不尽な外敵侵略、タイムパラドックスを防ぐために奔走するというものである。
主人公の"ドクター"というのは仮の名前で本名は不明である。そのバックグラウンドはエピソードを重ねていくことで、徐々に明らかにされてきている。
ドクターは元々、ギャリフレイ (Gallifrey) という惑星のタイム・ロード (Time Lord) という種族だった。タイム・ロードは外見は人間と同じだが、心臓を二つ持ち、体が重度の損害を受けた場合は12回まで別の体に再生 (Regeneration) することができ、非常な長命である。また、彼らはターディス(TARDIS:Time And Relative Dimension In Space の略)という時空転移マシンにより、宇宙のあらゆる場所、時代に行くこともできるほど高度な文明力を持つ。ただ、基本的には宇宙で起こる事件に関しては不干渉主義を貫いていた。ドクターはそうした官僚主義的な状態に反発して、一台のターディスに乗り込んで出奔し、数々の冒険を重ねていくことになった。
なお、ターディスは状況や場所に応じてそこに最も相応しい外見に変化する機能があったのだが、1963年放送の第一話でロンドンを訪れた直後、この機能が故障したために、その外見は1960年代のロンドンに多く見られた警官用の非常用電話ボックスのままとなった。
2005年に開始した新シリーズではさらに、タイム・ロードは惑星間を揺るがす大戦争 (Time War) により、長年の宿敵であったダーレク (Dalek) との一騎打ちで絶滅したことが判明する。
[編集] 旧シリーズ(1963年-1989年)
1963年11月23日から放送開始。1989年12月6日の放送をもって26年間続いたシリーズの幕を下ろした。1話25分であるが、1985年のシーズン22のみ1話45分。
[編集] 初代ドクター
初代ドクター (First Doctor)
- 1963年-1966年
- シーズン 1, 2, 3, 4
- ウィリアム・ハートネルが演じた。ただし、1983年のドクター・フー20周年記念テレビ映画『The Five Doctors』では、亡きハートネルに代わってリチャード・ハンドールが初代ドクターを演じた。
- シーズン4中盤の The Tenth Planet の中で2代目ドクターと交代した。
[編集] 2代目ドクター
2代目ドクター (Second Doctor)
- 1966年-1969年
- シーズン 4, 5, 6
- パトリック・トラフトンが演じた。
- シーズン4中盤の The Tenth Planet の中で初代ドクターから役を引き継いだ。
[編集] 3代目ドクター
3代目ドクター (Third Doctor)
- 1970年-1974年
- シーズン 7, 8, 9, 10, 11
- ジョン・パートウィーが演じた。
- シーズン11最終話の中で4代目ドクターと交代した。
[編集] 4代目ドクター
4代目ドクター (Fourth Doctor)
- 1974年-1981年
- シーズン 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18
- トム・ベイカーが演じた。
- シーズン11最終話の中で3代目ドクターから役を引き継いだ。
- シーズン18最終話の中で5代目ドクターと交代した。
[編集] 5代目ドクター
5代目ドクター (Fifth Doctor)
- 1981年-1984年
- シーズン 19, 20, 21
- ピーター・デイヴィソンが演じた。
- シーズン11最終話の中で4代目ドクターから役を引き継いだ。
- シーズン21終盤の The Caves of Androzani の中で6代目ドクターと交代した。
[編集] 6代目ドクター
6代目ドクター (Sixth Doctor)
- 1984年-1986年
- シーズン 21, 22, 23
- コリン・ベイカーが演じた。
- シーズン21終盤の The Caves of Androzani の中で5代目ドクターから役を引き継いだ。
[編集] 7代目ドクター
7代目ドクター (Seventh Doctor)
- 1987年-1989年
- シーズン 24, 25, 26
- シルヴェスター・マッコイが演じた。
- 1996年のテレビ映画の中で8代目ドクターと交代した。
[編集] テレビ映画(1996年)
ユニバーサルTVとBBCワールドワイドと20世紀フォックステレビジョンによって制作された。
[編集] 8代目ドクター
8代目ドクター (Eighth Doctor)
- ポール・マッガンが演じた。
[編集] 新シリーズ(2005年-現在)
連続ドラマとしては16年ぶりの『ドクター・フー』となる。製作はBBCウェールズ。ドクターは9代目と10代目。イギリスでは2005年から放送されている。1話45分。
日本ではNHK-BS2にて、2006年9月25日から4夜連続で最初の4話を放送したのち、第5話以降を10月3日より毎週火曜午後10時から放送中で、2007年1月9日以降は午後11時から放送される予定である。なおNHK版では、シリーズ1(全13話)、2005年のクリスマス・スペシャル、シリーズ2(全13話)をまとめて全27話としている。
[編集] 登場人物
- ドクター(9代目) (Ninth Doctor) / クリストファー・エクルストン(声優:山路和弘)
主人公。現代のロンドンに突如出現した、異星人タイム・ロードの生き残り。900歳で、これが8回目の再生体となる。外見は短髪にレザージャケットをはおった40代の男性。なぜか英語に北部訛りがある。飄々とした人格で、ふざけたような口調で周囲を戸惑わせるが、同胞を失った喪失感を抱えている。
- ローズ・タイラー (Rose Tyler) / ビリー・パイパー(声優:坂本真綾)
ヒロイン。19歳。幼少時に父を亡くし、ロンドンの公営住宅に母親と二人暮らし。デパートの婦人服売り場に勤務していたが、残業をしていた夜にエイリアンの襲撃を受け、ドクターに助けられる。少々向こう見ずな面もあるが、冒険心に富み、ドクターのピンチを救う。そのままドクターの相棒としてターディスに乗り込み、冒険に乗り出していく。
- ジャッキー・タイラー (Jackie Tyler) / カミーユ・コデュリ(声優:磯辺万沙子)
ローズの母親。おしゃべりで騒がしく、化粧も濃い今どきの母親。とはいえ、ローズが無断でタイムトラベルに出て、一年間行方不明になっていたときは非常に心を痛めていた。娘を連れ出したドクターをひっぱたいたこともある。現在では娘の出奔も容認している。
- ミッキー・スミス (Mickey Smith) / ノエル・クラーク(声優:佐藤せつじ)
ローズの彼氏。やさしいが、少々肝っ玉が小さい面もある。ローズが行方不明になったときは殺人容疑までかけられそうになったりと、難儀が絶えない。それでもエイリアン・スリジーンがロンドンに襲撃した際には、国防省のコンピュータをハッキングして地球の危機を救った。
- キャプテン・ジャック・ハークネス (Captain Jack Harkness) / ジョン・バローマン(声優:竹若拓磨)
9,10話で登場。1941年のロンドンに降り立った25世紀のタイム・トラベラー。時空を又にかけて詐欺を働いていたが、彼の行動が元でおきた事件をドクターとローズに収拾してもらい、その際に彼の宇宙船も爆破したので、ターディスに乗り込む。 かなり問題もあるが、愛嬌のある人物。
- ドクター(10代目) (Tenth Doctor) / デビッド・テナント (声優:関俊彦)
[編集] エピソード
[編集] イギリス
- 9代目ドクター
- シリーズ1(全13話、2005年)
- 10代目ドクター
- クリスマス・スペシャル(2005年)など
- シリーズ2(全13話、2006年)
- クリスマス・スペシャル(2006年放映予定)
- シリーズ3(全13話、2007年放映予定)
[編集] 日本
NHK-BS2にて放送、2006年9月25日より放送中。
- 第1話 「マネキンウォーズ」 Rose
- 第2話 「地球最後の日」 The End of the World
- 第3話 「にぎやかな死体」 The Unquiet Dead
- 第4話 「UFO ロンドンに墜落」 Aliens of London
- 第5話 「宇宙大戦争の危機」 World War Three
- 第6話 「ダーレク 孤独な魂」 Dalek
- 第7話 「宇宙ステーションの悪魔」 The Long Game
- 第8話 「父の思い出」 Father's Day
- 第9話 「空っぽの少年」 The Empty Child
- 第10話 「ドクターは踊る」 The Doctor Dances
- 第11話 「悲しきスリジーン」 Boom Town
- 第12話 「バッド・ウルフ」 Bad Wolf
- 第13話 「わかれ道」 The Parting of the Ways
- 第14話 「クリスマスの侵略者」 The Christmas Invasion (59分拡大版)
- 第15話 「新地球」 New Earth
- 第16話 「女王と狼男」 Tooth and Claw
- 第17話 「同窓会」 School Reunion
[編集] スピンオフ作品
[編集] テレビ
- 新シリーズに登場するキャプテン・ジャックを主人公とした "Torchwood" (トーチウッド) というスピンオフドラマシリーズが2006年10月22日よりBBCで放送されている。ドクター・フーより大人向けの内容となっており、BBCでの放送時間も午後9時からである。なお、Torchwood は Doctor Who のアナグラム。
- 8代目ドクターまで登場していた1999年には1時間弱の特番も作られた。"Comic Relief"のタイトルが付けられたこの番組は『ドクター・フー』のシリーズというよりは『Mr.ビーン』に属するパロディ番組であり、9代目ドクターは当然ながらローワン・アトキンソンが演じた。その他10代目をリチャード・E・グラント、11代目ドクターをジム・ブロードベント、12代目をヒュー・グラント、13代目ドクターをジョアンナ・ラムリー(女優)が演じた。
[編集] 小説
ドクター・フーのノベライゼーションのうち幾つかは、日本でもハヤカワ文庫から1980年に刊行された。
- 『時空大血闘!』 デイヴィッド・ホイティカー著、関口幸男訳、ハヤカワ文庫、1980年3月
- 『オートン軍団の襲来!』 テランス・ディックス著、関口幸男訳、ハヤカワ文庫、1980年4月
- 『戦慄! 地底モンスター』 マルカム・ハルク著、関口幸男訳、ハヤカワ文庫、1980年5月
- 『恐るべき最終兵器!』 マルカム・ハルク著、関口幸男訳、ハヤカワ文庫、1980年7月
- 『ダレク族の逆襲!』 テランス・ディックス著、関口幸男訳、ハヤカワ文庫、1980年7月
[編集] 外部リンク
- Doctor Who BBC公式ウェブサイト(英語)
- ドクター・フー NHK海外ドラマホームページ
- Internet Movie Database: